学問・資格

2010年12月25日 (土)

経営戦略

 先週、「経営戦略」の研修で東京に行ってきた。当社の関与先さんには、絶対必要な情報と考えて参加した。

日本の事業者数は年々減少の一途をたどり、私が25年前に開業したときは600万事業者(法人、個人含めて)だったのに、現在は400万事業者と、この20年ちょっとで、200万事業者も減ったのだ。最近のデータでは、毎年29万社が廃業、倒産に追い込まれ、そのうち後継者がいないといことで廃業するのは7万社に及んでいる。

何の方針も計画ももたず、成り行きにまかせて商売をしていては、廃業、倒産に追い込まれるのは統計上もあきらかだ。何とか生き残ったとしても、わずか25%しか黒字企業がない。赤字のままの企業は遅かれ早かれ、淘汰されざるを得ない。

現在、黒字の会社は更に基盤を強化するために業績アップをはかり、赤字の社長は「3年後必ず黒字にする。」という強い決意でこれからの経営に取り組まなくては後がない。そのお手伝いをするのが、我々の仕事だ。

 当社もいよいよ「経営計画」から一歩踏み込んだ「経営戦略」へのアドバイスを進めていかなければならない。そして、業績アップという具体的な成果につなげてもらい、喜んでいただかなくてならない。過去の数字の整理だけに追われ、結果を報告するだけでは、企業の業績は、上がらないからだ。

今回の研修の講師の一人であるT先生に20年ぶりにお会いした。再開を抱き合って喜んだ。そしてその講義は、20年前と少しも変わらず、むしろ時の重みを乗せてさらに迫力が増していた。

「生きるか死ぬかの瀬戸際の中小企業に税金なんか払わせるな!」「もっと会社に一歩踏み込んで寄り添って本気で立ち向かえ」そして「本音で話し合っても、傷つかない関係を作れ」「保身に入った50代の幹部社員と戦わない限り組織は決して良くならない。」「会社に行ったら、幹部と必ず面接しろ。会社のレベルがわかる。」「組織では表に出ないパワーバランスを常に意識せよ」と。その一言、一言に魂が込められていた。

20年前にお会いしたとき「私は情が厚すぎてコンサルタントには向きません。コンサルタントはもっと冷静でないと・・・。」と話していたのを思い出しました。しかし、私は実際に先生がコンサルタントとして、ある整備工場に関って、立て直していく様子をビデオで見せられ、涙が止まらなかったのを思い出します。

20年前も今も冷静沈着でクールなコンサルタントより全身で本気でぶつかっていく先生のようなコンサルタントが必要だと思いました。それは、人を動かすのは「感動」しかないからです。その「感動」を生めるのは、決してクールな冷静沈着な指導者でもなければ、地位の高い人でもありません。

 相手先さんのことを真剣に、親身に考え、一歩踏み込んで寄り添って、経営者自らが気づくまで、一緒に考えてくれる人です。それは決して甘やかすのではなく、時には厳しく、本音で語れる関係・・・それこそが私が目指すコンサルタントです。

平成23年度は一緒に自社の「経営戦略」を立ててみましょう。
できるまでフォローさせていただきます。

       2010/12/22    著 者   千 葉 和 彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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2009年5月 1日 (金)

内部留保なんかあっという間に吹っ飛んでしまうよ

 「何か質問はありませんか?」という私の問いかけに、そのセミナーに参加したある社長から「あんたたちは、いつもそんなことばかり言うけれど内部留保なんてあっという間に吹っ飛んじまうんだよ。」というおよそ質問とは言えない、腹の底から搾り出すような唸り声とも言える声が聞こえた。
あんたたちとは、推測するに我々のような職業会計人、もしくは経営指導のプロと言える経営コンサルタントを指すのでしょう。一向に良くならない景気、出口の見えない不況そんな中で苛立ちにも似た思いで自然と漏れた思いに違いない。

 私は「地元中小企業の存続、発展に貢献する。」を経営理念に掲げ、それを実践するには、
「経営計画の作成と実行を支援する」ことが一番と信じ、全社上げてスタッフともども取り組んでいる。

 私:「社長、私も経営者の端くれとして、社長のおっしゃらんとしていることは、充分承知しているという前提で話しているのです。」
社長:「はっきり言って、あんたたちのように資金繰りにも困らない家業の人たちに我々のような経営者の気持ちはわからないよ。」
 私:「社長、失礼ですが、私も自分の事務所を組織として、企業経営というにふさわしい規模と言われる30人体制を目指しているのです。そして、自分自身が、経営者と同じ目線で考えられるように自らも実践しているのです。」

社長:「じゃあ聞くが、今スタッフは何人なんだ?」
 私:「今はまだ20名ですが、自社で経営計画を立て、身を持って実践しているのです。」
社長:「じゃあ俺の言っている意味がわかるよな。国はちょっと儲かれば税金で取り上げ、赤字になれば知らん顔。あんたの言うように税金をコツコツ払い続け10年がかりで蓄えた内部留保なんかこの2~3年で全部吹っ飛んじまったよ。」

 私:「社長、もしその内部留保がなかったらもっと悲惨なことになっていたのではないですか?それに2年も3年も赤字を続けてはダメですよ。銀行だって2年連続赤字の会社には融資をしないといっているのですから。」

社長:「俺だって赤字を続けたくて続けているのではないよ。」
 私:「社長、赤字の多くの原因は、手を打つのが遅すぎることですよ。」
社長:「どうすれば早く手を打てるのだ。」
 私:「早く変化に気づき、手を打てる仕組みを社内に作ることです。」
社長:「ふん。あんたがいつも言っている経営計画とやらを立てるということかい。」
 私:「社長、だまされたと思って一度立てて見ましょうよ。立ててもうまくいっていないところは、立てっぱなしだからなんです。立てたら計画通り行っているかどうか毎月ミーティングして、計画と実績の差異について考え、先々と手を打っていくのです。経営計画を立て実践しているところは、70%が黒字という統計もありますから。社長、まずは出来ない理由を考えるより、どうしたら出来るかを考えましょうよ。」

社長:「まあそこまであんたが言うならだまされたと思って立てて見るか。立て方教えてくれるんだろうな」
 私:「もちろんです。日ごろ経営に悩み、資金繰りに苦労されている社長さんなら誰でも参加できる教室を定期的に開催してますから、是非、参加してください。まずは、そこから始めましょう。」

そんなやり取りをしているうちに、雨もあがり外は空一面に晴れ渡り、また一歩新たに踏み出そうとしている社長を歓迎しているようでした。

中小企業は、良くなるも悪くなるも99%社長次第です。社長頑張れ。

 2009年4月30日  著 者 千 葉 和 彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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2008年11月26日 (水)

生命保険金は相続財産ではない。

 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が平成20年5月9日に国会で成立し、相続税の改正に方向性をしめした。その目玉は、「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」と「相続税の課税方式の見直し」である。この制度は平成21年度の税制改正で実現し、平成20年10月1日に遡及して適用することとされている。

 相続税の課税方式の見直しでは、現行の「法定相続分課税方式」から「遺産取得課税方式」に大きく変わる予定である。相続により取得した財産の額が同額であっても、現行制度では、法定相続人の数で税額が異なってしまうなど不公平な側面があった。それをなくすために改正されるのである。

この新制度は、相続等により遺産を取得した者を納税義務者、そしてその者が取得した遺産を課税物件として課税する方式であり、自己が取得した財産だけで、正確な税額の計算・申告ができることになる。ここで注意が必要と思われるのが、相続人が受け取った保険金への課税である。

例えば相続財産が自宅(評価額2000万円)と生命保険金(5000万円)だけで、相続人は長男(自宅を取得)次男(保険金を取得)の2名だけというケースである。現行の方式なら課税されない。しかし、新方式になると次男の方が、控除を差し引いた金額2000万円(基礎控除2500万円、生命保険控除500万円・・・まだ確定ではない)に課税される可能性が高い。すなわち政府は、課税の裾野を広げ、5000億ほどの増収を見込んでいるようである。静かなる増税である。

 話は変わるが、そもそも保険金は相続財産ではない。相続税法上だけで課税財産と見なして課税するだけである。上記の場合は、次男の固有の財産ということになる。ですから、相続放棄しても生命保険金だけは受け取れる。では次男だけが受け取った保険金は、被相続人からの「特別受益」に該当するのだろうか。

生前受益の対象は「遺贈、婚姻、養子縁組のため・生計の資本としての贈与」と限定されている。平成16年10月に最高裁で「生命保険金は特別受益に該当しない」と判決がだされた。もし親が自宅を長男に相続させる代わりに、次男に保険金を受け取らせた場合、次男は保険金をもらったのだからということで、親に感謝しながら、自宅を長男に相続させるという遺産分割協議書にハンコをつけば一件落着だが、保険金は次男固有の財産であり、相続財産ではないということでハンコをつかず、自宅を法定相続分の通り半分づつに分けるべきと主張することも法的には、可能になる。

もし被相続人が長男に自宅をと遺言をしていても、次男には25%の遺留分減殺請求が可能であり、同様に兄弟間で揉めることになる。生命保険金の受取人をこの機会に見直し、余分な課税を浴びたり、揉めることの原因にならないように事前に準備しておくことがますます大事になる。

保険金は相続税の納税資金としてもっとも優れているものだ。このせっかくの保険金を無駄な争いのもとにしないよう気をつけていきましょう。

 2008年11月24日   編 集 人  千 葉 和 彦

(千葉会計事務所:千葉経営企画㈱:千葉和彦税理士事務所)
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