« 分掌変更による役員退職金 | トップページ | 家族信託の活用 »

2024年4月 1日 (月)

遺言について

 コストもかからず、すぐに取り組めるのが自分で遺言を書くことだ。(自筆証書遺言)通常は、白紙の用紙にボールペンか筆で書く。ただし、この自筆証書遺言だが、本文のすべて、署名、日付は必ず自筆で書き押印しないと無効になる恐れがある。何通か私も自筆証書遺言書を預かっているが、預けた人の中には、私より若い人もいて、その人に何かあった時に責任を果たせるかどうか気が気でならなかった。そんな時、2020年に自筆証書遺言の法務局保管制度が始まり、早速、私の手から法務局に預け替えしてもらうようにし、肩の荷を下ろした。法務局では、預ける時に最低限の形式的要件を満たしているかどうかの確認もしてもらえ、費用も格安なことから、すでに20241月までに67000件を超える保管申請があったようだ。家庭裁判所での検認も不要ということで、使い勝手が良いが、公正証書遺言と異なり、遺言の内容についての有効性までは保証されていない。

 また、自筆でしっかり遺言書を書いていても、自分に不利な内容を書かれた相続人の中には「本当に親が書いたものか」「親の本心ではないのでは」とか疑う人もいる。そこで出来ればこっそり書かないで、生前会議のようなものを開いて相続人に自分の意向を伝えておくのが良いと思う。また法的には弱いものの、遺言書の付言事項に自分の思いを書いておくことも後日の争いを最小限に抑えるのには効果が大きい。遺言漏れをなくすために、「残りのすべての財産は・・・」の文言を忘れずに遺言の中に入れておく必要がある。もし漏れていた場合には、その財産について相続人の間の遺産分割協議になり、まとまらないことが多いからだ。私は、出来れば少しコストがかかるが、公証人役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」をすることを勧めている。それは、せっかく残した遺言が無効になることがないからだ。そして、「自筆証書遺言」でも「公正証書遺言」でも最後に遺言執行者を指定しておくことを付け加えておく。

 私が永年にわたり、顧問させていただいた会社の会長が数年前に、長寿を全うされ、亡くなった。実はこの会長には何十年にもわたり、遺言を勧め、本人もその必要性を十分に理解し、何度も遺言を書こうとしたが書けないまま亡くなった。これは世間にはよくあるケースかも知れない。通常の場合は、相続人よる遺産分割協議が進まず、申告も未分割でせざるを得ないことが多々ある。しかし、この会長の場合は相続人の間で揉めることもなくスムーズに手続きは進み、申告も終了した。何故なら、何度挑戦しても遺言が書けない会長に私は「家族信託」を勧め、会長もそれならできそうだということになり、会長の資産をすべて盛り込んだ「家族信託契約」を締結していたのだ。当初の委託者は、当然会長、受託者はグループの資産管理をしている別会社、受益者は会長だ。死亡後の委託者、受益者を指定していたため、相続財産の移行がスムーズに進んだ。預金を信託にして預けていたので預金口座も凍結されず日常業務が停滞しなかった。不動産の名義も受益者の変更の登記なので、登録免許税も格安で済み、相続後の名義変更等の手続きのコストが抑えられた。そのようなことから次回は、「遺言」以上の強力な効果のある「家族信託」について書きたいと思う。

 

« 分掌変更による役員退職金 | トップページ | 家族信託の活用 »

相続・贈与・信託・遺言」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 分掌変更による役員退職金 | トップページ | 家族信託の活用 »