俺は税金を払う気はない!
私は時折、T社長に初めてお会いした時のことをまるで昨日のように思い出す。あれは、顧問契約のためにT社長の会社を訪問した時のことで、もう20年以上も経つ。名刺交換が済むと社長は開口一番、私に「俺は税金を払ったことはないし、これからも税金を払う気はない。とにかく税金を払わないようにだけしっかり指導してくれ。」と言い放った。これはとんでもないところを紹介されてしまったと、一瞬で後悔したが、ここで怯んではいけないと思い、私は当時書物等で聞きかじった経営の知識を社長に話した。すると「君はほんとに机上の理論だけを勉強してきたようだ。俺は、生きるか死ぬか必死の思いで今日まできた。教科書にない知恵をだせと言っているのだよ。」と返され、その迫力に役者が違い過ぎると正直思った。そんなT社の年商は、当時4億円くらいだった。毎月、月末になると社長は必死の形相で資金繰りに走り回り、月末は誰も近づけないオーラを放っていた。私はそんな社長に、若さもあってか「社長、思い切り利益を出し、堂々と税金を払いましょうよ。会社は、そうすることでしか強くなれないのですよ。御社の10%にも満たない自己資本比率では、いつになっても社長は資金繰りに追われ続けますよ。」と嫌われるのを覚悟で言い続けた。
現在では年商20億円以上、自己資本比率60%と優良企業に生まれ変わった。何年か前に決算を迎えるにあたって、私は社長に「社長、凄い利益です。少し節税しませんか?」と言った。すると社長から意外な言葉が返ってきた。「利益を出して、税金を納めなければ強い会社になれないと私に教えてくれたのは先生ではないですか?おかげさまで月末の資金繰りに追われることもなく先生の言ってくれたことを肌で感じています。今回の納税資金もきちんと資金繰りに入れていますので、余計な節税はしなくていいですよ」と力強く返答された。その時、私は深い感動を覚えた。社長さん方、T社のように、しっかり利益をだし、税金を払って、自己資本比率を上げ、強い会社を作っていきましょう。それこそが、まさしく優良企業への近道ですから。応援しています。
2019年8月29日 著 者 税理士 千葉 和彦
« 経営改善計画の立て方 | トップページ | 共有名義の不動産は、早めの対策を! »
「経営計画」カテゴリの記事
- 私のアルバイトの思い出(2024.07.01)
- 家族信託の活用(2024.05.01)
- 分掌変更による役員退職金(2024.03.01)
- 常に自社の出口を考えておこう!(2024.02.01)
- しっかりと「決算書」が読める社長になろう!(2020.08.03)
コメント