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2021年5月28日 (金)

待ったなし!あなたの事業承継

 来月(令和36月)「待ったなし!あなたの事業承継」と題して新刊を3人の共著で出版する予定です。4章からなっており、私は第3章「今がその時!『特例事業承継税制』」を担当させていただきました。その他の章のほとんどは齋藤氏が担当されました。


 齋藤氏は、以前当社の顧問先の社長でした。自ら立ち上げ育てた会社を4年ほど前にMAで譲渡し、その後、引継ぎの為役員として残っていましたが、令和元年には退任されました。初めてお会いした時に、私の高校の後輩ということがわかり、特に親しく付き合わせていただいてきましたが、在職中から勉強熱心で当社のオーナーズセミナーには欠かさず出席してくれました。齋藤氏の話では、自社のM&Aも当社のオーナーズセミナーでM&Aというものを知ったことがきっかけだったそうです。思い切ったM&Aにも驚かされましたが、更に驚かされたのは、経営について、あらためて勉強したいと一念発起して大学院に入ったことです。現在、齋藤氏は令和2年から宮城大学大学院で自分の経験を踏まえて事業承継をテーマに勉強されています。その勉強熱心さには頭が下がる思いです。そして齋藤氏自らのM&Aの経験を活かし、自分と同じように悩まれている経営者の皆さんに少しでも役に立てればという一心から今回の出版の運びになりました。

 もう一人の著者である菱沼氏は齋藤氏の古くからの友人で調査会社の東北支社長をされていた方です。在職中には、延べ2万人の会社経営者・経営スタッフと面談しています。今回の本の出版では、実際に多くの会社経営者の不安や悩みを垣間見てきた経験とその顔の広いところを生かし、大いに活躍していただきました。

 このように「特例事業承継税制」の届け出の提出期限が2年後に迫る中、経営者の皆さんの少しでもお役に立てる本を提供出来たらという思いで、専門家でなくとも誰でも読めるわかりやすい解説書を自分たちの経験も踏まえて提供しようということで、意気投合し、今回の出版になりました。来月出版されましたら当社の顧問先の経営者の方には、一冊づつ提供させていただきたいと考えています。

 「待ったなし!」とは、特例事業承継税制の適用を受けるための届け出期間が令和53月に迫っていることだけを言っているのではありません。何故なら統計によると60歳以上の経営者の約半分が後継者不在という深刻な状態に陥っているからです。「後継者問題」は、ほんとに頭の痛い問題ですが、どのような形にせよ避けては通れません。もし避け続ければ、それまでの経営努力も泡のごとく消えてしまうことになります。たとえ廃業にするにしましても、上手に廃業するには、その準備に十分な時間をかけなければなりません。それを怠れば、必要な老後資金も残すことができません。いずれにしても「待ったなし」の気持ちで目をそらすことなく、真正面からこの事業承継問題に取り組まなければなりません。大変なことだとは思いますが、一緒に取り組みましょう。応援しています。

2021年5月 7日 (金)

教育資金の一括贈与の特例

「教育資金の一括贈与の特例」が2023年3月31日まで2年間、更に延長されました。
2013年、特例が創設されてから、なんと10年間続くことになるのです。この特例が出来たときには、私は、「誰がこんな使い勝手の悪い特例を使うのだろうか?きっと普及しないだろう」と高を括っていました。

 

   ところが、2020年3月末時点でその契約数は約23万件、信託財産設定額は累計1兆6,700億円と、利用者の非常に多い制度になっていました。私の予想は見事に外れてしまったのです。使い勝手よりも孫可愛さの方が勝ったのでしょうか?勿論、孫可愛さはあったのでしょうが、それ以上に相続対策に活用できたことが大きかったからだと考えられます。



 今回の改正では、その点で手が加えられました。2021年4月1日からの信託受益権等の契約からは、その贈与者が亡くなった時点で、残っている教育資金贈与はすべて相続税の課税対象になりました。さらに孫やひ孫に対しては相続税の2割加算がされることになりました。もし贈与者が亡くなった場合に、以前はすでに贈与した分は、相続財産に加える必要がありませんでしたので、節税効果が縮小したと言えます。しかし、贈与者が亡くなった時点で、受贈者が23歳未満である場合や学校に在学中の場合は除かれています。相続財産に加算されないようにするには、23歳までに使い切ってしまえば、相続財産に加算されることもありません。この制度を節税に活用される方はその辺を踏まえて計画的に贈与することが重要です。


 昨年、この特例を活用されている方のお孫さんが私立の有名医大に入学されました。「入学金が大きいので、この分は別途、孫の為に大学に直接振り込んであげたいが、税金はかからないか?」と質問されました。持つべきはお金持ちの祖父だなと思いながらも、私は「大丈夫ですよ。ただし入学金の請求書や振込用紙は必ず保存して、通帳にも鉛筆でメモしておいてくださいね。」と答えました。以前より扶養義務者相互間における生活費や教育費は非課税です。このことは教育資金の一括贈与を活用していても併用して使えます。これは、その都度贈与とも言われ、必要な都度、必要な金額を直接振り込むというものです。必要以上の金額を振り込むとそれは通常の贈与になりますので、注意が必要なのは言うまでもありません。


 また年間110万まで非課税の暦年贈与も使えますので、上手に組み合わせて活用すると更に節税効果は高まると思います。例えば孫が生まれたら、この教育資金一括贈与の特例で贈与を実行しておきます。小さいうちはその都度贈与を行い、認知症気味になってきたらこの特例を活用するのです。贈与は、あくまでも民法上の契約ですから、「あげる」「もらう」のお互いの意思がしっかりしていないと成立しないからです。もし贈与者が認知症などになれば、贈与などは当然できなくなるのです。高齢化が進むと同時に認知の問題は深刻な問題になってきています。次回はこの「認知症対策」としての「信託」の活用について述べていきたいと思います。

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