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2023年2月 1日 (水)

日本のドラッガーと言われた一倉先生の「蛇口作戦」とは?

 私は20代の時に、某建設資材メーカーの営業マンをしていたことがあります。全国に支店を持つ上場企業でした。入社してすぐに東京支店に配属され、右も左もわからず右往左往する毎日でした。当時(現在も同じと思いますが)メーカーの営業マンの仕事は、何社か問屋を担当してその問屋さんに自社の製品を売り込むのが主な仕事でした。

 同行販売と称して問屋の営業マンと一緒に販売店を訪問し、自社製品の説明をしながら販売店に売り込む手伝いもするのですが、問屋の営業マンは、新人の私の話はまともに聞いてくれませんし、あまり同行もしてくれませんでした。 そのため私は自然と一人で直接販売店を訪問することが多くなりました。最初は距離があった販売店も何度も通っているうちに信頼関係が自然とでき、いろいろと話してくれるようになりました。

 今でも思い出すのは、社員数2名(うち1名が営業)の小さな販売店です。その販売店の営業マンは当時30代前半の方で、朴訥ながらも仕事にとても熱心な方でした。その方からある日、「町の工務店さんを一緒にまわって新製品の説明をしてもらえると助かるのだけど・・・」と遠慮がちに私に話しかけてこられました。私は二つ返事で「もちろん良いですよ。是非同行させてください。」と答えました。そしてその日から販売店の営業マンと一緒に町の小さな工務店を一軒一軒まわることになったのです。つまり私の先輩、同僚が問屋の営業マンと販売店を訪問しているとき、私は販売店の営業マンと工務店まわりをしていたということです。

 町の工務店の社長は棟梁も兼ねていることが多く、昼間はあまり時間が取れず、再度今度は私一人で訪問することが増え、そのうちに棟梁の家族の方に夕食をご馳走になるほど親しくなっていきました。工務店さん相手の展示会では、僕を見つけた工務店の社長が駆け寄ってきて「久しぶり」としっかり抱きしめられたりしたのも良い思い出です。そのうちに町の工務店さんから徐々に販売店に注文が入りだし、当然、販売店から問屋にも注文が入りだしました。驚いたのは問屋の社長です。なぜその新商品の注文が大量に入るのかと不思議に思ったようでした。そこで私は問屋の社長に今までの経緯を話し、交渉して大目に在庫を置いてもらうことに成功したのです。そして私には思いもよらないご褒美がついてきました。何と新人の私が支店一番の実績を作ることができたのです。

 会社を辞め、税理士となって30数年、日本のドラッガーと言われた一倉先生の「蛇口作戦」という販売法を聞いて私が取った営業行為は結果的にその「蛇口作戦」だったのだと改めて思いおこしました。一倉先生は、社長の重要な業務の一つに「社長自らのお客様訪問」を掲げていますが、「蛇口作戦」はその「お客様訪問」の一つです。すなわち、消費者にもっとも近いところで行われるお客様訪問をいいます。

 蛇口作戦における「蛇口」は会社が製造業者や流通業者であれば小売業者であり、小売業者にとっては最終消費者です。それぞれの蛇口=もっとも消費者に近い場所で働きかける販売活動のことを言うのです。一倉先生は「蛇口作戦を進めると、直接消費者に働きかけることになる。真の販売活動は、ここまで徹底しなければならないのである。」とされており、蛇口作戦においては、どこまで最終消費者に迫って働きかけることができるかが成否を左右することになるのです。是非皆さんの会社ももう一度消費者に最も近い形での販売戦略を見直されてはいかがでしょうか。応援しています。

 

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