経済

2018年8月 1日 (水)

老後のお金

 老後資金は夫婦で3000万円、独身で1500万円が必要とよく言われている。これは、65歳から年金生活に入る場合に、90歳までの25年間で年金だけで不足する分の金額らしい。ただし、税金や家の修繕費、海外旅行代、医療・介護費、子どもの結婚資金などの予備費として600万円しか見ていないという前提なので、少し余裕のある生活をしたいと思えば、夫婦で約5000万円が65歳時点で必要ということになる。独身では約2000万円だ。具体的な数字を見て、ぞっとした人は少なくないだろう。50歳の平均金融資産が1000万円であることを考えると、かなり計画的に貯蓄しないと老後資金をためるのは難しい。

 巷では、資金を少しでも株などで運用して増やすことを勧めているコンサルタントの方も多いが、私は基本的には、それらの投資は余裕資金でするものと考える。5000万円を超える資金を持っている人なら考える価値があるかもしれないが、それ以外の方は手を出してはいけないと思う。何故なら運用率の高い投資のほとんどは、元本保証はなく、市場の動きで大きく暴落することもあるからである。老後のためにコツコツ貯めていた資金が、投資で半分になった時のことを想像してもらいたい。脅かしているわけではない。昨今の世界情勢ではよくあり得ることということを認識して投資してほしいと思う。半額になっても誰も責任は取ってくれないのだ。
 
 いやいや日本には年金制度があるじゃないかという声が聞こえてくる。がしかし、ご存知の通り年金は、減額の一途をたどっている。そこで、年金の繰り下げ受給を勧める方もいるが、(65歳から年金をもらわず、70歳からもらう方法である。)これは各人の考え方次第で、80歳になってから通常より多い年金をもらうのと、少しでも体の動く若いうちに年金をもらって余裕を持ってお金を使うのとどちらが得か・・良く考えてみよう。(ちなみに81歳を超えると70歳からの繰り下げ受給が有利になる。)長生きに自信のある方は是非活用するのも良いかもしれない。

 話しは少し外れるが、資産がかなり多い方は、まず自分の財産を毎年、棚卸し、財産目録を作ることをお勧めする。自分の財産と借金を書き出し、純資産を把握する。奥様とお子さん2名の標準世帯の場合、4800万円を超えた分に相続税がかかるということも想定しておく必要があるからだ。無理な相続対策はいらないかもしれないが、金融資産を一部保険にしておくだけでも相続税額は大きくかわる。また、相続争いは、総資産5000万円以下の場合が約7割を占めていることを見ても、相続税に関係なく、相続争いを避けるために遺言をしておくことが何よりも重要だ。今回、民法の改正予定があり、それによると自筆証書遺言の財産目録等はパソコン等で作成したものでも良くなりそうだ。しかも法務局に保管してもらうことも可能になり、検認手続きも不要になる。そうなると自筆証書遺言が今よりずっと活用しやすくなる。これは、2020年4月からの施行になりそうだ。しかし、その間に何かあったら大変なので、一日も早く書いておくことが必要なのは言うまでもない。

2018年7月30日    著 者   税理士  千葉 和彦

2017年8月 1日 (火)

信託の活用について

   前回は「信託」を理解するコツについて書かせていただきました。今回は、その「活用」ついて説明していきます。

信託とは、一言で言えば、「信じて託す」ことでした。ここでは、登場人物が3名登場します。すなわち委託者(託す人)・受託者(託される人)・受益者(実質上の所有者に見なされる人)の3名です。信託は委託者と受託者の間で「信託契約」を結ぶと同時に効果が生じます。

  以下信託が何故有効な対策になるのか見ていきたいと思います。

1 認知症対策として有効

   65歳以上の約5人に一人が認知症になり、2025年には認知症患者数は約700万人前後に達するとのことです。

認知症になると、遺言や不動産取引、相続税対策などが一切できなくなります。もちろん銀行口座も凍結され、親を施設にいれる資金も親の口座から引き出せません。

やむなく成年後見人を立てざるを得ませんが、成年後見人は本人の財産の保護が目的なので、施設の費用を引き出すことはできますが、子や孫に金銭を贈与したり、相続対策のためアパートを建てるなどの行為は、本人の財産を減らすことになるからまず認められません。

しかし「信託」を活用するとそれらの欠点をカバーすることが可能です。

2 事業承継対策に有効

  自社株式を長男に贈与した後、長男が死亡した場合、自社株式は事業に関わっていない長男の嫁に相続されるのが通常ですが、例えば、一緒に仕事をしている次男などに引き継がせることができます。

信託の仕組みを導入することで、民法の法定相続の概念にとらわれない柔軟な承継先の指定が何世代にわたっても可能になります。

3 不動産の共有化対策として有効

  遺産の大半が一つの不動産の場合、その不動産を共同相続してしまうことは大きなリスクを伴います。

つまり、共有不動産は、共有者全員が同意・協力しないと換価処分等ができませんので、共有者間で確執があると、不動産の有効活用ができなくなる可能性があります。

そこで、その不動産を信託し、受益権を共有化します。すると、共有者としての権利・財産価値は維持しつつ、管理処分権限を受託者に集約することができ、その結果、不動産の「塩漬け」を防ぐことができます。

4 遺産受取方法の多様化として有効

  一括で受け取るのではなく、毎月の生活費として「定額給付」にすることができます。

5 相続発生時でもスムーズな財産管理法として有効

  相続発生時から遺言執行が完了するまでの、資産凍結の期間を排除できます。

6 財産隔離機能を利用したリスクヘッジとして有効

  詐害行為にならない範囲においては、委託者の債権者からの差押えを回避したり、自己破産・民事再生による清算対象の財産から除外が可能になります。

「信託」そのものは直接「節税対策」にならないかも知れませんが、相続対策として重要な「遺産争いの防止対策」として大きな成果を生み出すことができます。

是非皆様も活用を検討されてみてはいかがでしょうか。応援しています。

2017年7月28日 著 者 税理士  千葉 和彦

2017年7月 6日 (木)

「信託」を理解するコツは?

   今回は、前回の約束に従い、「信託」について話を進めていきます。

巷では「信託」という言葉が大分聞かれるようになりましたが、まだまだ一般的ではないようです。それは「信託」が何となくわかりにくく感じられるからです。

信託を一言で言えば・・・「信じて託す」・・ことにつきます。そう考えれば簡単なことですが、登場人物が二人ではなく三人なので、話をややこしくしているようです。

さて、その登場人物は、委託者、受託者、受益者の三人ですが、この三者の関係をしっかり理解することが信託を理解するコツです。

まず例えば委託者が自分の財産の管理を受託者にまかせます。財産は受託者の名義に変わります(ここが最初の理解の難関です。)名義は変わりますが、それは受託者がその財産を管理、処分しやすいように名義が変わるだけで、真の所有者ではありません。

それでは真の所有者は委託者のままかというと、決してそうではなく、受益者が真の所有者になります。(ここが一番わかりにくいところですね。)

例えば委託者である父が自分のアパートを同族の法人を受託者として信託し、受益者を長男にしたとします。

アパートの名義は受託者になった同族法人になりますが、真の所有者は受益者の長男です。当然信託後のアパートの家賃は長男のものになるので、長男は毎年の家賃を自分の不動産所得して確定申告します。

しかし、これで「めでたし、めでたし」ということにはなりません。真の所有者が長男であるならば、信託した時点で委託者である父からアパートが贈与されたことになるので、のんびりと不動産所得の申告を済ませ、やれやれとしているところに、多額の贈与税が押し寄せてきます。

このように、真の所有者=受益者を誰にするかで、時には思わぬ税金が発生することがあります。

そうならないようにするには、委託者である父をそのまま受益者にしておきます。そうすると、委託者と受益者は同じ人物ですから、贈与税の問題もなくなり、不動産所得の申告も今まで通りです。

では、信託する前と何も変わらないではないか?という疑問が生じます。確かに税務上は特に大きく変わることはありませんが、(他の不動産所得と損益の通算ができないくらいです。)大きく変わる点があります。

それは、委託者である父親が認知症になったり、脳梗塞で倒れたりした場合です。認知症や脳梗塞で病状に伏し、意思表示ができなくなった瞬間から父親の財産は凍結され、銀行預金の解約も不動産や株式の贈与や売買などが一切できなくなります。これは大きなリスクです。何故なら父親の入院費用や手術費用さえも父親の口座からは引き出せなくなるからです。

このようなリスクに対処できるのが「信託」です。この「信託」をしていると受託者の判断で預金の引き出しだけでなく、必要であればアパートの修繕、売却などもでき、急な事態に慌てることもありません。

しかも信託契約は万が一の場合の次の受益者も指定しておくことができるため、遺言の代用を兼ねることもできます。遺言は敷居が高くてなかなか書けなかった人でも信託契約だと意外と抵抗が少なく簡単にできたりするケースも多いようです。

このように活用の仕方では大きな成果を生むことのできるのが「信託」だということを是非皆さんにも理解していただけましたら幸いです。

2017年6月30日(金) 著 者  千葉 和彦

2017年5月 1日 (月)

追徴課税は40億円!長男名義の株を「相続財産」認定・・名義株を考える・・

   戸建て住宅販売大手の飯田グループホールディングス(GHD)が、創業者の相続に絡み、東京国税局に80億円以上の相続財産の申告漏れを指摘されていたことが明らかになった。

申告から漏れていたのは関連会社の「自社株」で、長男名義であったにもかかわらず創業者の財産に当たると認定されて40億円にも上る追徴課税をされた。

 東京国税局が申告漏れを指摘したのは、同GHDの創業者・飯田一男氏から長男に引き継がれた資産管理会社の株式。長男名義となっていたものの、取得に際しての資金を一男氏が負担していたことから「名義株」であると認定され、過少申告加算税などを含めて40億円の追徴課税が課されたのだ。

すなわち、税法上、このような名義株は名義人の財産ではなく真の所有者(実質的な所有者)の資産として扱われるので注意が必要だ。

   平成2年以前の商法では株式会社を設立するときの発起人の最低人数が7名とされていたため、創業者だけでは足りず、親族、従業員などの名前を借りることが一般的に行われていた。すなわち、歴史の長い会社ほど名義株が残っている可能性が高い。

しかも、株主は名義だけを貸しているので、自分がその会社の株主であることを認識していないケースも多い。株主名簿、もしくは、法人税申告書別表二「同族会社の判定に関する明細書」にて、そこに記載されている名義人が真実の株主であるのか否かを確認し、整理しておくことが何よりも重要だ。しかも名義株の整理は、名義貸借当事者が存命中に、できるだけ友好的に処理を進めておくことが、最良の事前対策になる。

まずは、名義株かどうか事実関係をはっきりさせ、名義株主には、書面による承諾を取り付けておくことが重要だ。それは名義人に「自分は名義人であること」を一筆書いておいてもらうことだ。そして法人税申告書別表第二の株主の記載を変更しておく。この明細書は、法人税部門だけでなく資産課税部門でも情報として管理しているので重要な資料になるからだ。

もし、名義貸与に関する覚書や念書等が存在せず、配当を長年その名義人が受領していた場合や名義書換の協力を得られないときは、名義人からの株式買い取りや、種類株式を活用した少数株主排除を検討するなどの対策も視野にいれなければならない。

 また所在不明で連絡の取れない株主について、次の①、②の要件をいずれも満たしているときは、取締役会の決議により、裁判所の許可を得て株式を売却すること(自己株式取得も可能)が認められている。

① 株主に対する通知又は催告が5年以上継続して到達しないと

② その株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったとき

ちなみに会社が無配の場合でも、継続して5年間配当を受領していないことに該当する。また会社が勝手に売却するわけだから、その代金は裁判所へ供託することになるが、株主は整理することができる。

いずれにせよ、この名義株問題は頭の痛いところだが、避けて通ることはできない。後回しにすればするほど、解決するのに何倍もエネルギーを使うことになる。まずはすぐに着手することから始めようではないか。応援しています。
 
2017年4月27日(木)  税理士 千葉 和彦

2017年4月 3日 (月)

稀勢の里関 優勝おめでとう!

  先日はテレビの前で君が代の大合唱を聞きながら涙を抑えることができませんでした。言うまでもありません。稀勢の里の奇跡的な初横綱優勝です。

 

稀勢の里は「自分の力以上のものが出た。見えない力が働いた。」と話していました。この無理な出場も、日頃の鍛錬を見ていた何者かが背中を押してくれたのだと思います。.

 

 マスコミは、怪我を押して出場した稀勢の里に対し冷ややかでした。「弱った姿を満天下にさらして判官びいきを誘い、あげく相手にまで気を使わせては、かえって『横綱の威』を毀損することにはならないか。」と。

 

それが打って変って、その翌日の新聞では、「つい先日まで勝負どころで決まって心の弱さを露呈していた30歳が見せた不屈の精神。1度の優勝で人はこんなに変わるのか」とただただ感嘆の感想を述べていました。

 

しかしながら「この決断が正しい選択だったというのは難しい。」と最後まで水を差していたのを不快に思ったのは私だけでしょうか?

 

  大相撲は他のスポーツと違い、日本の伝承文化のひとつという位置づけを持っています。人間の切磋琢磨を神様(日本国土の神様)に奉納する神事なのです。極限まで鍛え上げた肉体と魂の勝負を神様に奉納する日本ならではの国技です。

 

怪我を押して出場した稀勢の里から我々は多くのことを学ぶべきです。そしてこの神聖な国技に相応しい相撲だったと大いに声援を送ろうではありませんか。

 

  話しは変わりますが、本日、毎年恒例の関与先さんの平成29年度経営計画発表会に参加してきました。各事業部門から今年度の計画の発表がありました。最後に私が講評を求められました。

 

私は「詳細なことはともかく、皆さんが計画を立て各事業部ごとに発表しただけで大きな意義があります。もうこの時点で計画の半分は実行したようなものです。」と話しました。私は本当にそう思うのです。

 

  計画は立てるだけでも大きな意義があります。何故なら計画をたてるためには、自社のあるいは自分の事業部門の強み、弱みを一人一人がじっくり考えなければならないからです。すなわち、計画を立てるという経緯の中で、自社を知ることになるからです。

 

  まずは自社の又は自分の所属する事業部門のことを良く知らなければなりません。そしてその自社の強みを生かした計画こそが重要なのです。

 

次に計画には、定期的なチェックが必要です。これをPDCAサイクルの落とし込みと言います。伸びている企業は必ずと言っていいほど実行している方法です。計画を立てたままにするのは、とても勿体無いことです。是非、このPDCAサイクルを地道に繰り返し、今年度の目標達成を実現してほしいと思います。

 

来月(4月)から、いよいよ当社でも今年度の中期5か年計画教室の「将軍の日」の定期的開催を開始します。是非、一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 
2017年3月28日(火)   著 者  税理士 千葉 和彦

2017年3月 3日 (金)

「働く」ということ

   この時期、会計事務所は、所得税の確定申告期間真最中で、猫の手も借りたいくらいと言われている。

私も開業当初は徹夜、徹夜の連続で、申告書を提出に税務署に向かう途中、赤信号で待っている間に車の運転席で爆睡してしまい、クラクションを鳴らされても目を覚まさず、業を煮やして、後ろから降りてきた人に思い切り怒鳴られて、やっと目を覚ましたなどという危険な思い出があるくらいだ。

最近は若いスタッフの要請もあり、休日が増え、残業時間もめっきり減り、この時期特有の殺気立った事務所の雰囲気もなくなってきた。計画的な資料収集と、作業の効率化に取り組んできた成果が表れてきたのかとも思う。

   しかしいつの世も、良い仕事をするには、どうしても時間が必要で、人の能力に差がないとすれば、時間をかけて一生懸命、仕事に取り組んできた人にはかなわないのが事実だ。「量は質へ転化する」という先人の教えの通りだ。パイロットの熟練度は年数ではなく、飛行時間で決まるのと同じだ。本気で仕事に取り組もうとすれば、つい時間が過ぎてしまうものである。

時代に逆行しているようなことを言っているようだが、私は長時間労働をしろと言っているわけではない。時間がないからといって、手を抜くようなことをしてはいけないと言いたいのだ。手を抜くのと手間を省くのは大きな違いだ。手間を省くためには経験と知恵が必要なのだ。そのためにも特に若い人には、愚直に取り組んでほしい。経験をしなければ、良い知恵は決して浮かばないからだ。

   私の親しい社労士の先生が、今月号のご自身のエッセイに「働くことは万病に効く薬」という表題で、ご自分の経験を書かれていた。

それは多くの挫折や試練の中で、一つの仕事に本気で一生懸命打ち込んでいくと、不思議なことに、苦難や挫折の方向に回転していた自分の人生の歯車が、良い方向に逆回転し始め、その後の人生は、自分でも信じられないほどの変貌を遂げてきているという話だった。素晴らしい話だと思う。

先生は、さらに、働く意義を理解しないまま仕事に就いて、悩み、傷つき、嘆いている人が数多くいると思うが、そういう人には「働く」ということは、試練を克服し、運命を好転させてくれる、まさに「万病に効く薬」なのだということを、是非理解していただきたいと力強く語っている。

   いったい我々は何のために働いているのか?生活費を稼ぐためか・・もちろんそれは当然のことだ。しかし、それ以外の意義はないのか・・自分自身に問いかける必要がある。抽象的だが、私は、誰でも自分が幸せになるために働いているのだと思う。その場合幸せはどのような時に感じられるのだろうか?なぜ目の前の仕事に一生懸命、本気で打ち込むと幸せになれるのだろうか?

是非騙されたと思って、目の前の仕事に本気で打ち込み自分自身で身を持って実感してほしいと思う。そうすれば今抱えている悩みもいつの間にか解消し、新しい人生が開けてくるはずだと確信する。

2017年2月25日    著 者  税理士   千葉 和彦

2017年1月26日 (木)

十勝バスの野村社長をお招きして

   昨年より楽しみにしていた十勝バスの野村文吾社長を招いての「新春講演会」がとうとう今月実現した。

昨年8月1日、当社の朝礼で輪読した「職場の教養」に十勝バスさんが取り上げられていたのを見て、その日、直接十勝バス本社へ当社の部長が講演の依頼の電話をしたのがきっかけだった。

するとすぐに気持ち良く講師を引き受けてもらい今回はるばる帯広からおいでいただくことになった。参加者は約150名と会場は熱気に包まれた。

文吾社長の飾らない謙虚な人柄がにじみ出る講演で講演後のアンケートでは「ほんとに参加して良かった」という感想がほとんどだった。

大正15年創業で老舗企業といわれる創業100年企業に残すところ9年とリーチがかかっている。野村社長にお会いしてこの人なら必ずやこの偉業は達成できると感じた。

   創業100年以上の企業は全国に約5万社~10万社しかなく400万事業者(法人、個人含めて)を分母にすると1~2%ということになるが、この分母の事業者も毎年10万社以上創業される中で生き残ってきた事業者なので、実際には創業された事業者の中で0.2~0.3%が老舗企業だと言える。

老舗企業になっている会社の共通項は、経営の基本を素直に実行しているところだ。

それはまず①経営理念をきちんと作り、それに基づいて②5年後から10年後の目標を設定し③その目標実現に向けて行動計画を地道に実施することだ。

このことは、経営者ならだれでも知っていることと思うが、実際に実行している会社は少ない。(当社では「将軍の日」と名付けて経営者に一日缶詰になってもらい自社の5か年計画作成のサポートをさせていただいている。まずは5か年計画を立ててみることが大事だ。経営計画を立てるだけでも自社の強み、弱みを見直すことができ、とても参考になる。今年も4月から順次年5回開催していく予定なので、気軽に参加していただきたい。)

 今月はある関与先さんの社員総会に参加させていただく機会があった。経営計画を立てる会社も相当少ないが、会社あげての社員総会で、経営計画を発表する会社はさらに少ない。

この会社では毎年講師を招いて社員教育も行っている。今年は、一代で年商100億円にした社長の話を聞くことができたが、やはり経営の基本を地道に実行している印象を強く受けた。

見た感じは正に、今注目されている「ヤンキーの虎」という感じの社長だが、自分の経営は5年後~10年後の自社の姿を社員に示すビジョナリー経営だと話していたのが印象に残った。

とはいうものの、「目標の設定」はなかなか難しい。有名なケネデイ大統領の「アポロ計画」は10年以内に人類が月に着陸し、無事帰還するということを唱えたものだった。そしてこの計画は見事成功した。

しかし、もしケネデイ大統領がその期限を3年以内とか5年以内に実現するとしていたらこの成功はありえただろうか?難しかったのではないだろうか。

努力すれば何とか達成できる目標こそがじょうずな目標設定といえるのだ。忘れ去られる目標、曖昧な目標、サイズ違いの目標、ずれた目標はかえって会社を混乱させるので注意しなければならない。

経営者の皆さんこれらのことを念頭においてじっくりと目標を考えてください。応援しています。
  
2017年1月23日(月)  著 者  千葉 和彦  

2017年1月 5日 (木)

自らの強みを知る!

   新年おめでとうございます。昨年からお伝えしてきましたように、今年の新春セミナーは、十勝バスの野村文吾社長からご講演いただく予定です。

不況業種の路線バス業界にあって40年ぶりに増収増益を果たしたその秘訣を是非お聞きしたいものだと、同じ不況に苦しむ地方都市の地元経営者の皆さんの関心も高まっているようです。

「ドラッカーを読んだら会社が変わった!」という本の筆頭に十勝バスさんの話がでてきており、私もドラッカーを読み直したいと思い、氏の著作を読み始めました。その中に「自らの強みを知る。」という教えがでてきます。

ドラッカー教授は「強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることを決めたなら何を期待するかをただちに書きとめておく。9ヶ月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを50年以上続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされる。こうして2、3年のうちに、自らの強みが明らかになる。自らについて知りうることのうち、この強みこそもっとも重要である。」と話している。

またこうも言っている。「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである。強みに集中すべきである。」と。

つまり、フィードバックにより明らかになった強みに集中することが大事であり、その強みをさらに伸ばすことが大事だと強調しているのだ。

 新年号の事務所通信では、自己の強みを必死で考えた元巨人軍の桑田選手のエピソードをご紹介しています。

桑田選手は、投手としては身長も低い、剛速球も変化球も投げられない。投手として飛び抜けた力はひとつもない。

しかし、自分は野球の基本である守る、打つ、走るなどの力はあるし、頭を使ってピンチを乗り切る力もある。そして何よりも成長したいという強い祈りがあると思った。

そして、これらを総合力として活かせないだろうかと考え、その総合力の中で特に投手として考える力を磨こうと考え実践し、23年の選手生命を全うすることができたのでした。

桑田選手がドラッカーを読んでいたかどうかは定かではないが、まさしく彼はドラッカー式成功法を自ら体現してきたのではないだろうかと思った。

   でもドラッカー教授の方法では、時間がかかり、そんなに待ちきれないよという方はいませんか?そんな方に早く強みを知る方法を伝えます。

まずは、①気楽に目標をいくつか具体的に立てて(せいぜい一か月のスパンにする。)必ず書き出し見えるところにおく。②一か月後に振り返る。③全体を俯瞰してみる。④もう一度目標を立て直す。

この繰り返しで、自ずと自分の強みが見えてきます。自分ではできると思っていても苦手なことは明白になります。その反面「強み」も見えてきます。そうすることで自社の「強み」を発見することができれば、今後の経営方針が自ずと見えてくるのではないでしょうか?

まずは自分、わが社の「強み」です。そのわが社の強みを評価してくださるお客様に提供していきましょう。それがいわゆる「経営戦略」というものです。応援しています。

2017年1月3日(火) 著者 税理士  千葉 和彦

2016年10月31日 (月)

非顧客に聞け!

 「作成依頼していた来年のオリジナルカレンダーが届きました。」と総務の報告を受け、今年も終わりが近いことに改めて気づかされました。

年末には当社恒例のオーナーズセミナー懇親会、年明けには新春セミナーとビッグイベントが控えています。

その新春セミナーでは十勝バスの野村社長に講演いただく予定です。約40年ぶりに利用客数を増やし、路線バスの運送収入を上昇に転じさせ、増収、増益を実現した社長です。

   十勝バスは、北海道帯広市を中心に路線バスを運営しています。マイカーの普及や人口減少で利用客数は毎年減少し、厳しい経営状況が続いていました。このような場合、まずどの経営者でも考え実施することがコスト削減です。

そして、その筆頭が人件費です。十勝バスも、毎年給与や賞与のカットによる人件費の削減を続けてきました。そのため社員の心は荒み、荒れ果てていたようです。

野村社長が98年4月に父親の跡を継ぎ入社してから「利用客を増やすために営業を強化しよう」と言い続けてきたものの社員の返答は「嫌だ」「無駄だ」「無理だ」の繰り返しでした。

しかし08年、燃料費の高騰でいよいよ経営危機が深刻化します。ここで再度社員に「営業して利用客を増やそう」と呼びかけたところ、なんとか応じてくれ、社員が「ここからやりたい」と指さしたのは、中心部から離れた小さなバス停でした。

「最初は1つの停留所でいい。でも、もしここで成果が出たら、隣の停留所でもやろう。そうやって成果が出るたびに営業するエリアを広げていこうね。」とバス停から半径200メートル程に住む約300世帯の住人の自宅を一軒一軒回る「戸別訪問」を実施しました。

「どうしてバスに乗っていただけないのですか?」大半の人が「行きたい方向への路線がない」などと答えます。

「年一回でもいいんですよ。1回くらいなら、行きたい方向へ向かうバスがあるじゃないですか?」そう食らいつく社長に「うーん」と考え込んだある人が答えたのです。

「良く考えたら、バスがどこに向かっているかを知らないんだ。前と後ろ、どちらから乗ればいいかも知らないし、料金も分からない。だからちょっと怖いんだよな」社長は目が回るほど驚きました。

そんな根本的なことすら知らなかったのか。あるいはしばらく乗らない間に忘れてしまったのか・・・。要するに、お客様がバスに乗らないのは「不便」だからではない。「不安」だからでした。

この発見が突破口になり、とにかくお客様の不安を解消しようと、バスの乗り方を説明するパンフレットを作成して地元で配りました。またケーブルテレビでバスの乗り方を説明するCMも流しました。

戸別訪問を重ねると、こんな要望も聞こえてきました。「病院に行くのにバスを使いたい。」「スーパーにバスで行きたい。」しかし社長たちは最初不思議でならなかったようです。なぜなら、バス路線はすでに、主な病院やスーパーは必ず通るように設計されているからです。

しかし、どの停留所の近くにどんな施設があるかが、地域住民には分かりにくかったのです。そこで、どの路線を使えば、どんな施設に行けるかを解説する「目的別時刻表」を作成しました。

この取り組みを通じて、社長は気づきました。バス会社を経営していると、ともするとバスを運行することが「目的」になってしまいます。しかし、お客様にとっては、バスは「手段」に過ぎません。自分たちの都合や常識を脇に置き、お客様にとっての「良き手段」に徹することが、極めて重要です。

   このように十勝バスは奇跡の復活を遂げました。その一番は「非顧客」に聞いたことです。」「非顧客」とは「顧客であってもおかしくないにもかかわらず顧客になっていない人たち」です。

まさしく十勝バスにとってはバスに乗らない地域住民のことです。その非顧客の声にこそヒントがあったのです。貴社にも「非顧客」は必ずいるはずです。

十勝バス野口社長の話は地元の社長さん達に、多くのヒントを与えてくれるものと思います。新春お待ちしています。

2016年10月31日 著者 税理士 千葉 和彦

2016年10月 5日 (水)

長寿企業に秘訣を学ぶ

  人間は生まれてからすぐに死に向かって行く。会社も創業と同時に倒産に向かって進む。

人間と企業では大きく異なる点がひとつある。人間はどんなに努力をしても150年は生きられないが、企業は、そのやり方次第では100年以上、ひいては1000年生き残れるのだ。

実際、現在も存続している「金剛組」は、「儲け過ぎない。」「政治に近づかない。」をモットーに、創業してから1400年以上続いている。地元宮城でも伊達家湯浴み御殿として栄えた「ホテル佐勘」は832年続いている。

現在、日本国内には400万事業者あると言われているが、そのうち、100年以上続いている企業は5万社~10万社しかなく、いかに存続が厳しいかが容易に想像できる。創業200年以上ともなればわずか3100社しかない。

しかし、驚くことに世界全体の40%が日本に集中しているのだ。日本はある意味世界的にも珍しい「長寿企業王国」と言っても良いのではないか。

私は、昔ながらの日本独特の要因が重なり、多くの老舗企業を生み出しているのではないだろうかと考えている。

その証拠に、例えば隣国の中国は4000年の歴史を誇るが、創業100年以上の企業はほとんどない。

これは中国の血縁重視の家長制が大きく影響している。中国の昔からの格言「有能な他人より無能な血縁を信頼せよ」からも理解できる。

すなわち、たとえ長男が次期経営者に向いてなくても有無を言わせず跡を継がせるわけだから結果は自ずと知れたところだ。

日本と言えば古くから「家」の存続を第一に考えるため、血縁にはこだわらないところがある。「息子は選べないが婿は選べる。」と娘が生まれると、大阪の船場では、お赤飯を炊いて祝う風習が続いている。

すなわち日本独特の養子制度というものが、これら多くの老舗を生み出している一要因にもなっていることは間違いない。

 日本における老舗企業は、「血」に固執しない柔軟性と他者を受け入れる許容力で意思決定の判断基準を目先の「儲け」に置かず、常に「社是・社訓・経営理念」に置いているようだ。

そのことは逆に、その判断基準を忘れた時に、たとえ老舗といえども幕を閉じることになる。

まだ記憶にされている方も多いと思うが、ペコちゃんで知られた(株)不二家は創業家の、利益至上主義で消費期限切れの原料を使用し、倒産寸前に追い込まれた。

あの有名な(株)赤福も同様な理由でかつての勢いはない。まさしく、創業者の「経営理念」をしっかりと受け継いでいくことでしか老舗企業にはなれないのだ。

真の老舗企業とは「驕らず」「謙虚に」常に時代の先を読みながら「改革の精神」で取り組み続けているところなのだ。

アメリカの数少ない老舗企業(もちろん国自体が建国240年と若いので無理もないかもしれない。)の中の「ジョンソン&ジョンソン」(創業130年)はその長寿の秘訣を聞かれ、「Our Credo(我が信条)(経営理念)」と答えていることを見ても明らかだ。

まだ「経営理念」を持たずに、その場、その場で判断されてきた会社はまずこの「経営理念」作りから是非進めていただきたい。

当社では「将軍の日」と題したセミナーで「経営理念」を作るところからご支援させていただきます。

2016年9月30日(金)         著 者 税理士  千葉 和彦

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