民法改正で相続のココが変わる!
民法の相続分野が、昨年7月6日に約40年ぶりに抜本改正された。今改正の大きな目的は、配偶者への配慮、遺言制度の簡便化、遺留分制度の見直し、特別寄与者制度の創設だ。紙面の関係で今年の1月13日にすでに施行になっている遺言書制度の簡素化について今回は述べていきたい。
*遺言制度の簡便化
① 自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)
従来の一字一句自筆でなければ無効という方式から、改正後は自筆証書の内容である本文自体は手書きする必要があるが、目録等は印字した紙面の1枚ずつに署名・押印すれば有効になった。このことで、長文の手書きが難しい高齢者にとっても書きやすくなった。
② 自筆証書遺言の公的保管制度(2020年7月10日施行)
封をしていない自筆証書遺言を法務局で保管する制度が整備された。この制度は本人が法務局に、その遺言書を持参し、本人確認を受けた後、法務局がデータ化して保管するというものだ。
自筆証書遺言はコストがかからず、気軽に書けるところが一番の長所だ。しかし、改正前までは、遺言全文、署名、日付の全てを自ら手書きする必要があり、目録等まで自書しなければ無効になってしまっていた。実際に、目録をタイプライターで作成したために無効になった古い最高裁判例もある。しかし、今改正の②のように、この自筆証書遺言書を法務局に預けることができれば、法務局側では、厳格な本人確認と様式の不備がないかを確認してから預かるようになるから、様式の不備等で無効となったり、遺言書が偽造であるという紛争は避けられると思う。さらに法務局に保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認手続きが除外されるので、この面からも公正証書に引けを取らないのではないかと思う。
今までは、せっかく書いた遺言書が無効になったり、見つけられなかったり、破棄されたり、偽造ではないかと訴えられたりなどの紛争が多かったが、今回の改正遺言書は、かなり使い勝手の良いものになる。しかも、コストも公正証書遺言と比較してかなり低くなるからうれしい限りだ。ただ、この自筆証書遺言書は自分の足で法務局に持っていかなければならないので、自分が動けるうちに実行する必要がある。
ただ、どの方式の遺言書でも共通して気を付けなければならない点がある。それは各相続人の遺留分を配慮することである。せっかく遺言があっても、遺留分を侵す内容になっていることが原因で紛争になっていることがあるからだ。どうしても遺留分以下になる相続人がいたら、法的効力はないものの、遺言者の思いを伝える「付言事項」を書いてもらいたいと思う。そのことで実際、紛争が避けられたことも数多くあるからだ。皆様のご健闘祈ります。
2019年2月27日 著者 税理士 千葉 和彦
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