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2022年4月28日 (木)

国が抜いた「伝家の宝刀」・・最高裁も相続人側が敗訴

 419日、各方面の注目を集める裁判の結果が出た。最高裁が315日「弁論」を開いたことで、よもや国側が負けるのではと取り沙汰されていたが、結論は相続人側の負けが確定した。これで2016年から始まった路線価論争は、一応の決着を見ることになった。

「伝家の宝刀」とは「いざという時以外めったに使用しない」ものの例えだが、国税では「財産評価基本通達6項」がその「伝家の宝刀」だ。財産評価基本通達の第一章総則6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価格は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と短く書かれている。さすがに「伝家の宝刀」と言われるだけあって、この総則6項を適用して評価したケースは過去10年間でわずか9件だけで、すべて国側の勝訴となっている。過去あまりに露骨な節税対策に対し、この宝刀を抜いてきたようだ。今回もかなり露骨な節税対策が目に余ったのではないだろうか。

 さて、今回の内容はこうである。札幌在住の甲さんは当時90歳で2008年に信託銀行に相談に行った。甲さんには問題となる不動産の他に既に7億程の資産があったので、心配になったのも無理はない。そこから信託銀行主導?の相続対策がスタートしたものと思われる。甲さんには妻、長男、長女、次男と4人の推定相続人がいたが、まずは同年に次男の子(孫)を養子縁組した。翌20091月に東京都内のマンション8.4億円、12月に川崎市内のマンション5.5億円を信託銀行からそれぞれ6.3億円、3.8億円借り入れし購入した。ちなみに銀行内部の稟議書は「相続対策のため」で、後に裁判では行政側の証拠として使われた。

 20126月に94歳で甲さんは亡くなった。物件購入による約10億円の評価引き下げで他の財産も合わせて20133月に相続税ゼロの申告をした。財産の大半は、一代飛ばしで、養子の孫が相続した。川崎マンションは20133月に5.2億円で、相続申告前に売ってしまった。甲さんの元々の不動産は全て札幌だった。買ったのは東京と川崎。相続税はゼロ。相続人は、相続後すぐに川崎のマンションを売却。やり過ぎ感満載といえる。今回の場合、路線価評価額が不動産価額の4分の1だったこと、元々あった財産を含めて相続税がゼロになったこと、購入の目的があきらかに租税回避とみなされたことなど総合的に判断されたようだ。

 これから不動産を活用しての相続対策をする方は下記のことに気を付けなければならない。

①相続直前の対策はできるだけ控えること。

相続人の祖父が物件を取得したのは亡くなる3年数か月前で、当時90歳という高齢だった。また相続人である孫との養子縁組も物件購入時期と近接していた。金融機関も貸し出し稟議書に「相続対策」と明記していた。

②短期の不動産売却は避ける。

相続人は相続した物件を、相続から9か月という短期間で売却し現金化している。

 今回の件も、一族の将来の事業承継対策を考えた場合に、一番しっかりしている孫に今後の不動産事業は任せたいと考え、養子縁組をし、管理運営しやすいように地元札幌市内の不動産を何か所か購入し、更に発展させようと事業計画を立てていたなどのストーリー性が大事だったのではないだろうか?その結果、税金も減っていたということなら当局もここまで問題にしなかったのではと考える。

 

2022年4月 1日 (金)

会社を良くするアドバイスのできる事務所を目指して

   会社の社長と話していると、我々が税理士ということで、経営のアドバイスを求められることが多い。しかし、税理士と経営者は異なるので、返答に戸惑うことが多いのは事実である。我々は税金のプロであって経営のプロでは決してないからである。しかし、実際に社長から聞かれることは税金に関することより経営に関することが圧倒的に多いように思う。それだけ中小企業の社長は周りに相談者がいないのだと思う。


   会社に良くなってもらうことが、我々の成長の道でもあるため、何とか期待に応えようとスタッフと一緒に努力してきた。事務所の規模を拡大し、中小企業の一隅にでもなれば経営者の悩みを身をもって知ることが出来るのではないかとも考えた。少人数の事務所で税のプロとして徹するのも一方だが、私は少しでも自分の事務所が会社に近づく努力をし、スタッフ数23名で頑張っているのはその意図があったからだ。


   また会社を良くするために参考になればと思い、いろいろな経営学の本を読んだが、なかなかしっくりこない。それもそのはずで、巷で出版されている経営学に関する書物は、規模の大きな企業を対象に書かれているものがほとんどだからだ。我々の関与先の多くは年商5億円以下の中小零細企業なので、経営課題もどこかすれ違う。しかしここで皆さんに再認識いただきたいのは、日本では年商5億円以下の企業が95%を占めているということだ。このクラスの企業の顔は何といってもトップである社長である。トップの社長で決まると言っても過言ではない。会社、日本を良くするには、さらに年商5億円以下に役立つ経営アドバイスが重要なのだ。

 そこで会社を良くする方法を思いつくままに下記に羅列して見た。


① 経営計画
       長期経営計画、単年度計画、予実対比、行動計画

② 工場合理化
       作業改善、能率アップ、動作分析、コストダウン、工程管理、物流管理

③ 経営分析による課題抽出

④ 人事管理
       賃金体系、組織づくり、持株制度、社員教育、幹部教育

⑤ 経理の合理化
       事務改善、合理的なOA化へのアドバイス

⑥ 販売
       広告戦略、販路対策、販売促進、商品陳列


   上記のことにすべて精通は難しいので、少しでも他の事務所より多く提供できる事務所になることが目指すところである。そして関与先さん、地元企業さんに良くなってもらうことで日本が良くなることにつながると信じている。経営者の皆さん、応援しています。



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