「経営者保証に関するガイドライン」について
「経営者保証に関するガイドライン」というものをご存知でしょうか?2013年12月に公表され、翌2014年2月に適用が開始されました。適用からすでに4年半が経過しますが、経営者の中ではまだまだ知らない方が多いというのが実態です。と言うのも、この制度が単に「個人保証が解除できる制度」と、誤った解釈で普及する懸念があったため、安易な広報ができないという難しさがあったようです。
ガイドライン以前の経営者保証は、経営者が個人保証することにより、資金調達を円滑にする一方、思い切った事業展開を阻害する面もありました。ましてや、経営に失敗したときは、早期に事業再生等を行いたくても、更に大きな壁になってしまうものでした。
「経営者保証に関するガイドライン」は、このような事業展開も再チャレンジも難しい経営環境を改善し、産業活性化を図るため、政府(金融庁と中小企業庁)の後押しで、中小企業団体および金融機関団体の関係者、学識経験者、専門家等の検討の成果をまとめたものです。融資の際に経営者保証を不要とするための条件を明らかにするとともに、早期に事業再生や廃業を決断した場合は経営者に一定の生活費を残し、自宅に住み続けるための可能性などを示したものになります。新規融資はもとより既存融資についても、融資条件の見直しや借り換えなどの際に考慮されることになります。内容だけ見れば、経営者サイドにとって有益なものです。しかし、このガイドラインは、何ら法的な拘束力を持つものではなく、いわば、企業・経営者と金融機関との間の「紳士協定」のようなものです。金融機関も利益を上げなくてはなりませんしリスク対策もしなければなりません。そう易々と保証ははずせません。そのため「経営者保証ガイドライン」の資格要件は下記の4条件をすべて満たす必要があります。
① 法人と経営者個人の資産経理が明確に分離されている。
② 法人と経営者の間のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えていない。
③ 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
④ 適時適切に財務情報が提供されている。
上記の4条件をすべて満たすことは多くの中小企業にとって、正直なかなか難しいところです。しかし、上記の4条件を満たすことに取り組み、経営を改善していくことは、経営の健全化、経営強化につながることです。その結果「経営者保証」も外せることになります。
余談ですが、ある顧問先の社長さんが、当社のセミナーの翌日、早速、銀行に出向き、交渉の後、見事に保証を外してもらいました。銀行の担当者からは、「誰からこの制度を聞きましたか?当行の当支店では第一号の適用になります。」と言われたそうです。その後も何社かの経営者が保証を外してもらっています。いずれの顧問先さんも上記4条件をすでに満たし、さらに経営強化に努めているところでした。この保証問題は事業承継をする場合にも非常に重要です。何故なら多額の債務の個人保証をしている先代を見て、なかなか事業承継に踏み切れない後継者も多いからです。円滑な事業承継のためにも更に事業に磨きをかけ、後継者が個人保証をしなくても良いような会社にし、次世代に引き継ぎたいものです。我々も引き続き後方支援させていただきます。
2018年8月31日(金) 著 者 税理士 千葉 和彦