経営計画

2025年5月 1日 (木)

厳しい外部環境に企業はどう対応すべきか

 いくら募集をかけても応募者がこない。政府は賃金を上げろ、上げろと言うけれど売り上げも利益も変わらないのにどこに財源を求めればよいのか・・税金も重く負担に感じていたが、更に社会保険料の会社負担分が重くのしかかり、その双方の負担だけで利益の半分以上が吹き飛び将来に備えるための内部留保もままならない等々・・中小企業を取り巻くわが国の外部環境は年々厳しくなっている。

この傾向は大分前から感じてはいたが、何とか頑張ってきた。しかし、もうこれ以上は踏ん張れない状況にまで追い詰められているというのが現在の実態ではないだろうか?

そのことを裏付けるデータとして我が国の少子高齢化の傾向は2004年12月をピークに急激に進んでおり、人口は、年間約50万人~70万人ずつ減り続け2030年には高齢化率(65歳以上)も30%を超す勢いだ。

またその国が生み出す付加価値の指標である一人当たりの日本のGDPは2023年の統計では、世界で34位、さらに2024年では39位に下降する予定だ。2024年の企業倒産もこの物価上昇と人手不足で11年ぶりに1万件を超した。

 このようなわが国の経済環境の中で従来の経営戦略は役立たないとして、経営を登山に例え現在の外部環境の下では「下山経営」という名で経営に取り組むことを唱える大手経営コンサルタント会社がある。その内容はこうだ。

外部環境が良い時は、「登山経営」の手法が適しており、そのキーワードは①売上、利益最優先②急成長③大量販売、不特定客④大量採用、大量退職⑤オーナー一族の幸せとする。対して、外部環境の厳しい時は、「下山経営」に取り組むことが重要と唱える。その経営手法のキーワードは①幸せ度・ミッションを重視②会員化・特定客③少人数採用・退職0④安定成長⑤関係者すべての幸せとする。

すなわち、「下山経営」では一人一人の社員が生きがいを感じ、生き生きと働けて、退職しない職場作りをし、一人一人の業務の生産性を上げることを最重要課題としている。

私も「下山経営」の社員を大切にして退職しないような環境作りを目指した経営には大賛成だ。

ただこれを成功させるためには、一人一人の生産性を上げなければならないことは必須の課題である。

「机上で話すだけでなく具体的に指導してくれ」という方もおられ、それに答えるべく、4年前から実際に現場に入り現場改善ワークショップを実施してきた。

研修を受けていただいた企業からはいずれも大好評を頂いた。しかし、研修期間が約半年にも及び、費用も高額なことからなかなか気軽に取り組んでいただくというわけにはいかないのが実態だ。

そこでもっと手軽に取り組めて効果も出せるものはないかと検討していたところ私の所属する「一般社団法人日本中小企業経営支援専門家協会」(略してJPBM)で、「OTRS」というツールを用いて現場の動画を撮影することで、具体的に現場改善ができる仕組みが出来たので、早速導入することにした。

昨日「将軍の日」に参加いただいた企業さんに話すと早速実施してくれることになったので、まずは実践し、その結果をまたの機会に皆さんにお伝えできればと考えている。まずは一歩踏み出しましょう。

現場改善、経営改善に!経営者の皆さん応援しています。          

2025年3月 1日 (土)

建物を相続時精算課税で贈与!

 昨年のエッセイ「よくある相続対策・・落とし穴」(4)で「建物を相続時精算課税で贈与してはいけない。」と書きました。その理由は「相続時精算課税は贈与した時点での評価額で持ち戻されるからだ。建物は、年々評価額が下がっていくものと考えると・・・。つまり間違いなく評価額が下がると思われるものは、相続時精算課税で贈与してはならない。」ということです。建物の評価は将来必ず下がっていきますので、それだけを考えると確かにこの税制を活用すると不利になることは明白です。しかし、その建物が収益物件の場合は、一概に不利とは言えません。例えばアパートの建物をこの制度を活用して子どもに贈与した場合を考えてみましょう。相続税評価額2500万円(時価では約6000万円のアパートになります。)で利回りは6%と仮定します。子どもにはアパートの建物と毎年約360万円の家賃収入を渡すことができます。必要経費や税金などコストはかかりますが、手取りを貯めることで、子どもは、将来それを納税資金の原資にすることもできます。

 所得税は累進課税なので、所得が多いほど税額は増えます。高所得者の親から税率の低い子どもへ収益物件を贈与すれば、家族全体の所得税額を抑えるというメリットもあります。また建物だけでなく土地も一緒に移せば土地の値上がり分の相続税も抑えることができます。ただし評価額2500万円の建物だけでしたら「相続時精算課税制度」の適用を受ける届け出を出せば、その時点での贈与税はかかりませんが、贈与額2500万円を超えた分には20%の贈与税が課されます。納めた税金は、将来の親の相続の時に精算されるのですが、土地の評価が高すぎる場合には無理せず建物だけの贈与でも効果はあると考えます。贈与の時に建物が古い場合には親がリフォームを済ませてから贈与した方がいいでしょう。修繕程度のリフォームでは評価額は上がらないからです。

 注意しなければならないことは、贈与したい建物にローンが残っている場合です。贈与したい物件にローンが残っている場合には、通常の売買と見なされ、通常の取引価額からローン残高を差し引いた金額が贈与されたとみなされます。更に、親は譲渡収入があったと見なされ、譲渡税が課されてしまいます。これが「負担付贈与」といわれるものです。借金が残っている物件は、すべて返済してから贈与するのが良いでしょう。

 もうひとつ注意が必要なのは、アパートの賃借人の敷金です。アパートの建物を贈与するわけですから、当然、敷金も引き継がれることになります。この敷金は返済義務のあるローンと同じ性格のものなので、建物だけを贈与すると負担付贈与とみなされます。この場合は、敷金相当額の現金を同時に贈与することで、負担付贈与を回避することができます。さて現金を贈与したらその現金にも贈与税がかかるのではと疑問が残るかもしれませんが、この現金は贈与者が入居者から預かっていた敷金分(債務)を受贈者に移した(精算)だけですから、そこには経済的利益は発生しません。ですから贈与した敷金相当分の現金には贈与税はかからないのです。

 「負担付贈与」とならないためにも、ローンが付いていないアパートなどの建物を贈与する場合にも、忘れずに敷金分の現金も付けてあげるようにしましょう。

 

2025年2月 1日 (土)

自社の株式の評価が高い!

最近、顧問先の社長さんから、自社の株式の評価が高くなりすぎてどうしたら良いかという相談が増えてきた。自社株式の評価とは非上場の経営者一族が保有する株式の評価のことをいう。周知のように会社の株式には上場株式と非上場株式があり、上場株式は証券市場で株価が決まる。それに対して日本の中小企業の99.9%が発行している非上場株式は、特別な方法で、かつ複雑に計算をしなければならない。社歴の長い会社や業績の良い会社ほどその結果の数値を見て驚く。何故なら非上場会社の株価は、その多くは内部留保を加味しながら計算するからだ。そのため業績の良い会社ほど自社の株式の評価額は高くなる。額面の10倍から20倍になるケースが珍しくない。顧問先ではなかったが、私が相談された中には100倍近くになった会社もあった。その結果を見て呆然とする社長に、「社長の会社は優良企業ということの証ですよ。会社は利益を出すことが一番ですから。まずは慌てず一緒に対策を考えていきましょう。」と話したことを覚えている。

一概には言えないが、順調に利益を積み上げてきた会社には、しっかり後継者も育っているケースが多い。事業承継は自社株の引継ぎなしではできない。その後継者に社長が所有する自社の株式をいかにコストを抑えて渡すかが課題になる。一時的に株価の評価を引き下げて、そのタイミングで一気に後継者に渡すかあるいは、毎年少しずつ贈与するか、又は、事業承継税制を活用するかなどの方法が考えられる。しかし、ここで上手に事業承継するには忘れてはならないことがもう一つある。

参考に、まずは日本の老舗企業に目を向けて見よう。統計には、ばらつきがあるが、日本には5万社から10万社の創業100年以上の老舗企業がある。世界の約半分の老舗企業が日本に集中していると言われている。日本だけに老舗企業が集中している理由はいろいろあるが、ひとつに古くからある家督を継ぐという考え方が根底にあると考える。戦前約50年続いた日本の旧民法の「家制度」では、この考えが法制度化されたわけだ。「家制度」では家長となる長男がすべての財産を受け継ぎ、家族全員の生活を見る責任を負う。そして長男が家を継ぎ親の面倒をみるが、家の財産も受け継ぐというものだ。そこには他の兄弟から財産分けを主張されるような余地は当然なかった。家族は家長を中心に仲良く一丸となって家業にいそしむ。そのため家の財産の分散が避けられ、長男は家業を継ぎ、継続することができたのだ。それに対して戦後の新民法では法定相続分が定められ、しかも遺留分の制度も盛り込まれた。会社を継がない他の相続人に遺留分の請求をされ、もし現金がなければ「自社株」を分けざるを得ない形になる。結果、経営権が揺らぎ、経営の危機になることもある。現代の事業承継はこの点の対策を立てないと事業の継続が難しいのが現実だ。これは代々農業等を続けてきた土地持ちの方にも共通する悩みだ。対策として当主は後継者以外の遺留分にもしっかり配慮した遺言書を作っておくのが一番大事だ。

また事業承継税制を活用する場合は、「除外合意」という方法で遺留分請求対象から自社株を外しておかなければならない。株価を一時的に引き下げただけでは片手落ちであることを経営者の皆さんにはしっかり知っておいていただきたい。早いものです。今年ももう一か月が過ぎました。時が過ぎるのは早いです。一日も早い着手をお願いします。

2025年1月 1日 (水)

新年おめでとうございます。今年も「事業承継対策」を大きく前進させましょう。

新年おめでとうございます。

いよいよ2025年が始まりましたね。

今年の皆さんの目標は決まりましたか?当事務所では年初ミーティングにスタッフ各人から今年の目標を提出してもらっています。

当社の経営理念の一つに「職務を通じて自己の成長に本気で取り組む」を掲げています。

ですから業務を通じて少しでも自分の成長が感じ取れるような目標を掲げてほしいと常に話しています。

私個人は今年も関与先様のスムーズな事業承継の支援をしながら自分も成長していきたいと考えています。

 中小企業の事業承継はこの10年間がさらに正念場です。

なぜなら第一次ベビーブームに生まれた人たちが、本年一斉に後期高齢者となる75歳を迎えるからです。

最近ではM&Aも急激に増えてきました。国内のM&A仲介業者も約300社に上り、不祥事も多発しています。

とことん寄り添って、よい相手を探してくれるところもあれば、とにかく成約させれば後のことは知らないという業者までおり、まさしく玉石混交です。

希望に合わない内容なのに高額な報酬だけ払わされ、後で後悔しても後の祭りです。

そうならないようにしっかりした良心的な仲介会社を選択し用心を重ねて取り組まなければなりません。

 親族に後継者がいる場合は、まずそのことだけでも大いに感謝しなければなりません。

それは後継者がいるということだけで恵まれているからです。

後継者がいる場合には、いかに上手に経営権を引き継ぐかが重要です。

経営理念、社内組織、取引先を中心とした利害関係者、未来計画、自社株を中心とした事業用財産をバランス良く引継げるかが勝負となってきます。

とても社長一人が片手間でできることではありません。

そのような時こそ我々がしっかりと伴奏支援して行きたいと思います。

財産の引継ぎの中で大きな要素を占めるのが自社株です。

非上場株は市場で流通していませんので、現金化が難しく、相続時に額面10倍から30倍で評価されるケースも珍しくありません。

そのままにしておくと先代の相続時に多額の相続税が課せられ後継者がスムーズに引き継ぐことができなくなることもあります。

余談ですが上場企業のオーナー社長でも油断はできません。

毎日の取引高の少ない会社では、一度に市場で現金化すると、株価の急落を招いて他の株主の不安をあおり、信用が失墜してしまう恐れがあるからです。

 経営者の皆さんの財産を見させていただくと優良企業になればなるほど経営者個人の財産のうち全体の約80%は自社の株式という方が多いのに驚きます。

経営者個人の相続対策は自社株式をいかに調理するかで決まってくると言っても過言ではないでしょう。

紙面の都合上次回に自社株問題を書かせていただきます。

 経営者の皆様、そのご家族、社員の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。今年もよろしく願いします。

 

2024年12月 1日 (日)

常に未来を見つめながら攻め続けることが運を呼ぶ!

「経営者にとって一番大事なことは、会社を潰さないことだ。」は誰に聞いても異論はないようだ。

確かに会社は良く潰れる。起業した会社が20年で半分になり、40年でその半分になる。50年を超える会社は珍しいくらいだ。

創業100年以上が「老舗」と呼ばれているが、わが国では5万社から10万社存在すると言われる。

約250万社の会社がある中での10万社だからすごいことだと思う。

今月我社も創業40周年ということで塩釜市長、塩釜商工会議所会頭から表彰状と玉虫塗(1933年創業の東北工芸製作所製造)の盾を頂いた。

早速、事務所の玄関に飾らせてもらった。表彰式には浦霞醸造元の㈱佐浦社長も参加されていた。驚くことに創業300年ということだ。ほんとに素晴らしいことだと感動した。経営者は皆同じだと思うが、私も振り返ると駆け足の40年だった。

珍しい域に入るにはあと10年。身を引き締めて頑張らねばと思った。

経営者ならだれでも、自社の存続・発展を願い、必死で経営を続けている。それでも予想していないことが日夜生じるのが経営だ。その時、どう対処するかが社長の手腕にかかっている。例えば自社の有力取引先の倒産だ。

当然、自社は多額の売掛金が回収不能に陥ってしまう。そこで金融機関との付き合いが非常に大事になる。私も先日とある銀行さんから「先生の会社は、当行からの借入金がまったくありませんね。」と言われハッとした。

金融機関からは、ある程度の借入をして継続しておくと、いざという時に助けてもらいやすくなる。特に日本政策金融公庫からの借入金はできるだけ継続して借り続けた方が良い。少々業績が落ち込んでいてもいざという時にスムーズに貸してもらいやすい。

無借金経営は経営者にとって理想ではあるが、金融機関としては、借入を全くしない会社より、借入をして、きちんと返済できる会社の方を評価するようだ。

決算書では、経常利益が出ていることが望ましいことは勿論だが、金融機関は貸借対照表の自己資本すなわち純資産を重視する。まずは、最低でも自己資本比率30%以上(時価で)は確保したい。

最後に、経営者は孤独であり、相談相手もいないことが多い。決断を迫られた時は、身近にいる税理士、弁護士などの士業や金融機関についつい相談してしまうものだろう。

しかしそれらの話は参考程度にしてほしい。相談相手は誰も経営をしたことがないのだ。彼らには経営者が資金繰りに厳しい時の気持ち、新規事業に投資するときの覚悟、危機を乗り切った時の醍醐味、期待していた社員に辞められた時の気持ち、いくら頑張っても売り上げが上がらない時の焦燥感など分かりようもないからだ。

私は事務所を開業した時、少しでも経営者の気持ちを理解できるようになりたいと思った。事業といえる組織の最小単位と思われる30人規模を目指したのはそのような理由からだ。

一般に、士業は過去の整理を得意とする人種であり、経営者は常に未来を見ている人種とその立ち位置は大きく異なる。

私はその意味で経営者と一緒に未来を見ながら伴走できる事務所をこれからも目指していきたいと考えている。

経営者の皆さん一緒に頑張りましょう。

2024年9月 1日 (日)

貸借対照表の重要性

「我社に一人でも貸借対照表が読める社員がいたらこんなことにはならなかった。」とは、1996年に、負債総額220億円で倒産した株式会社佐藤工務店の佐藤社長の話です。倒産する5年前には年商350億円、経常利益率10.8%、社員数4500人という会社でした。

20年前にもエッセイで書かせていただいたので、ご記憶のある方もいらっしゃるかもしれませんね。

当時法人会で主催したセミナーで、私は、上記の言葉をセミナー講師の佐藤社長ご本人から直接聞き、驚いたことを今でも忘れません。

それからことあるごとに、佐藤社長のようにならないように、当社のスタッフや顧問先さんに貸借対照表の重要性を話してきました。

何年かしてこの話題をいつものように、当社の顧問先の若手社長に話したところ、その社長からは「そんな甘いことを言っているからその社長は会社つぶしたのですよ。

大体社長だったら自分で勉強して貸借対照表を読めるようにしておかなければダメでしょ!それをそんな事態になっても社員のせいにしているなんて話にもなりませんね。」と、強い口調で返されました。

私は貸借対照表の重要性を伝えようとしてその話題を出しただけなのですが、どうやらその若手社長の経営者魂を刺激してしまったようでした。

そしてこの社長は3代目だけどしっかり会社を守っていく社長だなと安心しました。余談ですが、私の予想通り、会社は増収増益を続け順調に成長し続けています。

しかし、経営は生き物です。外部環境の変化で何が起こるか誰にも予想できません。

だからこそ自己資本を充実させておくことが重要なのです。

そのため私は口を酸っぱくして開業当初から自己資本比率は、最低40%以上を目指してほしいと言い続けてきました。

前述の佐藤社長も「もし我社に貸借対照表が読める社員が一人でもいたら、5年後には自己資本比率を40%にするというような目標を立てていただろう。

そうすれば、高級車やヨットなど無駄な買い物もしなかっただろう。

節税と言う名の無駄遣いをしたことが財務体質を弱めた。」と話されていました。

佐藤工務店は、利益がでても節税という名目で必要ないものまで購入していたため、内部留保が積み上がらなかったのです。

「一番の節税は税金を払うことだ。」とある方が話していましたが、法人税の実効税率が約30%の現在では確かに無駄な節税対策をして現金を流出させるより、税金を払って残りを内部留保させた方が自己資本比率の向上になり、会社の財務基盤をより強固なものにすることができます。

しかし、そのように利益が出た時こそ、未来の利益を確保するための設備投資や人材投資に先行投資することを忘れてはなりません。

現在の内部留保は当然大事ですが、将来も更に内部留保を高める種まきを今のうちからしていきましょう。

2024年8月 1日 (木)

「将軍の日」から「伴走支援」に向けて

2023年5月にコロナウイルス感染症が5類に移行されるまでは、「将軍の日」を中止せざるを得ず、移行後も、1社だけ参加していただくという形を取っていましたが、今月は、久しぶりに複数社参加による「将軍の日」を開催しました。

「将軍の日」では社長に一日かけて自社の強み、弱みをじっくり考えてもらい、これから先の自社の計画を自ら立てていただきます。

普段、社長が頭の中だけで思い描いていることをアウトプットする日、隠れている問題点を引き出す日とも言えます。

私たちもお手伝いはしますが、主役はあくまで社長です。

「5か年計画を立てて見ませんか」と誘いすると「当社の事業は5年先なんて予想もできないし、3ケ月先考えるので精一杯ですよ。」とか「そんなことの日に貴重な一日を無駄にできませんよ。」とか「僕は数字に弱く、事業計画などはまるっきりだめです。」等々・・経営計画を立てることに消極的な社長が結構いらっしゃいます。

もちろん我々は神でも占い師でもないので、当然先のことはわかりません。

しかし、勘違いしてはいけません。

経営計画とは将来を予測することではありません。

自社の「目標を設定」することです。

目標を設定しなければ、船が羅針盤を持たず荒波を航海するようなもので、遅かれ早かれ沈没は避けられないでしょう。

また予測はできないというものの、人件費などある程度予測できる経費もあると思います。

以前参加された社長さんの中に、これから自社の業界はますます厳しくなるからと5年後の売り上げが半分になる計画を立てた社長がおられましたが、5年後その通りになりました。

「目標設定」を誤った結果です。

外部環境は経営に大きな影響を及ぼしますが、その変化にどれだけ適応できるかは、内部環境にかかってきます。

そしてその内部環境は自助努力でしか整えることが出来ません。

優秀な人間を採用し、社長自らがお客様訪問を繰り返せば外部環境が悪くてもそれなりの結果がだせます。

お客様が何を望んでいるかいち早く知ることができ、ライバル企業に先駆けて手を打つことが出来るからです。

経営計画はそれを実現するためのツールです。

夢を実現させるためには、5か年計画を単年度計画に落とし込まなければなりません。

単月ごとに目標達成のための行動計画を立て実行し、毎月、行動結果を確認しながらその都度、軌道修正をしていきます。

その繰り返しが目標の数値に近づく秘訣になるのです。

しかし、この行動のチェックは毎日業務に追われている社長一人でできるものではありません。

これは、どんな優秀な社長でも同じです。すなわち、第三者によるチェックが必要です。

第三者にチェックをしてもらい、計画と実績の差について一緒に考えていくことが目標に近づく一番の近道です。

この第三者が私たち会計事務所であり、社長に伴走できるのは私たちだけと自負しております。

まずは「将軍の日」からですが、今後はチェックを希望する参加者の会社にはできる限りのフォローをさせていただきます。

この「伴走支援」を希望する社長がおられましたら、いつでも気軽にお声がけください。 

2024年7月 1日 (月)

私のアルバイトの思い出

顧問先の社長さん方も若いころは様々なアルバイトをされた経験をお持ちかと思います。私も若いころから様々な業種のアルバイトをしてきました。不謹慎な話ですが、アルバイト中は何度も時計を眺め終了時間が来るのをひたすら待ちわびたものでした。それはどんな仕事でも同様でした。ただ塾の先生のアルバイトをした時だけは、時間も気にせず夢中になって取り組んでいたことを覚えています。それにはこんな理由がありました。私が世話になった塾の塾長はとても魅力的な方で、私のようなアルバイト学生にまで、塾を作った塾長の思いや、生徒に対する思いを切々といつも語ってくれる方でした。また塾は優秀な生徒よりも、いわゆる落ちこぼれと言われる生徒に力を入れており、塾長は時間外も家庭訪問までして親御さんに会いに行ったり、生徒を休みの日に自腹で、遠足や美術館に連れて行ったりしていました。日頃から思いを聞き、実際に努力する塾長の姿を目の当たりにしていた私は、少しでもそんな塾長の思いを達成できるようにお手伝いをしたいと心から思いました。アルバイトとは言え、一生懸命になれたのは、そういうことがあったからだと思います。

アルバイトと言うと、比較的単純作業が多いですから、指示する側も機械的に、指示してしまうのが一般的です。アルバイトをする側も時間で割り切ってその分だけ部品のように働くというのが当たり前かもしれません。しかし、業務内容は単純でもその仕事をしてくれる人が居なければ、会社は回りません。やはり、会社の基本姿勢と目指すべきところを話し、その実現のためにたとえ単純作業と言えども、我社にとっては、なくてはならない重要な業務の一役を担ってもらっているのだと言うことを説明してほしいと思います。そうすれば人材次第ではブックオフさんのようにパートさんから社長が生まれることもありえるのだと思います。

我社がどこに行こうとしているのか?我社の5年後、10年後はどのような会社になることを目指しているのだろうか?そのために今我々社員がすべきことは何なのか?心ある社員なら知りたがっているはずです。その思いに答えるためには、社長ははっきりと将来の姿を社員に示せるように日頃から考え、明確な経営計画書を作っておかなければなりません。経営計画書を作成することは、社長がしなければならない3大業務の一つです。使命と言ってもいいでしょう。計画を立てずに経営をすることは、羅針盤を持たずに航海する船と一緒です。我社の5年後、10年後はどのような事業の取り組み方をしているか。その時会社の規模はいくらぐらいにするか。その時の社員の待遇はどうするのか。それらのことを明確に社員に示せない限り、やる気のある社員も動きようがありません。

どんなにオールマイティな社長でも、一人でできることは限りがあります。社員の協力なくして目標は実現できません。会社をリードするのは社長ですが、実践は何と言っても組織力がものを言います。会社を大きくしてきた社長は、会社を大きくする秘訣は組織力でしかないと異口同音に話しています。人材不足と騒がれていますが、良い人材を確保し、また、良い人材になってもらえるように、社長の仕事をしましょう。

2024年5月 1日 (水)

家族信託の活用

 当事務所では10年程前からこの「家族信託」に取り組んできたが、ここ数年でやっと周りにも浸透し始めた感がある。「家族信託契約」とは、家族に財産を信託して管理してもらうことで、受託者が親族で受けることが多いため「家族信託」と言われる。例えば下図のように委託者が父親で、受託者が長男、受益者は父親が健在のうちは父親で、死亡した際の次の受益者を指定しておくというものだ。この場合、信託契約を終了させることもできるが、指定された次の受益者で信託を継続していくことも可能だ。それに対して「商事信託」とは、信託会社や信託銀行に財産を託して管理してもらう形だ。信託会社や信託銀行は、営利を目的にするため、報酬も当然発生する。

 家族信託で一番多い活用法は、「認知症対策」である。認知症になると、遺言や不動産取引、相続税対策などが一切できなくなる。もちろん銀行口座も凍結され(家族が施設費用を引き出すなどに限り一部引き出しが認められつつあるが、資金使途の証拠資料を提出しなければならず手続きが面倒だ。)やむなく成年後見人を立てざるを得ないが、成年後見人は本人の財産の保護が目的なので、施設の費用を引き出すことはできるが、相続対策のためにアパートを建てることなどの行為は本人の財産を減らすことになるので出来ない。

 それに対し、信託にしておけば、自宅(自宅を信託しても権利として当然住み続けることはできる。)、アパートの建築や大規模修理や場合によっては売却までも受託者が実行することができる。

 この「家族信託」だが、当然のことながら家族に信頼して財産を託せる人がいないと成立しない。勿論この場合親族でなくて信頼している友人でも構わないが、現実には難しいと考える。ただ事業オーナーの場合には、自社の別法人(一般社団法人・不動産管理法人など)を受託者として、更に信託監督人を選任しておく方法を活用して信託契約する方法がある。その場合の信託契約も委託者(父親)と受託者(別法人)の間の信託契約はできるだけシンプルな形にして、信託監督人には事例の取り扱いが多い税理士、司法書士へ頼み、しっかり公正証書にしておく形を勧める。自分でできないこともないが、色々と落とし穴があるので、注意が必要だからだ。皆さんの早い決断を祈ります。

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2024年3月 1日 (金)

分掌変更による役員退職金

最近、社長の退職金の相談が多い。丁度、創業者が70代に差し掛かり、後継者への事業承継が多くなってきたことがその原因だ。多くの場合は、創業者もまだまだ元気なので、代表権はなくなるものの会長として残るケースが多い。いわば「非常勤取締役会長」として新社長を後方支援する形だ。新社長も会長の実践を踏まえた長年の経験と勘は、とても心強く、まだまだ頼りにしているのが現実だ。会長となった前社長には、代表取締役退任に伴い、退職金が支払われるケースが多い。この場合の退職金の金額は、過大退職金として否認されないように支給することは勿論だが、それ以上に退任そのものを否認されないよう気を付けなければならない。退任したと認められなければ、支払った退職金は全額否認されるからだ。

 役員退職金の額は、法人税法上、損金算入が認められ、所得税法上も退職所得となり有利な取り扱いになっている。しかも役員退職金を出した翌期は株価も下がるケースが多く、そのタイミングで自社株の移転などの対策も取りやすいというメリットもある。そのため逆に否認された場合の負担は大変なものになる。否認された役員退職金は法人税では役員賞与と見なされ全額損金不算入となる。法人は修正申告をし、修正分の本税を支払う上に過少申告加算税と延滞税が付いてくる。また役員賞与=給与所得と見なされ、その分の源泉所得税を徴収しなかったとして、こちらも本税は勿論だが不納付加算税と延滞税が付いてくる。さらに社長自身も所得税の修正申告をすることになり、所得税が急激に増え、言うまでもなく、過少申告加算税と延滞税が付いてくる。これがいわゆる「トリプル課税」と言われるものだ。否認されないためには、あくまでも「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」ことがポイントだ。代表権を返上し、役員報酬を下げただけでは退職したとは認められない。退職した後も、退職前と同じように出勤して、取引先、銀行等と交渉したり、会社の採用や昇給に口を出したり、会社の大きな設備投資の決済などをしている場合には、退職前と同様の経営上主要な地位を占めていると考えられ実質的には退職してないとして、退職金は全額否認されてしまうので注意が必要だ。社長の中には、「調査が来るときには会社に来ないようにしますよ。」などと軽く考えている人もいるが大きな間違いだ、調査官はその会社の社員や取引先にも聞き取り調査を行うからだ。私は「退職金をもらい退職した社長は、週に半分くらいの出勤にして、できるだけ取引先や銀行の交渉には前面にでないように」と話している。つい先日までバリバリ仕事をしていた社長には辛いと思うが、仕方がない。いつの世も世代交代は避けて通れないものだ。そこで、新社長にいつも私がお願いしているのは、退職した会長への定期的な「報告」である。普段からコミュニケーションを取り良好な関係を保っていれば会長の孤独感も少しはやわらぎ、社長自身も後方支援を受けやすくなるからだ。新会長、新社長・・応援しています。

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