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2017年10月31日 (火)

会社の出口戦略②

 前回のエッセイでは、会社の出口は、5つしかないことを話しました。それは、①上場②親族あるいは社員等への事業承継③M&A④自主的廃業による解散、清算⑤倒産です。

  人間に寿命があるように会社にも寿命があります。ですから、早い時期からこの出口を見据えた経営が必要なのです。その中でも①は全企業の0.1%だけが成し得る特別なケース、⑤は当然避けなければならないケースと考えると、地元中小企業の出口は②~④に絞られます。

  しかし、選択はしたくないものの⑤の倒産に追い込まれることもあり得ます。暢気に構えていると、多くの関係者に迷惑をかけるだけでなく、会社資産は勿論のこと、個人資産もすべて失い路頭に迷うことになります。信用も失墜し、家族まで失い、失意のうちに老後を送ることになるかもしれません。最悪の場合でも、こうなることだけは避けなければなりません。そのためには、社長自身の早い決断と専門家への相談が重要です。

 倒産すると、ほとんどの経営者が住み慣れた自宅まで失ってしまうケースが多いようです。専門家の多くは、自宅にこだわることは無意味と言いきる方が多いようですが、私は倒産した経営者の最後の砦としても、自宅を残すことは意義のあることと考えます。

  それは経営者の老後の心の支えになっていくものだからです。永年住み慣れた自宅と年金があればなんとかなるのです。多くの経営者は会社の債務の連帯保証人になっており、大抵の場合、社長の自宅には、会社の金融機関からの借入金の担保がついています。例えば時価3000万円の自宅に5000万円の金融機関の担保がついているのです。もし、倒産の危機を感じたら、金融機関の了解を得て、自宅を親戚や知人等に時価で購入してもらう工夫をし、自分たちは家賃を支払い住めるようにします。何年後かには、自分の子息などが買い戻すこともできるかもしれません。

  親戚等に資金がない場合は、ローンを組んでもらう方法もあります。表札も何も変わりませんから近所の方々に知られることもありません。わざわざ謄本を取って誰が所有者かなどと調べる物好きもいないからです。金融機関が、この自宅を競売にかけても落札価格は時価の70%が相場であることや長い年月がかかることを考えれば、理論的にも最大回収が使命の金融機関としては、担保をはずしてくれる可能性が高いと思います。いずれにしても、この仕組みを実行するには、日頃から金融機関、親戚と良好な関係を結んでいることが前提になることは言うまでもありません。
 

 創業して10年で80%が消えると言われている変化の激しい経済環境の中で、出口として倒産にならざるを得ない場合もあります。そんな時でも最後まで諦めず、専門家に相談するなど出来ることを冷静に進めていきましょう。そうすれば、老後も路頭に迷うことなく暮らすことができるものと確信しています。経営者の皆さん、いつでも応援しています。

  

2017年10月28日(土) 著 者  税理士 千葉 和彦

2017年10月 2日 (月)

会社の出口戦略

   私の顧問している会社が廃業することになり、先日社長と解散、精算の手続きについて打ち合わせをしました。社長は父親から家業を引き継ぐ時かなり苦労をされたようで、この事業は自分の代で終わりと決め、着々と早い時期から準備をすすめてきました。

まずは借入金を極力減らすようにし、その間に社員には退職金を支給し、独立希望の社員には仕入れノウハウを伝え、顧客も一部渡すなどして独立を支援してきました。今期中に在庫が一掃できる見通しも立ちいよいよ解散に向けて着手することになりました。

社長は「私は事業を子供に引き継ぐのは罪悪と考えています。M&Aも嫌いです。私の友人などはM&Aで自分の会社を高く売り、自分だけ悠々自適ですよ。自分がスカウトしてきた幹部社員にも一言も話さず、M&Aの契約成立後は一切かかわらないのですからね。社員は浮かばれませんよ。」私もM&Aのお手伝いをしたり、進めたりしていることから社長の言葉が心に突き刺さりました。

先日も当社の関与先さんが、M&Aをしたばかりだからです。この社長にも事前にかなりの葛藤がありました。それは、やはり社員のことです。

しかし、自分の子どもは跡を継がないことが決定しており、5年~10年後考えた場合、社員のためにもM&Aをしようと決意したのでした。社員の福利厚生が悪くなったりしないように進めたのは勿論、事前に幹部社員とも十分な打ち合わせを重ね、納得の上で進めました。そのためにも自分も5年間は代表権を持たない会長という形で残り、引き続き支援していく内容でした。

   日本の社長の平均年齢も約62歳になりました。しかし、そのうち後継者が決まったのは約3分の1だけです。残りの3分の2の企業は後継者が決まっていないのです。事業承継対策は早いほど良いと言われています。

従って、社長は現実から目をそむけず、この問題と向き合うことから始めなければなりません。会社の出口は、5つあります。①上場②親族あるいは社員等への事業承継③M&A④自主的廃業による解散、精算⑤倒産です。人間に寿命があるように会社にも寿命があります。早い時期からこの出口を見据えた経営が必要です。

   例えばM&Aをするにしても相手のあることですから、時間がどのくらいかかるかわかりません。その間に後継者が出てきたら②の方法に切り替えることも自由です。

いずれにしましても早い時期での取り組みがポイントです。①は全企業の0.1%ですから、かなり特別のケースですし⑤は当然避けなければなりません。そうしますと、結局我々中小企業の出口は②、③、④に絞られるのではないでしょうか。

私は、いずれの方法も良いと考えています。問題は、その取り組み方です。会社を取り巻く関係者(販売先、仕入先、銀行、官公庁、株主、従業員、地域社会そして自分自身・・経営者です。)にいかに迷惑をかけず、幕引きができるかです。

それには、①自分の会社の出口から決して目をそむけないこと。②一日でも早く取り組むこと。この2点に絞られるのではないでしょうか?出口を考えるきっかけは、やはり「経営計画」を立てることです。

自社の5~10年後、更に10年後~20年後の延長線上には必ず、この出口の問題があるからです。是非経営者の皆さん「経営計画」を立てることから始めましょう。応援しています。

2017年 9月29日(金) 著 者  税理士  千葉  和彦

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