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2024年3月 1日 (金)

分掌変更による役員退職金

最近、社長の退職金の相談が多い。丁度、創業者が70代に差し掛かり、後継者への事業承継が多くなってきたことがその原因だ。多くの場合は、創業者もまだまだ元気なので、代表権はなくなるものの会長として残るケースが多い。いわば「非常勤取締役会長」として新社長を後方支援する形だ。新社長も会長の実践を踏まえた長年の経験と勘は、とても心強く、まだまだ頼りにしているのが現実だ。会長となった前社長には、代表取締役退任に伴い、退職金が支払われるケースが多い。この場合の退職金の金額は、過大退職金として否認されないように支給することは勿論だが、それ以上に退任そのものを否認されないよう気を付けなければならない。退任したと認められなければ、支払った退職金は全額否認されるからだ。

 役員退職金の額は、法人税法上、損金算入が認められ、所得税法上も退職所得となり有利な取り扱いになっている。しかも役員退職金を出した翌期は株価も下がるケースが多く、そのタイミングで自社株の移転などの対策も取りやすいというメリットもある。そのため逆に否認された場合の負担は大変なものになる。否認された役員退職金は法人税では役員賞与と見なされ全額損金不算入となる。法人は修正申告をし、修正分の本税を支払う上に過少申告加算税と延滞税が付いてくる。また役員賞与=給与所得と見なされ、その分の源泉所得税を徴収しなかったとして、こちらも本税は勿論だが不納付加算税と延滞税が付いてくる。さらに社長自身も所得税の修正申告をすることになり、所得税が急激に増え、言うまでもなく、過少申告加算税と延滞税が付いてくる。これがいわゆる「トリプル課税」と言われるものだ。否認されないためには、あくまでも「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」ことがポイントだ。代表権を返上し、役員報酬を下げただけでは退職したとは認められない。退職した後も、退職前と同じように出勤して、取引先、銀行等と交渉したり、会社の採用や昇給に口を出したり、会社の大きな設備投資の決済などをしている場合には、退職前と同様の経営上主要な地位を占めていると考えられ実質的には退職してないとして、退職金は全額否認されてしまうので注意が必要だ。社長の中には、「調査が来るときには会社に来ないようにしますよ。」などと軽く考えている人もいるが大きな間違いだ、調査官はその会社の社員や取引先にも聞き取り調査を行うからだ。私は「退職金をもらい退職した社長は、週に半分くらいの出勤にして、できるだけ取引先や銀行の交渉には前面にでないように」と話している。つい先日までバリバリ仕事をしていた社長には辛いと思うが、仕方がない。いつの世も世代交代は避けて通れないものだ。そこで、新社長にいつも私がお願いしているのは、退職した会長への定期的な「報告」である。普段からコミュニケーションを取り良好な関係を保っていれば会長の孤独感も少しはやわらぎ、社長自身も後方支援を受けやすくなるからだ。新会長、新社長・・応援しています。

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