« 「今年が最後のチャンス・・生前贈与」 | トップページ | 特例事業承継税制の提出期限迫る! »

2023年9月 1日 (金)

再度、「生前贈与」の改正について

前回に引き続き今回も「贈与」について書かせていただきます。まずは「生前贈与」の改正点について整理していきたいと思います。

 まず、最初に確認すべきは、改正の適用は令和611日以後に行われる贈与からで、令和51231日までは、従来通りということです。それで年内の駆け込み贈与を推奨するような記事が出回っているわけです。しかし、前回も書かせていただきましたが、親族間の資産移転は節税だけに目が行くと、親族間が不和になったり、親の資金が足りなくなったりと思わぬ落とし穴があったりしますので、慎重に進めてほしいと思います。これは、過去に実際にあった事例ですが、ある父親が、長男のお子さんたち(孫さんたちです。)に長年贈与をしてきました。しかし、次男には子供がいなかったため、次男の方には、贈与をしていませんでした。次男はそのことを日頃から不満に思っており、父親死亡後の遺産分割協議で、その生前贈与分も遺産総額に含めて分割することを長男に強く主張したため、長男ともめてしまったのです。このように、親族間の感情というものは存外、複雑なところもありますから、何度も言うようですが、贈与は慎重にしなければなりません。

 今回の改正では、「3年持ち戻し」が「7年持ち戻し」になりました。非常にわかりにくいのですが、完全に「7年持ち戻し」になるのは2030年(令和12年)からです。それまで順次7年に近づいていくイメージです。この持ち戻しには、基礎控除110万円以下で贈与の申告不要な場合もすべて持ち戻されることも念頭に置いておいてください。

 今回の改正では「相続時精算課税制度」にも来年から基礎控除110万円が設けられました。こちらは、基礎控除の110万円であれば申告も不要ですし、持ち戻しの対象からも外されています。単純に考えると、どうせ持ち戻しされるなら基礎控除分を持ち戻さなくて良い「相続時精算課税制度」を利用される方が増えるかもしれません。ただし注意していただきたいのは、この「相続時精算課税制度」は後戻りできない制度ということです。一度選択してしまえば、その選択をした贈与者、受贈者間の贈与はすべて「相続時精算課税制度」しか取れないということです。慎重に判断する必要があります。ただ私の経験では、過去に、土地や自社株式の贈与で、この制度を利用された方は現在になって喜ばれている方が多いように思います。それもこの10年間土地と自社株式の評価が大きく上昇しているケースが多いからです。現在の評価額にかかわらず、過去に贈与した時点の評価額で取り戻して計算される「相続時精算課税制度」は、値上がりが予測される資産を贈与する場合には有効な相続税対策になります。従来の「暦年贈与」を利用するか、「相続時精算課税制度」を利用するかは、自身の年齢、健康状態と財産をしっかりと把握しながら対策を立ててほしいと思います。

« 「今年が最後のチャンス・・生前贈与」 | トップページ | 特例事業承継税制の提出期限迫る! »

相続・贈与・信託・遺言」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 「今年が最後のチャンス・・生前贈与」 | トップページ | 特例事業承継税制の提出期限迫る! »