そろそろ本気で事業承継を考えないと!
8月のオーナーズセミナーでは、良くあるケースとして下記の事例を取り上げました。
【事例】
『私の父は、製造業を営むA社のオーナー経営者です。いわゆるワンマン経営者であり、年齢は70歳になりますが、常に生涯現役を言葉にしており、事業承継のことは一切口にしません。私は、息子で専務という肩書きはあるものの、経営に関する権限は一切なく、従業員の一部は、会社の将来を心配しているという声も耳にします。
また、同業他社の二代目同士でよく会社の株価や相続税の話題があがりますが、実際A社株の株価が今いくらで、ましてや父の相続税がいくらになるか分からない状況です。さらに父個人の土地建物がA社の本社としての事業用財産になっています。
したがって、他の二人の兄弟との遺産分けのバランスについても悩みどころです。しかし、当然、父にもそのような話を一切口にすることはできません。』
上記のようなケース、多いのではないでしょうか?まず私が最初に思うのは、A社の社長は、一番大事な社長業をしていないということです。
何故なら、社長というのは何はともあれ自社の将来について常に考えている人のことを言うからです。この社長は自社の5年後~10年後についてじっくり考えているように思えません。
自分の年齢と自社の将来を考えた場合、必ず後継者問題が浮かんでくるはずです。社長業で大事な仕事は、経営計画を立てることです。そうすれば、必ずその延長線上に後継者問題があるはずです。
まず、A社長は後継者を決めることが大事です。そして、自社の株価評価は勿論ですが、個人的な財産も棚卸して自身の相続税のシミュレーションをするべきです。自社株の評価が高ければ、その対策を早急に検討しなければなりません。
いくら対策を早急にしても評価が下がらない場合には、平成25年度の改正で、以前より使い勝手が良くなっている「事業承継税制」の活用を考えましょう。
また後継者は決まっているが、まだ自分が現役中は、経営権を持っていたい場合や後継者候補が複数いて後継者を決めきれない場合は、一般社団法人に持たせておくといいと思います。あるいは信託を活用する方法もあります。信託を活用しますと、株式そのものは移動させても、経営権だけ自分に残しておくことが可能です。
「自分の目の黒いうちは、経営権を持ち続け、目を光らせておきたい。」時に、威力を発揮します。また上記の事例のA社長のように、相続財産が事業用財産と自社株しかないような場合は、事業を引き継がない他の相続人に対する遺留分対策も重要です。
自社株式と事業用財産はすべて後継者が相続できるように遺言してあげ、事業を引き継がない他の相続人に対しては、後継者受取人の保険に加入したり、あるいは相続した自社株式を自社で買い取れるようにしておき、後継者が代償金として現金を支払うことができるような仕組みを作ってあげておくことが重要です。
いずれにしても、A社長は、原理原則に戻り、本来の社長業である将来像をしっかり描いていきましょう。応援しています。
2017年8月29日 著 者 税理士 千葉 和彦
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