« 2021年11月 | トップページ | 2022年1月 »

2021年12月 6日 (月)

「生前贈与がダメになる!」各誌・・贈与節税できなくなるのか?

 前回のエッセイからの続きで、今回は家族信託の「受託者」について書く予定だったが、急遽テーマを「生前贈与」に変更した。何故なら最近になって急にいろいろなところから質問されるからだ。このところ各週刊誌等も「生前贈与がダメになる前に!」などという特集を組んでいる。


 昨年12月の自民党(与党)税制調査会の税制改正大綱で「時期選択に中立的な税制・・相続贈与一体課税」が論じられた。実はこの内容は前年も、その前年も論じられていたのだ。にもかかわらず、ここにきてマスコミが一斉に「生前贈与がダメになる前に贈与を!」の報道。マスコミ操作による既成事実化で財務省が実現化を図っているのか?と勘ぐってしまうほどだ。財務省は何とか改正したいと思っているし、「資産家への相続税節税封じ」は分配重視で大いに大衆受けするだろう。まずは、今年12月の自民党改正大綱で「何年から暦年贈与を廃止する」と具体化するかどうか注目だ。


 令和3年度の税制改正大綱では「諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて・・中立的な税制の構築に向けて本格的に検討を進める」としている。では諸外国の制度は実際にはどうなっているのだろうか?アメリカでは、遺産税と言って被相続人の遺産全体を対象にしており、生前贈与は全て相続時に取り込まれる。とても厳しく見えるが、基礎控除が約10億円もあり庶民には影響のない制度だ。日本では現在、相続開始前の3年間は相続財産に合算されるが、ドイツでは10年、フランスでは15年となっている。


 これらからするとすぐに暦年課税贈与を無くすのではなく、まずは生前贈与の合算対象とする年数を伸ばすのが現実的な落としどころのような気がする。現在の3年を5年とか7年とかにまずは延長することで当面様子を見るのではないだろうか?廃止されるにせよ、贈与加算の遡り年数を伸ばされるにせよ、いずれにしても、年内中に贈与を実行するのが得策ということになる。そしてこの暦年課税を利用するのではあれば、後で税務署から疑義を持たれないように贈与の事実をしっかりと残しておくことが重要だ。金銭の贈与であればできるだけ振り込みにし、贈与契約書も作成し、通帳の管理は受贈者がしっかりとすることが後日「名義預金」として認定されないためのポイントだ。せっかくの贈与が後日無駄にならないようにしよう。


 また相続財産が多い方は基礎控除の110万円に拘らず、少し贈与税を払ってでも贈与した方が得だ。ちなみに310万円で20万円の贈与税、510万円で50万円の贈与税で済む。税率にすると9.8%と消費税以下だ。シンプルでもっともコストのかからない相続税対策と言えるだろう。ぜひ年内に検討を!

« 2021年11月 | トップページ | 2022年1月 »