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2017年12月27日 (水)

自社株の評価が高すぎて、打つ手がない!

「自社株が高くなりすぎていて、打つ手がない。」と途方に暮れていた経営者の方にとって、まだ詳細は決まっていないが、今回の事業承継税制の改正は朗報だ。

 農家には大きな納税猶予の制度があるのに、何故中小企業の納税猶予制度は、条件が厳しい上、猶予額も少なく、使い勝手の悪いものなのかと常々疑問に思っていた。中小企業の自社株式は農家の田んぼや畑と同じものだ。事業を続ける限り持ち続けなければならず、上場株式のように売却して現金化などできないのだ。

 自社株対策と言えば、「できるだけ株価評価を引き下げて後継者に移転する。」のが原則だ。株価評価を引き下げるには、まず利益を引き下げなければならない。そのためには戦略的に損金を作る必要があった。そこで役員退職金の支給、オペレーティングリースや保険の活用で損金を作り、その期の利益を引き下げる。

 しかし内部留保がたっぷりある会社には効果が薄い。それではとそこで借入をし、不動産投資を行う。3年間待てば評価が下がり、ある程度の効果は見込める。

   こうしてあれやこれや試してみるが、それでも老舗の優良企業の株価は、おいそれとは下がらないのが現実だ。しかも血のにじむような努力で、やっと少し下げたのに後継者が、いなかったり、いてもまだ株式を渡すには早かったりと、後継者問題がつきまとう。何とも頭が痛い話だ。

  そこでそのような時のために、持株会社を作り、そちらに譲渡しておく手法がある。この持株会社は通常は株式会社が常道だが、株式会社ではその資本金の相続の問題がいつまでも付いてくるので、この持株会社を少し工夫して一般社団法人にする。

   一般社団法人に自社株を売却しておけば、後継者が決まった段階で理事長交代により、簡単に承継することができる。しかも最大の効果は、一般社団法人に自社株を入れてしまえば、そもそも一般社団法人は資本金のない会社だから永遠に自社株の相続の問題から解き放たれるという夢のような話だ。

   ところが今回この夢のような話にも一般社団法人の理事がほとんど親族の場合は一般社団法人に入れた財産にも相続税をかけようという規制が入りそうだ。しかし、ここで誤解してならないのは、一般社団法人そのものが否認されるということではないことだ。一般社団法人は、家族信託の受託者としても大いに活用できるし、株式会社と同じくどんな営利事業でもできるのだ。一般社団法人は、使い方次第で、まだまだ活用の余地は大きいと思う。

 事業承継に取って一番鍵になるのが何と言っても、この自社株の引き継ぎだ。いかに税負担を少なく、しかもスムーズに後継者に引き渡せるかが命運を握る。来年はこの事業承継税制が使い勝手良いように改正される。しかし10年という期間制限つきだ。

  今まで株価が高すぎてどうしようもないと自暴自棄になっていた社長もこの機会に自社の事業承継を見直すチャンスだ。上手に自社株を引き継げれば、100年企業への仲間入りも決して夢ではない。国もそのような会社が一社でも多くでてきて未来永劫税金を払ってくれることを望んでいるのだ。諦めずに知恵を出すことで、必ず未来は切り開けるものと確信している。

  経営者の皆さん今年も一年間本当にお世話になりました。来年もよろしくお願いします。


2017年12月24日(日) 著 者  税理士   千葉 和彦 

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