相続税納税資金対策としての保険の活用
当事務所には、相続税の申告依頼が月1件くらいのペースで依頼され続けている。従って開業以来400件以上は申告してきたことになる。申告を依頼されて一番気になるのが納税資金の問題だ。納税資金が少ないと当然のことながら納税に窮し、延納などすれば利子税など余計な税金を払わなければならないことにもなる。また現金での納税が困難と認められる場合には、延納のほかに物納という方法もあるが、いずれも手続きが結構煩わしく、物納に関しては、かなり条件の良い物件でないと引き受けてもらえない。しかし、相続税の納税用にと現金を貯めておくことはなかなか困難なことだ。私は、将来相続税の申告が必要と思われるお客様には出来るだけ生命保険を活用することを勧めている。
保険に加入していた場合には、遺産分割協議も必要なく、受取人がすぐに現金化できる。本来、保険金は受取人固有の財産ということで、相続財産にも遺産分割協議の対象にも遺留分の対象にもならない。従って、たとえ相続放棄をしていても保険金は受け取れることになる。(後で説明する非課税枠は使えないが)ただし契約者である被相続人が保険料を負担していた場合には、相続税法上「みなし相続財産」として相続税が課税される。本来相続財産でないものを無理にみなして課税するのだからと、受取人が相続人の場合には、相続人一人につき500万円の非課税枠が設けられている。まずは非課税枠を使うことは最低実施してもらいたいと考える。相続人が3人いれば500万円×3人で1500万円までが非課税ということになる。この場合、1500万円を預貯金に残しておけばそのまま相続税が課税されるが、保険金の1500万円は非課税ということで納税資金対策のみならず節税にもなるからより効果的だ。
先日、懇意にしている司法書士さんからの紹介で、相続の申告を依頼された。被相続人、相続人の方の保険契約の内容など調べていたところ、本来みなし相続財産として申告すべきものを保険金受取人の相続人が、自分の所得税の一時所得として誤って申告していたことがわかった。早速、相続人の所得税の還付の手続きを行い、その保険金をみなし相続財産として申告した。その結果、税額がかなり減少した。例えば契約者が長男、被保険者が父親、受取人が長男というケースの場合は、相続財産ではなく長男の一時所得して申告しなければならない。今回は契約者父親、被保険者父親、受取人長男というケースなので「みなし相続財産」として相続税の課税財産に加えるものだった。このように契約形態でも課税関係が変わってくるから、保険証券をしっかり見直し、整理し、万が一の時に相続人が困らないように準備しておくことが重要だ。
保険の受取人を配偶者とするケースが一番多いが、会社経営者の場合は自社株を引き継ぐ子どもにしておくと良いケースもあるので、加入の際は、一度是非気軽に相談していただければと思う。保険を上手に活用して、相続対策に活用してもらいたいと考える。応援しています。
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