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2021年8月 3日 (火)

『M&A』って何?

 最近「M&A」という言葉をよく聞くけど・・具体的にはどのようなことなのだろうか?

 これについては、今回、3人共著で発行した「あなたの事業承継」の第4章で齋藤氏が自らの経験を踏まえてわかりやすく書いていますので、是非参考にしていただければと思います。

 「M&A」と聞くと、「乗っ取り」などのイメージで悪い方向に考える方も多いようです。しかし、齋藤氏は、「会社と会社がお見合いをして、お互い気に入ったら一緒になる」というお見合い結婚と捉えた方が良いと自分の体験を通して話しています。後継者選定に問題をかかえる中小企業が、継続的・永続的に事業運営をできるようにするための前向きな位置づけが我々の取り組んでいる「M&A」です。

 齋藤氏はその著書の中で、この前向きな「M&A」についてこう述べています。「バリバリのオーナー社長が、代表権を返上することになり、買収側企業から新社長が来るのが一般的です。一抹の寂しさが伴うことは、覚悟しなければなりません。これに対して、世間はどうとらえるでしょうか。『順調だったのになぜ?』と思うでしょう。そして、『もう少しの期間社長を続けられたのでは?』とも、言われるかも知れません。そんな言葉を投げかけてくれたならば、ある意味で勲章をいただいたようなものです。そんな時には、『ありがとうございます。私も会社も元気なうちに、新オーナーが当社経営を継続し発展できる可能性に託しました。従業員も取引先も安心です』と答えることができるとしたら、『この承継もあり』ではないでしょうか。従業員は、『社長はまだがんばれるに何故だろう?でも我々従業員としては、これで将来も安心して働ける会社になるか?』と感じるのではないでしょうか。得意先からは『今まで以上に長い付き合いができる会社になった。今後も応援しよう』と仕入先からは『今後も安定した経営に期待できるので、精一杯の協力を惜しまない』との評価をいただくことが十分に予想されます。」と。

 中小企業の「M&A」は事業承継戦略の一つです。後継者がいない場合には、「休廃業・解散」という方法も当然考えられます。その場合、一緒に働いてきた社員は他の働き口を探さなければなりません。若い社員はまだしも、年配の社員は家族を抱えながら路頭に迷うことにもなりかねません。仕入先、得意先も困るでしょう。このようなことにならないためにも、早めに事業承継戦略の一つに「M&A」も選択肢に入れながら早めに取り組みましょう。


 中小企業の社長さん・・応援しています。一緒に頑張りましょう。

持ち株会社について

   最近、事業承継対策で持株会社の設立を相談されるケースが増えてきた。

   以前より、メガバンクを中心とした金融機関は持株会社の設立提案をかなり積極的に行っている。過去、提案を受けた会社も多いと思う。金融機関が提案する内容はこうだ。

   まず後継者が出資して新会社を作る。次にこの新会社が、先代経営者から従来の会社の株式を時価で買い取る。その際に問題となるのが買い取り資金だ。持株会社まで作って対策しようというのだから当然株価は高い。その際に買い取り資金が、億単位になることは珍しくない。そこで、その買い取り資金は全額その金融機関が融資をしてくれるというスキームだ。株価が上昇し続けている会社にとっては、効果も高い(新会社は後継者の会社なので、どんなに株価が上昇しても先代の相続税の心配がなくなる。)が、設立時のコストがかかるのが欠点だ。

   まず先代が新会社に株式を売却するときに税金が約20%かかる。税率は低そうだが、元の金額が大きいのでかなりの税額になる。しかも新会社は、株式購入資金を借り入れるが、とても10年以上の期間では借りられない。そうなると毎年の返済額は大きくなり、資金繰りが圧迫され、財務内容が悪化していく。また社長が高齢な場合、株式売却による多額の現金は使い切れず、相続対策でしたはずなのに、株式が現金に変わっただけということにもなりかねない。

 そこで私は、今回出版した本の中でも触れたが、コストのかからない持株会社の提案をしたい。それは「株式移転」と言われる方法で、従来会社の株主が新会社に、現在所有している株式を現物出資する方法である。従来会社の株主がそのまま新会社の株主になり、従来会社を子会社として間接所有する方法だ。株主を変えないで対策になるのかと疑問を呈する人もいるが、まず新会社を作ることで、株価評価をする際に含み益に対する法人税相当額分が控除されるので株価は下がる場合が多い。しかも先代が新会社の株主のままなので、後継者の見守りをしながら経営の引継ぎもできる。もし子会社が従来から不動産を所有していればそれを持株会社に時価売却するのも一つの方法である。(この場合の不動産の売却益に対しては、グループ法人税制が適用されるために従来会社には課税は生じない。)

 3年経過したら(3年後、持株会社の不動産の評価は取得価格でなく、相続税評価額になる。)この段階で株価評価は下がる。さらにタイミングが合えばその時点で、社長は退職金を取り、代表を下りてはいかがだろうか。更に株価評価が下がることになる。ある会社では株評価が半分以下になってしまったケースもある。その段階で後継者に持ち株会社の株式を譲渡、贈与すれば、事業承継がうまくいき万事めでたしということだ。
 

 株価評価を引き下げながらの事業承継対策の一つに是非「持株会社」の活用をお勧めしたい。

 

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