« 2022年9月 | トップページ | 2022年11月 »

2022年10月 6日 (木)

相続税納税資金対策・・金庫株の活用

 前回、紙面の都合で書けませんでしたので、今回、詳しく書きたいと思います。金庫株とは、会社が発行した株式を会社自身が株主から買い取り、自社で所有している株式のことです。金庫株という名称は、会社の金庫にある自社株式のイメージからこの名が付きました。会計上は自己株式と表示されます。その金庫株を活用した相続税の納税資金対策ですがシンプルなもので、自社に相続した自社株を売却し、その現金で相続税を納付する方法です。

 オーナー社長の死去により相続が発生した場合、会社に手元資金があっても、それは会社の財産であり社長個人の財産ではないため、当然のことですが、それがすぐに相続人の納税資金になるわけではありません。中小企業の社長は、心理的に会社と一体となっているため、相続税を相続人が支払えるように、しっかりと現預金を用意して亡くなる社長は、ほとんどいません。会社の後継者の相続人は、主として自社株を相続しますので、その分の相続税を支払う現金が不足するケースが多いのです。他の相続人から遺留分を請求された場合はさらに対処に困ります。そのような時に金庫株の活用です。(あくまでも優良会社で会社に余裕資金があることが前提になりますが・・)

 さらに、相続時における金庫株の活用については、税務上も有利です。最高税率が55%に近い総合課税の対象となる「みなし配当課税」は行われず、低税率の譲渡益課税となります。(相続税申告期限から3年以内の自社株譲渡は通常の株式の譲渡益課税となり、税率は20.315%の申告分離課税となります。)その上その相続した自社株にかかった相続税を取得費に加算できることになっており、譲渡益の圧縮までできます。

 この金庫株ですが、納税資金対策の他にも様々な活用が考えられます。
それは、この金庫株を少数株主対策に使う方法です。老舗の会社ほど少数株主が多くなる傾向があります。また何代も相続を重ねたり、当事者間で譲渡が行われていたり(会社の承認を得ない譲渡も当事者間では有効です。)真の株主が誰かわからない状態になっているケースが見受けられます。少数株主のメリットは配当金くらいしかありません。

 しかし、少数株主は配当金を自由に決められるわけでもありません。少数株主のフラストレーションは想像以上です。そこで少数株主権を行使されたりすると会社経営にも影響を及ぼします。この場合に自社株を会社で買い上げる方法です。少数株主からは額面で買い上げればよいと考えている経営者の方がほとんどですが、ここで発想を変えて、同族の原則的評価方法で買い上げてみてはいかがでしょうか?ある会社は、原則的評価方法ですと額面のほぼ10倍になりましたが、その価格で買い取る提案をしたら、ほとんどの少数株主が売却を希望しました。その結果株主数は激減し、会社経営は安定したものになりました。ぜひ一考していただければと思います。


« 2022年9月 | トップページ | 2022年11月 »