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2021年2月 3日 (水)

自筆証書遺言について

   先日、友人の父親が亡くなり、しばらく経ってから、その友人から私に電話がかかってきた。「親父の遺言書らしきものが仏壇の中から見つかったよ。封を開けてみたら俺の希望した通りのことが書いてあったよ。親父ありがとうと言う気持ちだ。ところでこれをどうすればいいんだい?」と。私は慌てて「えっ!勝手に封を開けちゃだめだよ。多分過料がくるよ。すぐに家庭裁判所にその遺言書を持参して検認手続きを受けなくちゃ。」と話した。彼は、遺言書を安易に開けてしまったことに反省しつつ早速家裁で検認手続きを受けた。封を開けたことはお叱りを受けたようだが、まずは有効な遺言書ということで一安心だった。

 自筆証書遺言は、勝手に封を開けたりした場合、5万円以下の過料の制裁を受けることがあるので注意が必要だ。ただ、開封しても遺言自体の効力に影響はない。友人の場合も、遺言は、すべて父親の自筆で書かれ、日付も書かれ、自書押印がしっかりとされていたということだ。次に友人は、その家裁の検認を受けた遺言書を司法書士さんへ持参し、登記を進めようとした。しかし、司法書士さんの指摘で遺言の中に一部通路の持ち分が漏れていたことがわかった。そのため、その部分だけ遺産分割協議をしなければならなくなり、結果、遺言で自分の期待通りの財産を相続できなかった他の相続人はなかなか協議に応じてくれず、すべての財産を相続人同士で再度、遺産分割協議をするということで話し合いがついた。これではせっかくの父親の意思を反映した遺言も台無しである。 私の友人も親父ありがとうと喜んでいたこともつかの間、一変してしまった。

   不動産の確認では必ず最寄りの市町村に出向き、名寄帳を取り寄せることが重要である。私は遺言でも遺産分割協議でもかならず「上記に記載なき財産についてはすべて〇〇〇へ相続させる。」という一文を入れてもらうようにしている。

 以前、お子さんのいないご夫妻の奥様からご主人の相続の申告を依頼されたことがある。
奥様は二人だけなのでと簡単に考えていたようだ。しかし、この場合は、ご主人のご両親はすでに亡くなっていたので、ご主人のご兄弟が相続人になることを後日知った。奥様は遺産分割協議書にご主人の兄弟から実印をもらわなければならない羽目になった。しかし、兄弟は簡単には印鑑を押してくれず奥様が途方に暮れていたのだ。もしご主人の遺言があればと私もとても残念に思った。お子さんのいないご夫婦は必ずお互いに遺言をしておくことが大事だ。そうすれば 兄弟には遺留分がないので、すんなり相続の手続きができるからだ。

   自筆証書遺言に関しては民法の改正があり、平成31年1月13日からは財産目録などを添付する場合は、自筆でなくパソコン等でも良くなっている。また令和2年7月10日からは法務局で自筆証書遺言の保管が可能になった。法務局で預かる際に様式の不備をチェックしてくれるので安心だ。また法務局で保管されている遺言書は改めて検認手続きもいらない。遺言はできれば後日のトラブルを最小限に抑えるためにも「公正証書遺言」を推奨するが、なかなか敷居が高くてという方には、まずは、この自筆証書遺言の活用を勧めたい。

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