奥様の「へそくり」に相続税が・・?
2015年の相続税改正で基礎控除が40%減らされてから、相続税の申告をしなければならない方が増えています。最近は、死亡者の約1割近くの方に申告義務が生じているようです。私の事務所にも相続税がかかるのではないかと心配して相談してくる方が増えています。先日も相続税の申告の相談を受けてざっと資料を拝見したところ、どうやら基礎控除以下なので申告は必要ないなと考えましたが、これまでの経験から、念のため亡くなった被相続人の奥様の通帳も見せてもらいました。すると「えっこれは・・・・」という金額が目に飛び込んできました。専業主婦の奥様名義の通帳に3000万円が預けられていたのです。奥様に尋ねると、ご主人は、生前、奥様に生活費として毎月の給料をすべて預け、その管理を任せ、自分は毎月決まった額を小遣いとしてもらっていたそうです。奥様はやりくり上手で、無駄使いをせずにコツコツといわゆる「へそくり」をしてきたのです。さらに奥様は純粋に、そのへそくりを自分のものと思われているのです。ですがこの場合、結論から言うと、亡くなったご主人の名義預金として相続税の課税対象になるのです。
「えっそんな馬鹿な・・・」と誰でも思われると思います。しかし、これまでの税務訴訟で争われた事件の判決や裁決の中で示された名義預金の帰属の判定要素は下記の通りですから上記の場合は、奥様名義の預金もご主人の名義預金として申告せざるを得ません。
すなわち、①誰が稼いだ?②誰が管理・運用者していた?③誰が利益を受け取った?④なぜ名義人が異なる?⑤名義人と所有者の関係は?を総合的に判断されます。今回、取り上げた事例の場合は、ご主人が稼いだお金を自分名義にしていたのですから、明らかに名義預金としてご主人の相続財産に加えなければなりません。
さて、難しい理屈はさておき、名義預金とされないためには、まずどうしたら良いかということが大事ですね。実行しなければならないことは簡単です。家族のお金が混ざらないように、稼いだ人と預貯金の名義人を合わせることです。たとえ家族であってもご主人が稼いだお金はご主人の口座に入れて、奥様が稼いだお金は奥様名義の口座に入れるのです。これが基本となります。「そんなこと言っても、妻が全部管理しているから・・・。」勿論生活費はどちらのお金でも問題はありません。残ったお金が問題なのです。残ったお金はご主人名義の通帳に戻す必要があります。「残ったお金は自由にしていいよ」とご主人から言われているから問題ないでしょうと言われる方がいますが、そのままではその残金は勿論名義預金としてご主人の相続財産になります。その場合は、夫婦間でもしっかりと「贈与契約書」を作成しておきましょう。・・口頭でも贈与契約は成立しますが、相続の調査の時に、ご主人はすでに亡くなっていますので、証明が難しいからです。そして110万円を超える場合は、贈与税の申告も済ませておきましょう。そうすれば後日「名義預金」として課税されることもないでしょう。奥様・・くれぐれも「へそくり」にはご用心ください。