中小企業

2018年10月 2日 (火)

日本の事業者の2/3が後継者不在

   年商10億円未満の事業者の約2/3が後継者不在だ。(帝国データバンク2017年発表)日本の約400万事業者のうち、年商10億円未満は97%を占めているのだから、これが、日本の中小企業の現状といっても過言ではないでしょう。この数年で数十万社の中小企業が事業承継のタイミングを間違いなく迎えることになります。

   先代が、第一にすべきことは、早急に後継者を決めることです。しかし、魅力のない会社は誰も継ぎたがりません。経常利益をしっかり出し、将来性も見込めるような企業しか誰も継ぎたがりません。後継者に次を託すためには、自分の代で、しっかりと自社の事業を磨き上げ、その中で後継者を見極め、時間をかけて引き継いでいく必要があるのです。では、後継者の見つからない企業はどうなるのでしょうか?魅力のない会社を誰も引き継ぎたがらないように、M&Aの相手もなかなか見つかりません。そうなると廃業しか方法がなくなります。昨今廃業はかなり増えてきています。しかし、簡単に廃業といいますが、社員がいれば解雇しなければなりませんし、退職金の問題もあります。取引先との事業中止の根回しも必要です。また設備など希望するような価格で売れるとは限りません。解散の場合の税金もあります。廃業するのにもエネルギーとお金がかかるのです。

   どのような道を選択するにしても早い取り組みと意思決定が重要です。後継者を決めるには、まずは、一人で悩んでいないで、親族に相談して見ましょう。思わぬ知恵がでることもあります。また会社内に有力な人材がいる時は、こちらの意向を早く伝え、後継者教育に取り組みましょう。会社に魅力があれば、早めにM&Aの専門家に相談するのも一法です。いずれの方法を取るにしても、スピードが大事です。オーナー社長の早い意思決定と覚悟、思い切りが大事なのです。高齢になっても社長を譲らない、譲りたくても譲れない・・・と様々な想いや悩みを抱えているオーナー社長も多いことでしょう。しかし、進むべき道を決めずして1日、2日と経ちすれば、5年、10年は、あっという間です。その間、自分も社員もまた年を重ねていくのです。それに、後継者を決めてからも、自社株の異動の問題、社内の組織体制の整備、後継者を補佐する人の確保、後継者への段階的な権限の委譲、承継後の経営計画の策定、経営者の個人保証への対応など・・しなければならないことが山積みです。早く後継者を確保し、次の段階に進まなければならないのです。平成30年改正の「新事業承継税制」も後継者が決まって初めて活用できるのです。次回は新事業承継税制の活用について書きたいと思います。

2018年9月25日 著 者 税理士  千葉 和彦

2018年3月 3日 (土)

外国人技能実習生制度の活用

 「どんなに募集をかけても申し込みがない。」「やっと新人が採用できたと思ったらすぐに辞められた。」「とにかく人が取れない。」人手不足がどの業界でも深刻です。
 
最近お会いした社長さん方、運送業、建設業、介護事業、販売業・・・・。どの業種に限らず悩みは共通のようです。中には、「先生うちのトップ営業マンにこんな手紙がきているよ」と見せてくれた社長がいます。
 
その手紙の中には、その営業マン個人あてにA4の用紙びっしりと甘い言葉で転職の誘いが書かれていました。誰でも引き込まれそうな名文で、魅力ある言葉で一杯。やる気のある若い人なら誰でも心が動かされて当然と思えるものでした。
 
特に介護業界は深刻さが増してきています。このままでは団塊の世代が後期高齢者になる2030年までに30万人以上の介護士が不足し、患者さんへ十分な介護サービスが提供できないだけでなく、現在働いている職員の疲弊にもつながりかねません。
 
もちろん人手不足を補うという目的だけで今回の外国人介護実習生を採用することはできませんが、介護実習生を計画的に採用することで、事業計画も立てやすくなることは間違いありません。
 
 1993年より外国人技能実習生制度が制度化され、様々な職種で活用されてきましたが、その対象職種に、新たに介護が昨年11月より加わりました。
 
この外国人技能実習制度の趣旨は人材不足を単に補うものではなく、日本の企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実際の実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学んでもらい、帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした公的制度です。
 
そのため宿舎を新築して積極的に受け入れを準備しているところもあれば、文化や価値観の違いを踏まえた十分な指導ができるか戸惑っているところも多いようです。
 
 この制度に対する理解不足から過去には賃金不払いや失踪事件なども数多くあり、ただ単に安い賃金で人手不足を補おうという考え方ではだめです。この制度を取り入れる際には、この制度に対し、十分な理解と準備、また子供が一人増えるくらいの覚悟を持って取り組まなければなりません。
 
 そのためにはベトナムの送り出し機関も日本側の監理団体もしっかりしたところを選択する必要があります。現在ベトナムには約240の送り出し機関がありますが、そのほとんどが弱小(数名から数十名/年間)です。信頼できる送り出し機関選定のポイントは以下の通りです。
 
①専用の学校施設を所有しているか
 
②専用の学生寮を所有しているか
 
③専任の日本人有資格教師が常任しているか
 
④教育方針、教師、プログラムは会話重視型か
 
⑤候補生の与信の取り方は適切か⑥送り出し機関が法律を遵守しているかなどです。
 
 今回上記の条件をすべてクリアしているベトナムの派遣元の責任者の方を4月20日に仙台にお招きし、直接本人から話を伺う機会を持つことができました。
 
是非この機会に関心のある方は参加していただき、直接疑問点などぶつけて生の声を聞いていただければと思います。一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 
2018年2月26日 税理士 千葉和彦
 
 

2018年2月 1日 (木)

平成30年度税制改正の目玉‥事業承継税制

 平成30年度の税制改正の目玉は何と言っても、「事業承継税制の改正」だ。今年度4月1日以後スタートする。
 
当初経済産業省は、ドイツなどに「5年で免除」の制度があるということで、我が国も同じく事業を5年継続したら猶予税額はすべて免除することを提案していたようだ。
 
しかし実際に財務省がドイツに行って調べてみると、遊休不動産、賃貸不動産、余裕資金を除いた事業用財産にかかる分だけが免除だったことが判明したため5年で免除案は受け入れられなかったようだ。
 
 今回の改正は新たに創設されたもので、前の「事業承継税制」は、そのまま生きていることにも注意が必要だ。
 
各新聞紙上では10年間の限定で、と書かれているが、今回の改正では、5年以内(平成35年3月31日)に認定経営革新等支援機関の支援・援助のもとに「特例承継計画」を都道府県に提出することが条件であり、
 
それから5年以内に自社株の贈与の実行をすることが大前提なので、提出が5年後ぎりぎりになった場合に、そこから5年以内にということで、10年限定という書き方をしているのだ。
 
届け出はあくまでも5年以内が条件であることに注意が必要だ。
 
自社株の贈与の実行は、平成39年12月31日までが条件なので、正式には9年9ヶ月に限定された制度になる。
 
もし提出後、5年以内に代表者が自社株の贈与をせずに死亡した場合は、相続税の納税猶予として、当然この猶予制度は使えることになるので、まずは提出しておくというのも一つの対策になるだろう。
 
たとえ使わなかったとしても特に罰則はないのだから、まずは提出しておきたい。
 
仮に、提出を忘れ、代表者が死亡した場合でも前の「事業承継税制」は使えるので決して諦めてはいけない。
 
ただしその場合の納税猶予は80%しかできず、しかも80%の雇用継続要件からも逃げることはできない。
 
 今まで、この制度が活用されなかった一番の理由は、80%の雇用継続要件だ。
 
今回は、この要件も実質撤廃と言ってよい。
 
もし雇用が80%維持できなかった場合には、経営革新等支援機関を通じて、なぜ達成できなかったか等の実績報告を提出し、妥当と認められればOKということになるからだ。
 
これはOKを前提にしたものと考えられる。
 
 また出口のリスクも今回軽減されている。
 
5年経過後に株式を譲渡、合併、清算をした場合に、その時の株式の時価分の税金しかかけられず、その差額分は免除されることになった。
 
このように使い勝手が良くなった「事業承継税制」だが、今まで通り、資産管理会社には適用できないのが残念だ。
 
不動産や預貯金、有価証券の割合が70%を超えるか、又は家賃収入が売り上げの75%を超えると、その会社は資産管理会社と見られてしまう。
 
しかし、従業員を5名以上(生計を別にした親族でもOK)雇用していれば、資産管理会社と見られないので、対策の一つに加えてはいかがだろうか。
 
今回の制度は株価評価が高くなりすぎている会社に活用するものだが、以前のように退職金を支給し、株価評価を引き下げる手法や暦年贈与を活用する手法は有効なので、自社に合った方法での対応が重要と考える。
 
ただ株価が高くなりすぎて困っているところは、今回の「事業承継税制」を大いに活用してはいかがだろうか。応援しています。
 
2018年1月29日    税理士  千葉和彦

2017年8月30日 (水)

そろそろ本気で事業承継を考えないと!

  8月のオーナーズセミナーでは、良くあるケースとして下記の事例を取り上げました。

【事例】

『私の父は、製造業を営むA社のオーナー経営者です。いわゆるワンマン経営者であり、年齢は70歳になりますが、常に生涯現役を言葉にしており、事業承継のことは一切口にしません。私は、息子で専務という肩書きはあるものの、経営に関する権限は一切なく、従業員の一部は、会社の将来を心配しているという声も耳にします。

 また、同業他社の二代目同士でよく会社の株価や相続税の話題があがりますが、実際A社株の株価が今いくらで、ましてや父の相続税がいくらになるか分からない状況です。さらに父個人の土地建物がA社の本社としての事業用財産になっています。

 したがって、他の二人の兄弟との遺産分けのバランスについても悩みどころです。しかし、当然、父にもそのような話を一切口にすることはできません。』

 上記のようなケース、多いのではないでしょうか?まず私が最初に思うのは、A社の社長は、一番大事な社長業をしていないということです。

何故なら、社長というのは何はともあれ自社の将来について常に考えている人のことを言うからです。この社長は自社の5年後~10年後についてじっくり考えているように思えません。

自分の年齢と自社の将来を考えた場合、必ず後継者問題が浮かんでくるはずです。社長業で大事な仕事は、経営計画を立てることです。そうすれば、必ずその延長線上に後継者問題があるはずです。

まず、A社長は後継者を決めることが大事です。そして、自社の株価評価は勿論ですが、個人的な財産も棚卸して自身の相続税のシミュレーションをするべきです。自社株の評価が高ければ、その対策を早急に検討しなければなりません。

いくら対策を早急にしても評価が下がらない場合には、平成25年度の改正で、以前より使い勝手が良くなっている「事業承継税制」の活用を考えましょう。

また後継者は決まっているが、まだ自分が現役中は、経営権を持っていたい場合や後継者候補が複数いて後継者を決めきれない場合は、一般社団法人に持たせておくといいと思います。あるいは信託を活用する方法もあります。信託を活用しますと、株式そのものは移動させても、経営権だけ自分に残しておくことが可能です。

「自分の目の黒いうちは、経営権を持ち続け、目を光らせておきたい。」時に、威力を発揮します。また上記の事例のA社長のように、相続財産が事業用財産と自社株しかないような場合は、事業を引き継がない他の相続人に対する遺留分対策も重要です。

自社株式と事業用財産はすべて後継者が相続できるように遺言してあげ、事業を引き継がない他の相続人に対しては、後継者受取人の保険に加入したり、あるいは相続した自社株式を自社で買い取れるようにしておき、後継者が代償金として現金を支払うことができるような仕組みを作ってあげておくことが重要です。

いずれにしても、A社長は、原理原則に戻り、本来の社長業である将来像をしっかり描いていきましょう。応援しています。

2017年8月29日    著 者  税理士  千葉 和彦

2017年8月 1日 (火)

信託の活用について

   前回は「信託」を理解するコツについて書かせていただきました。今回は、その「活用」ついて説明していきます。

信託とは、一言で言えば、「信じて託す」ことでした。ここでは、登場人物が3名登場します。すなわち委託者(託す人)・受託者(託される人)・受益者(実質上の所有者に見なされる人)の3名です。信託は委託者と受託者の間で「信託契約」を結ぶと同時に効果が生じます。

  以下信託が何故有効な対策になるのか見ていきたいと思います。

1 認知症対策として有効

   65歳以上の約5人に一人が認知症になり、2025年には認知症患者数は約700万人前後に達するとのことです。

認知症になると、遺言や不動産取引、相続税対策などが一切できなくなります。もちろん銀行口座も凍結され、親を施設にいれる資金も親の口座から引き出せません。

やむなく成年後見人を立てざるを得ませんが、成年後見人は本人の財産の保護が目的なので、施設の費用を引き出すことはできますが、子や孫に金銭を贈与したり、相続対策のためアパートを建てるなどの行為は、本人の財産を減らすことになるからまず認められません。

しかし「信託」を活用するとそれらの欠点をカバーすることが可能です。

2 事業承継対策に有効

  自社株式を長男に贈与した後、長男が死亡した場合、自社株式は事業に関わっていない長男の嫁に相続されるのが通常ですが、例えば、一緒に仕事をしている次男などに引き継がせることができます。

信託の仕組みを導入することで、民法の法定相続の概念にとらわれない柔軟な承継先の指定が何世代にわたっても可能になります。

3 不動産の共有化対策として有効

  遺産の大半が一つの不動産の場合、その不動産を共同相続してしまうことは大きなリスクを伴います。

つまり、共有不動産は、共有者全員が同意・協力しないと換価処分等ができませんので、共有者間で確執があると、不動産の有効活用ができなくなる可能性があります。

そこで、その不動産を信託し、受益権を共有化します。すると、共有者としての権利・財産価値は維持しつつ、管理処分権限を受託者に集約することができ、その結果、不動産の「塩漬け」を防ぐことができます。

4 遺産受取方法の多様化として有効

  一括で受け取るのではなく、毎月の生活費として「定額給付」にすることができます。

5 相続発生時でもスムーズな財産管理法として有効

  相続発生時から遺言執行が完了するまでの、資産凍結の期間を排除できます。

6 財産隔離機能を利用したリスクヘッジとして有効

  詐害行為にならない範囲においては、委託者の債権者からの差押えを回避したり、自己破産・民事再生による清算対象の財産から除外が可能になります。

「信託」そのものは直接「節税対策」にならないかも知れませんが、相続対策として重要な「遺産争いの防止対策」として大きな成果を生み出すことができます。

是非皆様も活用を検討されてみてはいかがでしょうか。応援しています。

2017年7月28日 著 者 税理士  千葉 和彦

2017年7月 6日 (木)

「信託」を理解するコツは?

   今回は、前回の約束に従い、「信託」について話を進めていきます。

巷では「信託」という言葉が大分聞かれるようになりましたが、まだまだ一般的ではないようです。それは「信託」が何となくわかりにくく感じられるからです。

信託を一言で言えば・・・「信じて託す」・・ことにつきます。そう考えれば簡単なことですが、登場人物が二人ではなく三人なので、話をややこしくしているようです。

さて、その登場人物は、委託者、受託者、受益者の三人ですが、この三者の関係をしっかり理解することが信託を理解するコツです。

まず例えば委託者が自分の財産の管理を受託者にまかせます。財産は受託者の名義に変わります(ここが最初の理解の難関です。)名義は変わりますが、それは受託者がその財産を管理、処分しやすいように名義が変わるだけで、真の所有者ではありません。

それでは真の所有者は委託者のままかというと、決してそうではなく、受益者が真の所有者になります。(ここが一番わかりにくいところですね。)

例えば委託者である父が自分のアパートを同族の法人を受託者として信託し、受益者を長男にしたとします。

アパートの名義は受託者になった同族法人になりますが、真の所有者は受益者の長男です。当然信託後のアパートの家賃は長男のものになるので、長男は毎年の家賃を自分の不動産所得して確定申告します。

しかし、これで「めでたし、めでたし」ということにはなりません。真の所有者が長男であるならば、信託した時点で委託者である父からアパートが贈与されたことになるので、のんびりと不動産所得の申告を済ませ、やれやれとしているところに、多額の贈与税が押し寄せてきます。

このように、真の所有者=受益者を誰にするかで、時には思わぬ税金が発生することがあります。

そうならないようにするには、委託者である父をそのまま受益者にしておきます。そうすると、委託者と受益者は同じ人物ですから、贈与税の問題もなくなり、不動産所得の申告も今まで通りです。

では、信託する前と何も変わらないではないか?という疑問が生じます。確かに税務上は特に大きく変わることはありませんが、(他の不動産所得と損益の通算ができないくらいです。)大きく変わる点があります。

それは、委託者である父親が認知症になったり、脳梗塞で倒れたりした場合です。認知症や脳梗塞で病状に伏し、意思表示ができなくなった瞬間から父親の財産は凍結され、銀行預金の解約も不動産や株式の贈与や売買などが一切できなくなります。これは大きなリスクです。何故なら父親の入院費用や手術費用さえも父親の口座からは引き出せなくなるからです。

このようなリスクに対処できるのが「信託」です。この「信託」をしていると受託者の判断で預金の引き出しだけでなく、必要であればアパートの修繕、売却などもでき、急な事態に慌てることもありません。

しかも信託契約は万が一の場合の次の受益者も指定しておくことができるため、遺言の代用を兼ねることもできます。遺言は敷居が高くてなかなか書けなかった人でも信託契約だと意外と抵抗が少なく簡単にできたりするケースも多いようです。

このように活用の仕方では大きな成果を生むことのできるのが「信託」だということを是非皆さんにも理解していただけましたら幸いです。

2017年6月30日(金) 著 者  千葉 和彦

2017年6月 1日 (木)

65歳以上5人に1人が・・・!

    認知症は高齢になればなるほど、発症する危険が高まります。また、認知症は特別な人に起こる特別な出来事ではなく、歳をとれば誰にでも起こりうる身近な症状です。

厚労省の予測によると65歳以上の約5人に1人が認知症になり、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、認知症患者数は約700万人前後に達するとのことです。

  認知症になると、まず困るのが遺言や不動産取引、相続税対策などがいっさいできなくなることです。平成18年、この認知症が争点となり、横浜地裁で「遺言無効」の判決がくだされました。しかも、無効の判決を受けた遺言は公正証書遺言でした。

話は7年前に遡ります。平成11年、80歳のAさんが遺言を作りたいと信託銀行に電話しました。銀行員は自宅を訪問し、多くの不動産について、相続人4人にどう配分したいかを聞き取り、メモにして公証人に遺言作成を依頼しました。出来上がった遺言書を公証人が読み上げ、本人が自署して、実印を押したとあります。

その後、相続が発生し、この遺言での取得財産が少なかった相続人から「遺言無効」の訴えがなされ、裁判所はこの遺言を無効にする判決を下します。

 判決では遺言作成2年前から本人の認知症が進行しており、すでに自分の年齢も、年月日も、自分の子供の数も分からず、嫁と孫の区別がつかなかったとあります。

これらの状況に照らせば、多数の不動産を4人の子に区別して分けて、遺言執行人についても項目ごとに区分して2名に分け、そのうち1人の執行人である信託銀行の報酬を決めることなど出来ないはず。よって遺言能力はなかったので「遺言無効」という判決でした。

遺言を依頼した親族側からすれば、信託銀行と公証人が受託するなら多少の認知症でも大丈夫だろう、と思ったのでしょう。しかし、認知症が進んでからでは、遺言は遅かったのです。

  相続が発生すると、銀行の口座が凍結されてしまうことは良く知られていますが、認知症になっても口座が凍結されてしまうことは案外知られていません。親が認知症になり、施設に入ることになっても、その資金を親の口座から子供が引き出すこともできません。

また、施設に入る資金がないので、その資金を捻出するために、親の住んでいた住居を売却して資金にしようと思っても当然一切できません。預貯金を動かすには成年後見人を立てざるを得なくなります。

しかし成年後見人は本人の財産の保護が仕事ですから、施設の費用等は引き出すことができますが、子や孫に金銭を贈与したり、相続対策のためにアパートを建てるなどの行為はまず認められません。それは本人の財産を減らすことになるからです。従って、遺言や相続対策は、認知症になる前にしっかり行っておくことが重要になります。

   『相続対策中に認知症になってしまうリスクに対処する方法はありませんか?』とよく聞かれます。その場合には、初めて耳にする方には、わかりにくいかもしれませんが「信託」という方法があります。

しかし、この「信託」も本人が認知症になってしまってからでは、不可能です。何故なら「信託」は「信託契約」という契約だからです。

次回は「信託」についてわかりやすく事例を踏まえてお話していきたいと思います。

2019年5月30日(火)   著 者   税理士   千葉  和彦

2017年5月 1日 (月)

追徴課税は40億円!長男名義の株を「相続財産」認定・・名義株を考える・・

   戸建て住宅販売大手の飯田グループホールディングス(GHD)が、創業者の相続に絡み、東京国税局に80億円以上の相続財産の申告漏れを指摘されていたことが明らかになった。

申告から漏れていたのは関連会社の「自社株」で、長男名義であったにもかかわらず創業者の財産に当たると認定されて40億円にも上る追徴課税をされた。

 東京国税局が申告漏れを指摘したのは、同GHDの創業者・飯田一男氏から長男に引き継がれた資産管理会社の株式。長男名義となっていたものの、取得に際しての資金を一男氏が負担していたことから「名義株」であると認定され、過少申告加算税などを含めて40億円の追徴課税が課されたのだ。

すなわち、税法上、このような名義株は名義人の財産ではなく真の所有者(実質的な所有者)の資産として扱われるので注意が必要だ。

   平成2年以前の商法では株式会社を設立するときの発起人の最低人数が7名とされていたため、創業者だけでは足りず、親族、従業員などの名前を借りることが一般的に行われていた。すなわち、歴史の長い会社ほど名義株が残っている可能性が高い。

しかも、株主は名義だけを貸しているので、自分がその会社の株主であることを認識していないケースも多い。株主名簿、もしくは、法人税申告書別表二「同族会社の判定に関する明細書」にて、そこに記載されている名義人が真実の株主であるのか否かを確認し、整理しておくことが何よりも重要だ。しかも名義株の整理は、名義貸借当事者が存命中に、できるだけ友好的に処理を進めておくことが、最良の事前対策になる。

まずは、名義株かどうか事実関係をはっきりさせ、名義株主には、書面による承諾を取り付けておくことが重要だ。それは名義人に「自分は名義人であること」を一筆書いておいてもらうことだ。そして法人税申告書別表第二の株主の記載を変更しておく。この明細書は、法人税部門だけでなく資産課税部門でも情報として管理しているので重要な資料になるからだ。

もし、名義貸与に関する覚書や念書等が存在せず、配当を長年その名義人が受領していた場合や名義書換の協力を得られないときは、名義人からの株式買い取りや、種類株式を活用した少数株主排除を検討するなどの対策も視野にいれなければならない。

 また所在不明で連絡の取れない株主について、次の①、②の要件をいずれも満たしているときは、取締役会の決議により、裁判所の許可を得て株式を売却すること(自己株式取得も可能)が認められている。

① 株主に対する通知又は催告が5年以上継続して到達しないと

② その株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったとき

ちなみに会社が無配の場合でも、継続して5年間配当を受領していないことに該当する。また会社が勝手に売却するわけだから、その代金は裁判所へ供託することになるが、株主は整理することができる。

いずれにせよ、この名義株問題は頭の痛いところだが、避けて通ることはできない。後回しにすればするほど、解決するのに何倍もエネルギーを使うことになる。まずはすぐに着手することから始めようではないか。応援しています。
 
2017年4月27日(木)  税理士 千葉 和彦

2017年4月 3日 (月)

稀勢の里関 優勝おめでとう!

  先日はテレビの前で君が代の大合唱を聞きながら涙を抑えることができませんでした。言うまでもありません。稀勢の里の奇跡的な初横綱優勝です。

 

稀勢の里は「自分の力以上のものが出た。見えない力が働いた。」と話していました。この無理な出場も、日頃の鍛錬を見ていた何者かが背中を押してくれたのだと思います。.

 

 マスコミは、怪我を押して出場した稀勢の里に対し冷ややかでした。「弱った姿を満天下にさらして判官びいきを誘い、あげく相手にまで気を使わせては、かえって『横綱の威』を毀損することにはならないか。」と。

 

それが打って変って、その翌日の新聞では、「つい先日まで勝負どころで決まって心の弱さを露呈していた30歳が見せた不屈の精神。1度の優勝で人はこんなに変わるのか」とただただ感嘆の感想を述べていました。

 

しかしながら「この決断が正しい選択だったというのは難しい。」と最後まで水を差していたのを不快に思ったのは私だけでしょうか?

 

  大相撲は他のスポーツと違い、日本の伝承文化のひとつという位置づけを持っています。人間の切磋琢磨を神様(日本国土の神様)に奉納する神事なのです。極限まで鍛え上げた肉体と魂の勝負を神様に奉納する日本ならではの国技です。

 

怪我を押して出場した稀勢の里から我々は多くのことを学ぶべきです。そしてこの神聖な国技に相応しい相撲だったと大いに声援を送ろうではありませんか。

 

  話しは変わりますが、本日、毎年恒例の関与先さんの平成29年度経営計画発表会に参加してきました。各事業部門から今年度の計画の発表がありました。最後に私が講評を求められました。

 

私は「詳細なことはともかく、皆さんが計画を立て各事業部ごとに発表しただけで大きな意義があります。もうこの時点で計画の半分は実行したようなものです。」と話しました。私は本当にそう思うのです。

 

  計画は立てるだけでも大きな意義があります。何故なら計画をたてるためには、自社のあるいは自分の事業部門の強み、弱みを一人一人がじっくり考えなければならないからです。すなわち、計画を立てるという経緯の中で、自社を知ることになるからです。

 

  まずは自社の又は自分の所属する事業部門のことを良く知らなければなりません。そしてその自社の強みを生かした計画こそが重要なのです。

 

次に計画には、定期的なチェックが必要です。これをPDCAサイクルの落とし込みと言います。伸びている企業は必ずと言っていいほど実行している方法です。計画を立てたままにするのは、とても勿体無いことです。是非、このPDCAサイクルを地道に繰り返し、今年度の目標達成を実現してほしいと思います。

 

来月(4月)から、いよいよ当社でも今年度の中期5か年計画教室の「将軍の日」の定期的開催を開始します。是非、一人でも多くの方の参加をお待ちしています。
 
2017年3月28日(火)   著 者  税理士 千葉 和彦

2017年3月 3日 (金)

「働く」ということ

   この時期、会計事務所は、所得税の確定申告期間真最中で、猫の手も借りたいくらいと言われている。

私も開業当初は徹夜、徹夜の連続で、申告書を提出に税務署に向かう途中、赤信号で待っている間に車の運転席で爆睡してしまい、クラクションを鳴らされても目を覚まさず、業を煮やして、後ろから降りてきた人に思い切り怒鳴られて、やっと目を覚ましたなどという危険な思い出があるくらいだ。

最近は若いスタッフの要請もあり、休日が増え、残業時間もめっきり減り、この時期特有の殺気立った事務所の雰囲気もなくなってきた。計画的な資料収集と、作業の効率化に取り組んできた成果が表れてきたのかとも思う。

   しかしいつの世も、良い仕事をするには、どうしても時間が必要で、人の能力に差がないとすれば、時間をかけて一生懸命、仕事に取り組んできた人にはかなわないのが事実だ。「量は質へ転化する」という先人の教えの通りだ。パイロットの熟練度は年数ではなく、飛行時間で決まるのと同じだ。本気で仕事に取り組もうとすれば、つい時間が過ぎてしまうものである。

時代に逆行しているようなことを言っているようだが、私は長時間労働をしろと言っているわけではない。時間がないからといって、手を抜くようなことをしてはいけないと言いたいのだ。手を抜くのと手間を省くのは大きな違いだ。手間を省くためには経験と知恵が必要なのだ。そのためにも特に若い人には、愚直に取り組んでほしい。経験をしなければ、良い知恵は決して浮かばないからだ。

   私の親しい社労士の先生が、今月号のご自身のエッセイに「働くことは万病に効く薬」という表題で、ご自分の経験を書かれていた。

それは多くの挫折や試練の中で、一つの仕事に本気で一生懸命打ち込んでいくと、不思議なことに、苦難や挫折の方向に回転していた自分の人生の歯車が、良い方向に逆回転し始め、その後の人生は、自分でも信じられないほどの変貌を遂げてきているという話だった。素晴らしい話だと思う。

先生は、さらに、働く意義を理解しないまま仕事に就いて、悩み、傷つき、嘆いている人が数多くいると思うが、そういう人には「働く」ということは、試練を克服し、運命を好転させてくれる、まさに「万病に効く薬」なのだということを、是非理解していただきたいと力強く語っている。

   いったい我々は何のために働いているのか?生活費を稼ぐためか・・もちろんそれは当然のことだ。しかし、それ以外の意義はないのか・・自分自身に問いかける必要がある。抽象的だが、私は、誰でも自分が幸せになるために働いているのだと思う。その場合幸せはどのような時に感じられるのだろうか?なぜ目の前の仕事に一生懸命、本気で打ち込むと幸せになれるのだろうか?

是非騙されたと思って、目の前の仕事に本気で打ち込み自分自身で身を持って実感してほしいと思う。そうすれば今抱えている悩みもいつの間にか解消し、新しい人生が開けてくるはずだと確信する。

2017年2月25日    著 者  税理士   千葉 和彦

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