しっかりと「決算書」が読める社長になろう!
当社では今年2月まで毎月事務所主催でセミナーを開催してきたが、今年は新型コロナウイルスの関係で年内のセミナーをすべて中止した。セミナーのテーマは経営に関するものが中心になるが、決算書の読み方については毎年必ずテーマに取り入れている。
以前、年商が50億円もある社長が当社のセミナーに参加して「正直、決算書の見方が良くわからないのですよ。今更、基礎的なことを顧問税理士にも聞けないので、今日参加させていただきましたよ。」と話してくれた。私は驚いた反面、案外そのような社長が多いのではと考え、お会いする社長ごとに尋ねてみることにした。するとやはり「実は決算書の見方が今一わからない。」という答えが多かったのだ。
そういえば京セラの稲盛会長も創業当時は決算書が読めなくて、必死で勉強したと話していた。見渡してみると経理畑出身の社長はほとんどいない。稲盛会長も技術畑出身だった。社長が営業畑か技術畑出身という方が多いようだ。決算書の読み方が苦手なのは、こんなところに原因があるのかもしれない。
しかし、社長となった以上「決算書が読めない。」では済まされない。1996年負債総額220億円で倒産した熊本の元㈱佐藤工務店の社長は「わが社に一人でも貸借対照表が読める社員がいればこんなことにならなった。」と話していた。この話を顧問先の社長に話すと、その社長は「そもそも社員のせいにしていること自体甘いですよ。社長が貸借対照表を自らしっかり読めるように勉強しておけば良かったのではないですか。」と返してくれ、とても頼もしく思ったことがある。その社長は、三代目の社長だが、とても勉強熱心で、決算書も常に自分なりにしっかり分析されて、経営計画も立てている。このコロナ禍にも負けず業績も良い。
決算書の中心は、貸借対照表と損益計算書だ。まずはこの二つの資料がしっかりと読めないとならない。多くの社長は損益計算書の売上と利益だけはしっかりと見るようだが、貸借対照表は毛嫌いして見ようともしない人が多い。しかし、貸借対照表には資産負債の状況が今どうなっているのか、これからどう手を打っていかなくてはならないかを知るための重要な経営指標がいっぱい詰まっている。
しまってある決算書や試算表を引っ張りだし、貸借対照表の現金預金をしっかりと見てほしいと思う。そして月商の2か月分以上あるか、年間固定費の半分以上あるか、流動負債の半分以上あるか、借入金の半分以上あるかをチェックしてほしいと思う。何故なら、いざという時に頼りになるのはキャッシュだからだ。次に総資産から総負債を除いた純資産を見てほしい。この純資産が総資産に占める割合を自己資本比率というが、この比率が最低でも30%以上あるか確認してほしい。
前述した㈱佐藤工務店はこの部分が弱かった。利益が出ても節税という名目で必要でないものまで購入していたため、内部留保は積み上らなかったのだ。この場合の自己資本比率だが、簿外資産の保険の解約金や土地の含み益のようなものは、加えて計算することが重要だ。逆に言うと、含み損がある場合は、これを控除して計算することになる。まずは、この2点をしっかり見ていただければ貸借対照表の読み方のコツはつかんだことになるので、まずは取り組んでもらいたいと思う。わからない時は気軽にお声がけください。いつも応援しています。
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