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2022年3月 2日 (水)

相続税の配偶者控除の活用

 最近、相続の申告依頼が増えている。2015年の改正で基礎控除が40%減らされたことが大きな要因だ。実際、統計上も申告者数は改正前の2倍になっている。遺産総額1億円で相続人が配偶者と子2人で法定相続分通りに相続(配偶者1/2、子一人1/4づつ)した場合に相続税額は約300万円(改正前は約100万円だった。)となる。誰でも少しでも税額を減らす方法がないかと考えるのは当然だが、実際に減らす方法があるのだろうか?

 ずばり配偶者がすべて相続すれば相続税は一円もかからないことになる。配偶者は遺産総額の法定相続分又は1億6千万円のいずれか大きい金額まで非課税だからだ。子は、親の財産を費消するだけで、何も親の財産形成に貢献していないのだからわざわざ子に相続させる必要はないと言っている方もいる。親の財産形成に貢献していると思われる子は家業を手伝っている子だけである。

 そこで配偶者とその子にだけ相続させようとすると、今の法律では遺留分というものが法定相続人に保障されているので、事はそう簡単には進まない。そのような場合には、その子(家業を継ぐ子)受取の終身保険に入ってあげておくと良い。相続が発生した時に他の兄弟からの遺留分の請求にはその保険金で支払うことができるからだ。しかも保険には非課税枠があるため、(このケースでは1500万円までは相続税が課せられない。ここが預貯金と違うところだ。)相続税の節税にもなる。しかも保険金は民法上相続財産ではないので、遺産分割協議もいらないし、遺留分の算定の金額にも入らない。しかもすぐに現金化できるので使い勝手が良い。(相続では被相続人の口座が凍結されるので現金引き出しが面倒だからだ。)是非、終身保険の活用をお勧めしたい。

 
ところで、この配偶者の非課税規定だが、適用前に下記の注意が必要だ。

① 遺産分割協議が申告期限までに整っていないと使えない。期限までに遺産分割できない場合は必ず「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくことを忘れないこと。

② たとえ相続税が0になっても、遺産総額が基礎控除を超える場合は必ず申告が必要。

③ 二次相続の相続税が多額になることがある。二次相続では配偶者の非課税はないし、しかも相続税の税率は累進課税なので、配偶者に固有の財産がある場合などその分も加算されるので税額が大きくなることが多い。そこで家族円満の場合は、一次、二次相続を試算して最も負担の少ない税額を選ぶ方が賢明である。

上記のことを踏まえて上手に「配偶者の税額軽減」の制度を活用していただければと思う。


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