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2023年4月11日 (火)

わが社の事業を定義づける

  私は、会計事務所を昭和59年から今日まで約40年近く運営してきました。会計事務所は、業種区分で言うとサービス業に入ります。一般的に会計事務所の業務として誰でも頭に浮かぶのが、記帳代行、税務相談、税務書類の作成、税務代理かと思います。その中でも法人に特化している先生もいるし、資産税に特化して相続だけを専門に取り組んでいる先生もいます。事業に取り組まれる方の考え方や方針ですので、いずれの場合も素晴らしいと思います。

  私は当社の会計事務所としての事業を「顧問先さんの経営支援」と定義づけました。その定義づけに従うと、単に記帳代行や税務申告だけでは、当社の事業目的に沿わないことになります。そこで、その定義づけに従い、会社経営者向けの経営セミナーを平成7年から実施し、コロナ騒動の始まる令和2年2月まで259回実施し続けてきました。また、平成10年から今日まで「将軍の日」を実施してきています。すでに100回終了しています。「将軍の日」とは、社長に一日缶詰になってもらい、自社の五か年計画を立ててもらうのを後方支援するイベントです。一人で参加される社長もおられれば、幹部の方何人かと一緒に参加される方もいます。今まで参加された社長には大変好評で、お褒めの言葉までいただいており、そのような時、我々も充実感と幸福感を一緒に味わうことができます。

  以前にもご紹介した一倉定先生は、この事業の定義づけの重要性を話しておられます。
一倉先生が経営指導をされたある包装資材の会社の事例を聞いたことがあります。先生が経営相談を依頼され、その会社を訪れたとき、その会社は業績不振でどうしようもなかったそうです。そこで社長は藁にも縋る思いで、先生に相談されたのだと思います。先生はまず、自社の事業の定義づけをするようにと、その会社を指導されました。

  ところが何日経過しても社長、経営幹部から出てくる答えは「包装資材業」云々というようなもので、一倉先生が期待する答えにはたどり着けず、とうとう先生は「それは形態や用途であって、その商品の機能を本質的に語るものではない。御社の事業の本質は、「品質保全」だ。」と先生自ら定義づけをアドバイスされました。その会社は、それまでは食品を包むラップの製造、販売だけを事業としていましたが、この定義づけをきっかけに、取り組む業務範囲が急激に広がったそうです。免許証の劣化を防ぐフィルム、医薬品の品質保全の包装フィルム、電磁波絶縁材として海底ケーブルを包む資材、電磁波防止の専門の部屋を作るために、部屋に貼るシールドフィルムを取り扱うなど業務範囲が急激に広がり、数年後には、食品の包装部門の売上は全体の半分以下になりましたが、全社の売上は増大したそうです。

  ドラッカーも「事業の定義が明確に理解されない限り、いかなる企業といえども成り行きに左右されることになる。自らが何であり、自らの価値、主義、信条が何であるかを知らなければ、自らを変えることはできない。」と話しています。事業の定義づけが経営においてはいかに重要か知ることが出来ます。是非、経営者の方はまず自社の事業の定義づけから始められてはいかがでしょうか?応援しています。


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