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2017年8月 1日 (火)

信託の活用について

   前回は「信託」を理解するコツについて書かせていただきました。今回は、その「活用」ついて説明していきます。

信託とは、一言で言えば、「信じて託す」ことでした。ここでは、登場人物が3名登場します。すなわち委託者(託す人)・受託者(託される人)・受益者(実質上の所有者に見なされる人)の3名です。信託は委託者と受託者の間で「信託契約」を結ぶと同時に効果が生じます。

  以下信託が何故有効な対策になるのか見ていきたいと思います。

1 認知症対策として有効

   65歳以上の約5人に一人が認知症になり、2025年には認知症患者数は約700万人前後に達するとのことです。

認知症になると、遺言や不動産取引、相続税対策などが一切できなくなります。もちろん銀行口座も凍結され、親を施設にいれる資金も親の口座から引き出せません。

やむなく成年後見人を立てざるを得ませんが、成年後見人は本人の財産の保護が目的なので、施設の費用を引き出すことはできますが、子や孫に金銭を贈与したり、相続対策のためアパートを建てるなどの行為は、本人の財産を減らすことになるからまず認められません。

しかし「信託」を活用するとそれらの欠点をカバーすることが可能です。

2 事業承継対策に有効

  自社株式を長男に贈与した後、長男が死亡した場合、自社株式は事業に関わっていない長男の嫁に相続されるのが通常ですが、例えば、一緒に仕事をしている次男などに引き継がせることができます。

信託の仕組みを導入することで、民法の法定相続の概念にとらわれない柔軟な承継先の指定が何世代にわたっても可能になります。

3 不動産の共有化対策として有効

  遺産の大半が一つの不動産の場合、その不動産を共同相続してしまうことは大きなリスクを伴います。

つまり、共有不動産は、共有者全員が同意・協力しないと換価処分等ができませんので、共有者間で確執があると、不動産の有効活用ができなくなる可能性があります。

そこで、その不動産を信託し、受益権を共有化します。すると、共有者としての権利・財産価値は維持しつつ、管理処分権限を受託者に集約することができ、その結果、不動産の「塩漬け」を防ぐことができます。

4 遺産受取方法の多様化として有効

  一括で受け取るのではなく、毎月の生活費として「定額給付」にすることができます。

5 相続発生時でもスムーズな財産管理法として有効

  相続発生時から遺言執行が完了するまでの、資産凍結の期間を排除できます。

6 財産隔離機能を利用したリスクヘッジとして有効

  詐害行為にならない範囲においては、委託者の債権者からの差押えを回避したり、自己破産・民事再生による清算対象の財産から除外が可能になります。

「信託」そのものは直接「節税対策」にならないかも知れませんが、相続対策として重要な「遺産争いの防止対策」として大きな成果を生み出すことができます。

是非皆様も活用を検討されてみてはいかがでしょうか。応援しています。

2017年7月28日 著 者 税理士  千葉 和彦

2017年7月 6日 (木)

「信託」を理解するコツは?

   今回は、前回の約束に従い、「信託」について話を進めていきます。

巷では「信託」という言葉が大分聞かれるようになりましたが、まだまだ一般的ではないようです。それは「信託」が何となくわかりにくく感じられるからです。

信託を一言で言えば・・・「信じて託す」・・ことにつきます。そう考えれば簡単なことですが、登場人物が二人ではなく三人なので、話をややこしくしているようです。

さて、その登場人物は、委託者、受託者、受益者の三人ですが、この三者の関係をしっかり理解することが信託を理解するコツです。

まず例えば委託者が自分の財産の管理を受託者にまかせます。財産は受託者の名義に変わります(ここが最初の理解の難関です。)名義は変わりますが、それは受託者がその財産を管理、処分しやすいように名義が変わるだけで、真の所有者ではありません。

それでは真の所有者は委託者のままかというと、決してそうではなく、受益者が真の所有者になります。(ここが一番わかりにくいところですね。)

例えば委託者である父が自分のアパートを同族の法人を受託者として信託し、受益者を長男にしたとします。

アパートの名義は受託者になった同族法人になりますが、真の所有者は受益者の長男です。当然信託後のアパートの家賃は長男のものになるので、長男は毎年の家賃を自分の不動産所得して確定申告します。

しかし、これで「めでたし、めでたし」ということにはなりません。真の所有者が長男であるならば、信託した時点で委託者である父からアパートが贈与されたことになるので、のんびりと不動産所得の申告を済ませ、やれやれとしているところに、多額の贈与税が押し寄せてきます。

このように、真の所有者=受益者を誰にするかで、時には思わぬ税金が発生することがあります。

そうならないようにするには、委託者である父をそのまま受益者にしておきます。そうすると、委託者と受益者は同じ人物ですから、贈与税の問題もなくなり、不動産所得の申告も今まで通りです。

では、信託する前と何も変わらないではないか?という疑問が生じます。確かに税務上は特に大きく変わることはありませんが、(他の不動産所得と損益の通算ができないくらいです。)大きく変わる点があります。

それは、委託者である父親が認知症になったり、脳梗塞で倒れたりした場合です。認知症や脳梗塞で病状に伏し、意思表示ができなくなった瞬間から父親の財産は凍結され、銀行預金の解約も不動産や株式の贈与や売買などが一切できなくなります。これは大きなリスクです。何故なら父親の入院費用や手術費用さえも父親の口座からは引き出せなくなるからです。

このようなリスクに対処できるのが「信託」です。この「信託」をしていると受託者の判断で預金の引き出しだけでなく、必要であればアパートの修繕、売却などもでき、急な事態に慌てることもありません。

しかも信託契約は万が一の場合の次の受益者も指定しておくことができるため、遺言の代用を兼ねることもできます。遺言は敷居が高くてなかなか書けなかった人でも信託契約だと意外と抵抗が少なく簡単にできたりするケースも多いようです。

このように活用の仕方では大きな成果を生むことのできるのが「信託」だということを是非皆さんにも理解していただけましたら幸いです。

2017年6月30日(金) 著 者  千葉 和彦

2017年5月 1日 (月)

追徴課税は40億円!長男名義の株を「相続財産」認定・・名義株を考える・・

   戸建て住宅販売大手の飯田グループホールディングス(GHD)が、創業者の相続に絡み、東京国税局に80億円以上の相続財産の申告漏れを指摘されていたことが明らかになった。

申告から漏れていたのは関連会社の「自社株」で、長男名義であったにもかかわらず創業者の財産に当たると認定されて40億円にも上る追徴課税をされた。

 東京国税局が申告漏れを指摘したのは、同GHDの創業者・飯田一男氏から長男に引き継がれた資産管理会社の株式。長男名義となっていたものの、取得に際しての資金を一男氏が負担していたことから「名義株」であると認定され、過少申告加算税などを含めて40億円の追徴課税が課されたのだ。

すなわち、税法上、このような名義株は名義人の財産ではなく真の所有者(実質的な所有者)の資産として扱われるので注意が必要だ。

   平成2年以前の商法では株式会社を設立するときの発起人の最低人数が7名とされていたため、創業者だけでは足りず、親族、従業員などの名前を借りることが一般的に行われていた。すなわち、歴史の長い会社ほど名義株が残っている可能性が高い。

しかも、株主は名義だけを貸しているので、自分がその会社の株主であることを認識していないケースも多い。株主名簿、もしくは、法人税申告書別表二「同族会社の判定に関する明細書」にて、そこに記載されている名義人が真実の株主であるのか否かを確認し、整理しておくことが何よりも重要だ。しかも名義株の整理は、名義貸借当事者が存命中に、できるだけ友好的に処理を進めておくことが、最良の事前対策になる。

まずは、名義株かどうか事実関係をはっきりさせ、名義株主には、書面による承諾を取り付けておくことが重要だ。それは名義人に「自分は名義人であること」を一筆書いておいてもらうことだ。そして法人税申告書別表第二の株主の記載を変更しておく。この明細書は、法人税部門だけでなく資産課税部門でも情報として管理しているので重要な資料になるからだ。

もし、名義貸与に関する覚書や念書等が存在せず、配当を長年その名義人が受領していた場合や名義書換の協力を得られないときは、名義人からの株式買い取りや、種類株式を活用した少数株主排除を検討するなどの対策も視野にいれなければならない。

 また所在不明で連絡の取れない株主について、次の①、②の要件をいずれも満たしているときは、取締役会の決議により、裁判所の許可を得て株式を売却すること(自己株式取得も可能)が認められている。

① 株主に対する通知又は催告が5年以上継続して到達しないと

② その株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったとき

ちなみに会社が無配の場合でも、継続して5年間配当を受領していないことに該当する。また会社が勝手に売却するわけだから、その代金は裁判所へ供託することになるが、株主は整理することができる。

いずれにせよ、この名義株問題は頭の痛いところだが、避けて通ることはできない。後回しにすればするほど、解決するのに何倍もエネルギーを使うことになる。まずはすぐに着手することから始めようではないか。応援しています。
 
2017年4月27日(木)  税理士 千葉 和彦

2016年10月31日 (月)

非顧客に聞け!

 「作成依頼していた来年のオリジナルカレンダーが届きました。」と総務の報告を受け、今年も終わりが近いことに改めて気づかされました。

年末には当社恒例のオーナーズセミナー懇親会、年明けには新春セミナーとビッグイベントが控えています。

その新春セミナーでは十勝バスの野村社長に講演いただく予定です。約40年ぶりに利用客数を増やし、路線バスの運送収入を上昇に転じさせ、増収、増益を実現した社長です。

   十勝バスは、北海道帯広市を中心に路線バスを運営しています。マイカーの普及や人口減少で利用客数は毎年減少し、厳しい経営状況が続いていました。このような場合、まずどの経営者でも考え実施することがコスト削減です。

そして、その筆頭が人件費です。十勝バスも、毎年給与や賞与のカットによる人件費の削減を続けてきました。そのため社員の心は荒み、荒れ果てていたようです。

野村社長が98年4月に父親の跡を継ぎ入社してから「利用客を増やすために営業を強化しよう」と言い続けてきたものの社員の返答は「嫌だ」「無駄だ」「無理だ」の繰り返しでした。

しかし08年、燃料費の高騰でいよいよ経営危機が深刻化します。ここで再度社員に「営業して利用客を増やそう」と呼びかけたところ、なんとか応じてくれ、社員が「ここからやりたい」と指さしたのは、中心部から離れた小さなバス停でした。

「最初は1つの停留所でいい。でも、もしここで成果が出たら、隣の停留所でもやろう。そうやって成果が出るたびに営業するエリアを広げていこうね。」とバス停から半径200メートル程に住む約300世帯の住人の自宅を一軒一軒回る「戸別訪問」を実施しました。

「どうしてバスに乗っていただけないのですか?」大半の人が「行きたい方向への路線がない」などと答えます。

「年一回でもいいんですよ。1回くらいなら、行きたい方向へ向かうバスがあるじゃないですか?」そう食らいつく社長に「うーん」と考え込んだある人が答えたのです。

「良く考えたら、バスがどこに向かっているかを知らないんだ。前と後ろ、どちらから乗ればいいかも知らないし、料金も分からない。だからちょっと怖いんだよな」社長は目が回るほど驚きました。

そんな根本的なことすら知らなかったのか。あるいはしばらく乗らない間に忘れてしまったのか・・・。要するに、お客様がバスに乗らないのは「不便」だからではない。「不安」だからでした。

この発見が突破口になり、とにかくお客様の不安を解消しようと、バスの乗り方を説明するパンフレットを作成して地元で配りました。またケーブルテレビでバスの乗り方を説明するCMも流しました。

戸別訪問を重ねると、こんな要望も聞こえてきました。「病院に行くのにバスを使いたい。」「スーパーにバスで行きたい。」しかし社長たちは最初不思議でならなかったようです。なぜなら、バス路線はすでに、主な病院やスーパーは必ず通るように設計されているからです。

しかし、どの停留所の近くにどんな施設があるかが、地域住民には分かりにくかったのです。そこで、どの路線を使えば、どんな施設に行けるかを解説する「目的別時刻表」を作成しました。

この取り組みを通じて、社長は気づきました。バス会社を経営していると、ともするとバスを運行することが「目的」になってしまいます。しかし、お客様にとっては、バスは「手段」に過ぎません。自分たちの都合や常識を脇に置き、お客様にとっての「良き手段」に徹することが、極めて重要です。

   このように十勝バスは奇跡の復活を遂げました。その一番は「非顧客」に聞いたことです。」「非顧客」とは「顧客であってもおかしくないにもかかわらず顧客になっていない人たち」です。

まさしく十勝バスにとってはバスに乗らない地域住民のことです。その非顧客の声にこそヒントがあったのです。貴社にも「非顧客」は必ずいるはずです。

十勝バス野口社長の話は地元の社長さん達に、多くのヒントを与えてくれるものと思います。新春お待ちしています。

2016年10月31日 著者 税理士 千葉 和彦

2016年10月 5日 (水)

長寿企業に秘訣を学ぶ

  人間は生まれてからすぐに死に向かって行く。会社も創業と同時に倒産に向かって進む。

人間と企業では大きく異なる点がひとつある。人間はどんなに努力をしても150年は生きられないが、企業は、そのやり方次第では100年以上、ひいては1000年生き残れるのだ。

実際、現在も存続している「金剛組」は、「儲け過ぎない。」「政治に近づかない。」をモットーに、創業してから1400年以上続いている。地元宮城でも伊達家湯浴み御殿として栄えた「ホテル佐勘」は832年続いている。

現在、日本国内には400万事業者あると言われているが、そのうち、100年以上続いている企業は5万社~10万社しかなく、いかに存続が厳しいかが容易に想像できる。創業200年以上ともなればわずか3100社しかない。

しかし、驚くことに世界全体の40%が日本に集中しているのだ。日本はある意味世界的にも珍しい「長寿企業王国」と言っても良いのではないか。

私は、昔ながらの日本独特の要因が重なり、多くの老舗企業を生み出しているのではないだろうかと考えている。

その証拠に、例えば隣国の中国は4000年の歴史を誇るが、創業100年以上の企業はほとんどない。

これは中国の血縁重視の家長制が大きく影響している。中国の昔からの格言「有能な他人より無能な血縁を信頼せよ」からも理解できる。

すなわち、たとえ長男が次期経営者に向いてなくても有無を言わせず跡を継がせるわけだから結果は自ずと知れたところだ。

日本と言えば古くから「家」の存続を第一に考えるため、血縁にはこだわらないところがある。「息子は選べないが婿は選べる。」と娘が生まれると、大阪の船場では、お赤飯を炊いて祝う風習が続いている。

すなわち日本独特の養子制度というものが、これら多くの老舗を生み出している一要因にもなっていることは間違いない。

 日本における老舗企業は、「血」に固執しない柔軟性と他者を受け入れる許容力で意思決定の判断基準を目先の「儲け」に置かず、常に「社是・社訓・経営理念」に置いているようだ。

そのことは逆に、その判断基準を忘れた時に、たとえ老舗といえども幕を閉じることになる。

まだ記憶にされている方も多いと思うが、ペコちゃんで知られた(株)不二家は創業家の、利益至上主義で消費期限切れの原料を使用し、倒産寸前に追い込まれた。

あの有名な(株)赤福も同様な理由でかつての勢いはない。まさしく、創業者の「経営理念」をしっかりと受け継いでいくことでしか老舗企業にはなれないのだ。

真の老舗企業とは「驕らず」「謙虚に」常に時代の先を読みながら「改革の精神」で取り組み続けているところなのだ。

アメリカの数少ない老舗企業(もちろん国自体が建国240年と若いので無理もないかもしれない。)の中の「ジョンソン&ジョンソン」(創業130年)はその長寿の秘訣を聞かれ、「Our Credo(我が信条)(経営理念)」と答えていることを見ても明らかだ。

まだ「経営理念」を持たずに、その場、その場で判断されてきた会社はまずこの「経営理念」作りから是非進めていただきたい。

当社では「将軍の日」と題したセミナーで「経営理念」を作るところからご支援させていただきます。

2016年9月30日(金)         著 者 税理士  千葉 和彦

2016年8月30日 (火)

捨てられる銀行

   先月末、当社の顧問先の社長にお会いした時の話だ。一通り打ち合わせが終わると「先生この本読まれましたか?」とある本を差し出された。

それは、講談社から出版された橋本卓典氏著作の「捨てられる銀行」という何ともセンセーショナルな題目の本だった。

はずかしながらその本の存在すら知らなかったので、早速購入し、お盆中に読んでみた。なかなか興味深い内容なので是非一読をお勧めしたいと思う。その中である地銀の話が出ていたので、ご紹介したい。以下引用である。

 ある医療法人が地元の地銀2行に利益改善策を提案するよう求めた。すると、A行は医療法人に対して試行錯誤しながら改善提案をしてきた。もう一つのB行は、貸出残高ではA行を上回るメインバンクであったが、支店長が医療法人からの依頼を甘く見たのか、要請を放置した。営業目標への貢献にも繋がらないだろう。余計なコストを負いたくないという思いもあったろう。

 しばらくして、医療法人からB行に通告が入った。借りている全額をA行に移すと。メインバンクの交代だ。しかも地域金融の視点に置いては看過できる融資額ではない。文字通り激震が走った。

思わぬ医療法人の行動に面喰ったB行は慌てて本部に報告し、本部から担当役員が飛んできて医療法人に謝罪し、メインバンク変更の見直しを求めたという。それでも医療法人は、クビを縦に振らなかった。

事態の重大さから、後日、ついにB行の頭取自らが医療法人を訪問したという。B行としては最大限の誠意を示したつもりだろう。B行の頭取は医療法人の理事長に対し、「どうか考え直していただきたい。そうでないと私は支店長を更迭しなければならなくなる。」と、支店長のクビはあなたの一存にかかっていると言わんばかりに理事長へ翻意を促した。

すると、理事長はため息をついて言った。「あなた方はいつもそうだ。何も分かっていない。顧客の方を見ていない。私は利益改善提案をお願いしたのに、提案はせずに、いまだに部下の更迭せざるを得なくなるとか、困るとか自分の話ばかりされる。私たち客には何ら関係のない話だ。だから私はメインバンクを変更するとお伝えしたのです。」
 

今日お会いした社長が笑いながら話していたことも、上記の事案と関連して考えさせられた。それは、いつもお願いしている保険代理店に資料を郵送してもらった時のことだが、何と切手が貼り忘れていたそうだ。

そこで代理店の社長に話したところ、その社長曰く「その日はあいにく事務員が休んでおり、あなたが大変急いでいるようでしたので、不慣れな私が自ら作業をしたため、切手を貼り忘れたのです。」という返答だったそうだ。

これもまさしく顧客目線の欠如と言わざるを得ない。処理をしたものが、新人だろうが社長だろうが、顧客には何の関係もないことなのだ。私もサービス業を営む者として大いに反省させられた。

顧客目線とか顧客満足を語る人は多いが、本当の意味での顧客目線というものを、いつも考えながら仕事をしていかなければならないと肝に銘じた事案だった。 

2016年8月29日(月)著者 税理士 千葉和彦

2016年7月29日 (金)

JPBM永年表彰に参加して

  震災後久しぶりに、東京のJPBMの全国統一研修会に出席した。何故なら本部より永年会員の表彰をしたいので、今回の大会には参加してほしいと何度も連絡をいただいたからだ。会場では、懐かしい会員に再会することができ、とても有意義な東京出張になった。

このJPBMとは「日本中小企業経営支援専門家協会」のことだ。あまりにも長たらしい名前なので簡略化して言われている。

会の趣旨は中小企業の経営支援を9士業(公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、弁護士、不動産鑑定士、弁理士、技術士、司法書士)で連携していこうというものだ。

前身は「日本事業承継コンサルタント協会」で当初は税理士、会計士のみで相続・事業承継の勉強会や実践を行っていた。私はその時からの会員で、毎月事業承継問題の勉強会に出席していた。

その後、中小企業の事業承継、経営支援は税理士、会計士だけでは対応が難しいということで今回の会ができたのだ。約300名の会員がおり、日本最大規模だ。全国に会員がおり、情報を交換しながらお互い切磋琢磨をはかっている。

私も、震災前には度々出席していたが最近はご無沙汰していた。久々にお会いした専務理事に「ただ会費を払い続けた会員なのに表彰はお恥ずかしい限りです。」と話すと「そのような会員も会では重要ですよ。」と冗談を言って慰めてくれた。

 分科会では農業の6次産業化に取り組んでいる方の話を聞くことができた。6次産業化とは、農業や水産業などの1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す。このような経営の多角化を6次産業化と呼んでいる。

すなわち農家などの生産者が作ったものを自ら加工し、販売まで行うということだ。極端な成功例ではタレントの田中義剛さんの北海道の花畑牧場「生キャラメル」をイメージしていただけるとわかりやすい。

しかし、実際に農家の方だけで手がけることはリスクが高すぎる。そこで加工、販売のプロと連携することが重要になる。

会場には福島から(株)フルーツファームカトウの加藤さん、農業生産法人スワンドリームの三浦さん、福島の食大学の鹿野シェフが参加していた。

加藤氏は、土壌にこだわり化学肥料は使わず独自の酵母土を30年かけて生み出した。その土から生まれる吟壌桃(土壌の壌を使うほど土に大きな思いれがある。)はまさしく別格のとろけるような甘さだった。サクランボ、リンゴもその土で生産している。そこで加藤氏は一昨年、りんごを使ったお酒にも挑戦し、見事なシードルを作り上げることに成功した。

しかし昨年、3000本分のシードルを世に出すため、生産委託をある醸造所にお願いしたところ、これが大きな悲劇を生んでしまったのだ。

その醸造所にシードル生産のスキルがなく、暖冬の影響もあったのだろうか、腐敗臭のする失敗作となってしまったのだ。「約3トンのリンゴを台無しにしてしまった。」(加藤氏)という。

更に悪いことに、醸造所との間の契約はきちんとできておらず、その出来栄えに対し、何の保証もなかった。加藤氏は「醸造所も自分でやるべきだ」と決意した。

現在JPBMのネットワークの支援で醸造所建設に向けて事業計画が進められている。「イタリアの何もない片田舎に、キノコ料理だけを食べに世界中から人が集まる場所があるんですよ。うちの農園にもシードルや果物を楽しんでもらえる場所を設けて世界中から人が来る場所にしたいですね。」と加藤氏は夢を語っていた。

我々会員はその夢の実現に向けて一緒に関わっていきたいと思う。 

2016年7月27日(水) 著 者   千葉 和彦

2016年7月 6日 (水)

過大設備投資

  第79回の「将軍の日」が昨日終了した。「将軍の日」とは社長が一日じっくり考え、5か年計画を立ててもらう日だ。

当社のスタッフも事前準備やら当日の対応で苦労しているが、一日の研修が終わり、社長さんから「勉強になったよ。ありがとう。」と言ってもらえることが最高のご褒美である。その帰りの笑顔を見た時、疲れも吹き飛ぶからだ。

   将軍の日にお誘いすると一番言われるのが「うちの業界は先のことは予測できないよ。」という言葉だ。我々は神でも占い師でもないのだから当然将来のことはわからない。

しかし、「経営計画」とは将来を予測するものではなく、社長自身のあるいは会社の「目標を設定」することだということを再度確認してもらいたい。

そして、この場合の目標は現在の延長線上に存在するものはない。あくまでも必死に自分が努力しなければ達成することのできない「目標」こそが、ここでいう「目標」なのだということを肝に銘じておかなければならない。

現在の自分では無理に思える「目標」も将来達成するのは、今の自分ではなくその目標実現に向けて努力し続け、成長した自分であるのだから決してあきらめてはならない。

   今回は、5年後の売り上げを現在の半分くらいにした計画を立てられた社長がいたが、これはここでいう「目標」からかけ離れたものだ。その社長には、もう一つ高い目標を掲げた経営計画も別途作成することを勧めた。

何故なら、そうしないと、5年後売上が半分になる計画の通りになってしまうからだ。将来とは思い描いた自分の強いイメージどおりになることが多いからだ。

その社長は、きっと厳しい業界なので5年後にたとえ売り上げが半分になっても生き残れる会社にしようと思って作った経営計画だと思うが、その計画のイメージだけだと会社はその通りになってしまうのでそれを避けなければならない。

   売り上げをシビアにみた計画が必要なのは新たな設備投資を行う場合である。売り上げが上昇して社長はじめ社内全体がイケイケムードの時、それに異を唱えることが一社員ではできない。そんな時こそ経理部の出番だ。

まずは、その設備投資で社長が考えているように売り上げが上がるケースの計画を作るのは当然だ。それによると設備投資の借り入れも順調に返済され、資金も残る計画になるはずだ。おそらく社長の頭の中はこの計画で一杯のはず。

しかし、その計画だけではなく、売り上げが伸びず現状維持の場合の計画と売り上げが急激に減少した場合の計画も作成し、社長に淡々と情報としてそれらの計画を示さなければならない。社長はその情報をもとに考え直すはずです。

倒産の大きな要因の一つである過大設備投資は、思い切って設備投資したものの予想していた売り上げが上がらなかった時に資金がショートすることで生じるのだ。

多くの場合最初の計画だけで設備投資を行い、その計画通りに行かなくなって会社が資金繰りに異常をきたし、破たんに追い込まれるのだ。

最悪の計画の場合でも資金が回るという前提のもとに設備投資は判断しなければならない。そうすれば少なくとも過大設備投資での倒産は避けられる。

予測できない外部環境の悪化で窮地に立たされた時でも資金が回る計画をしっかり立てて設備投資をしていこうではありませんか。

2016年6月29日(水)   著 者 税理士  千葉 和彦

2016年6月 1日 (水)

相続放棄

 先日、下記のような質問がありました。

 父が亡くなりました。預金(100万円)よりも借金(1000万円)の方が多いので相続の放棄を考えています。

しかし、父が生命保険料を負担し、被保険者となっている生命保険契約があって、長男である私が死亡保険金3000万円を受け取ることになっています。

相続を放棄するとこの保険金を受け取れなくなり不利になるので相続の放棄をしないようにと考えています。どうすれば良いでしょうか?

 さて、その答えは・・・。お父様が契約者で保険料も支払っていて、ご自分にかけていた保険金を受け取るわけですから相続財産ですね。放棄したら受け取れなくなりますよ。という答えが返ってきそうですが、もちろんこれは、間違っています。契約者と被保険者が同一の場合、受け取る死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。

つまり保険金は民法上、相続財産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができるのです。めでたし・・めでたし。しかし、この相続放棄・・思わぬ落とし穴がある場合があるのです。

 かなり昔のことになりますが、30代の女性の方が乳飲み子をおんぶしながら事務所に相談にこられたことがありました。

話を聞くと、ご主人が大きな借金を残して交通事故で亡くなったとのことです。商工会さんに相談したところ「相続放棄」という方法を教えてもらい助かったと言いながらも、何故かそわそわと落ち着かない様子でした。

「何かほかにご心配事でもあるのですか?」と聞くと、言いにくそうに「急に主人を亡くし、途方にくれています。これからこの子を抱えてどう生きていけばいいのか不安でいっぱいです。主人が少し保険に加入していてくれたのですが、それだけ受け取ることは虫が良すぎるのでしょうか?」と遠慮がちに話された。「奥さん安心してください。保険は受取人固有の財産ですから相続放棄をしても受取れます。」と私が答えると、少し安心されたようでした。

その後奥様から無事相続放棄の手続きを済ませた連絡がはいり、一安心したが、後日ご主人のご両親に債権者から請求があり、ひとり息子の借金のことを死んだ後に知らされた上、それを払えと言われて大変ショックを受けられていたという。

実はご両親も同時に相続放棄をしておけば何も慌てることはなかったのです。第一順位の相続人が放棄した場合、第二順位、第三順位の相続人に相続権が移ります。このケースの場合奥様は自分たちだけ相続放棄をするのでなく、ご主人のご両親にも相続放棄をしてもらうように話しておくべきだったのです。

もちろん相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行うこととされていますので、先順位の相続人が放棄したことによって、次順位の自己が相続人になったことを知った時から3か月以内に相続の放棄を行えば良いことにはなりますが、第一順位の相続人が放棄するときは第二順位の相続人に話しておくべきでしょう。

このケースは大事には到りませんでしたが、税理士になりたてのころの私の忘れられない案件の一つになりました。

2016年5月27日(金) 著 者  千葉 和彦

2016年5月 6日 (金)

相続税なんか払えるか!

  昨年、相続税の基礎控除が4割引き下げられてから、急に相続の相談が増えてきた。

まずは電話で状況を伺いながら、明らかに基礎控除以下の場合は「安心して下さい。今お聞きした範囲では相続税の基礎控除以下なので相続税の心配はいらないようですよ。」とお答えしている。

一般の方の間に不安が広がってきているように感じる。また申告義務があるのに気付かず、申告しない人が急増し、後日加算税、延滞税で苦しむことになるのではないかと危惧している。

   ある国際コンサルタントの富裕層向けセミナーに出席したときのことだ。

「知恵を使えば相続税なんか払わなくても大丈夫です。日本の税制が合法的にその方法を認めてくれているのです。」講師の声が会場に響いた。会場は一瞬シーンと静まりかえった。

講師は続けた。「お父さんと息子さんが5年を超えて海外で暮らし、お父さんが息子さんに贈与してやれば税金はかかりません。簡単な仕組みです。」と。会場がざわめいた。

聴講しているどこかの社長のような人が声を荒げた。「先生そんな非現実的なことを我々は聞きに来ているのではないですよ。もっと真剣に教えて下さい。」と。講師は続けた。「私は真剣に皆さんにとっておきの方法をお話ししているのです。何が非現実的ですか。今や一国内だけでは節税に限界があるのです。」

   講師の方と個人的に講演後話してみると、講師の方曰く「私の顧客は資産30億円以上の方ばかりです。今日は私の対象とする顧客ではなかったようですね。」と高飛車に語った。

相続税はかかるがそれくらいの資産家の方はほとんど地方にはいない。相続税を申告する人の70%は総資産3億円以下ということを見ても明らかだ。主催者は講師の選定を誤ったように感じた。

講師は続けて私に話した。「日本は1000兆円以上の借金を抱えているのですから、いつ破綻するかわかりませんよ。その意味でも国外脱出を一つの選択肢にしておいた方が良いと思いますよ。」と。

講師の方の話も分からないではないが、多くの人は言葉の壁、現実の仕事、家族を抱えて毎日を必死で暮らしているのだ。講師の方の話は現実的ではないように思えた。

   そのように考えてくると今回のような増税は富裕層にはなんの痛手も与えず、仕事や家庭を抱え、この国で地を這うように生きているまじめな中間層を痛めつけるだけではないだろうか?

それは昨今話題になっているパナマ文書の「タックスヘイブン」を見てもわかることだ。その文書に出てくる人の名前は我々庶民とは、かけ離れた桁違いの富裕層である。しかもその人たちは、税金を免れているのだ。

たとえ合法的であっても感情的にはやるせない気持ちに多くの庶民はなっているのではないか。そして真面目に税金を払うことがばからしくならないことを祈るばかりだ。

真面目に仕事を国内で一生懸命頑張っている人たちが報われる世の中になってほしいものだ。

2016年4月25日  著 者    税理士   千葉 和彦