生活費や教育費は贈与になるか?
以下は某社長と某税理士の会話です。
社長 「父親も高齢になってきたので相続税が心配です。どうしたら良いでしょうか?」
税理士「お父上の場合、かなりの相続税がかかることが想定されますから一日も早く準備していかなければな
りませんね。」
社長 「気持ちが焦るばかりで、何から手を付けたらよいかわかりません。」
税理士「まずは揉めない対策が重要で、次に納税資金対策、そして節税対策という三本柱が重要であること
は昔から共通です。」
社長 「揉めない対策は、父親に遺言してもらうことですよね。それは昨年してもらいました。納税資金対策と
しましては、保険で賄いきれない分は、自社株を買い取ることで対応しようと思います。どちらも以前
先生に教えていただいた方法です。残りは節税対策ということになるかと思いますが、手っ取り早く効
果が大きい方法はないものでしょうか?」
税理士「社長の息子さんは高校生でしたね。どうされているのですか?」
社長 「長女は音楽関係の私立の大学に通っています。長男は、今高校生で来年私立の医学部を受験する
予定です。」
税理士「お二人ともこれから教育費がかなりかかりますね。」
社長 「その通りです。娘の授業料も大変なのに、息子が医学部に受かれば、入学金、授業料と一般の学部
と違いかなりの金額を覚悟しなければなりません。頭が痛いです。」
税理士「そこで提案ですが、社長のお父さんに孫の教育費を負担してもらってはいかがでしょうか?」
社長 「そんなことをしたら贈与とか税務署で騒がないでしょうか?それが心配です。」
税理士「扶養義務者相互間の生活費や教育費には贈与税はかかりません。」
社長 「孫の教育費を父が払っても良いのでしたら、ほんとに助かります。早速、父に頼んでみます。」
税理士「その場合、お金の支払い方に気を付けてください。この贈与は(都度贈与)でなければなりませんか
ら、面倒だからと3年分の授業料をまとめて払ったり、残ったお金で株式投資などした場合は、それ
は贈与税の対象になりますから注意が必要です。」
それから月日が流れて父上の相続税の申告も無事に済み、ホッとしたのも、つかの間。相続税の調査です。調査官は「息子さんの教育費をすべて祖父に負担させましたね。」とジロリと社長を見ました。社長はオロオロです。横にいる税理士に目で助けを求めます。税理士は落ち着いた口調で「何か悪いことでも・・・・」調査官「別に・・・」調査官は厳しく問い詰めることで税理士を値踏みしたのでしょう。扶養義務者相互間の生活費や教育費の負担は、そもそも非課税です。何も悪いことはしていないのです。結果、相続税の税務調査も無事に済みました。この(都度贈与)案外知らない方が多いので今回取り上げてみました。