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2016年8月30日 (火)

捨てられる銀行

   先月末、当社の顧問先の社長にお会いした時の話だ。一通り打ち合わせが終わると「先生この本読まれましたか?」とある本を差し出された。

それは、講談社から出版された橋本卓典氏著作の「捨てられる銀行」という何ともセンセーショナルな題目の本だった。

はずかしながらその本の存在すら知らなかったので、早速購入し、お盆中に読んでみた。なかなか興味深い内容なので是非一読をお勧めしたいと思う。その中である地銀の話が出ていたので、ご紹介したい。以下引用である。

 ある医療法人が地元の地銀2行に利益改善策を提案するよう求めた。すると、A行は医療法人に対して試行錯誤しながら改善提案をしてきた。もう一つのB行は、貸出残高ではA行を上回るメインバンクであったが、支店長が医療法人からの依頼を甘く見たのか、要請を放置した。営業目標への貢献にも繋がらないだろう。余計なコストを負いたくないという思いもあったろう。

 しばらくして、医療法人からB行に通告が入った。借りている全額をA行に移すと。メインバンクの交代だ。しかも地域金融の視点に置いては看過できる融資額ではない。文字通り激震が走った。

思わぬ医療法人の行動に面喰ったB行は慌てて本部に報告し、本部から担当役員が飛んできて医療法人に謝罪し、メインバンク変更の見直しを求めたという。それでも医療法人は、クビを縦に振らなかった。

事態の重大さから、後日、ついにB行の頭取自らが医療法人を訪問したという。B行としては最大限の誠意を示したつもりだろう。B行の頭取は医療法人の理事長に対し、「どうか考え直していただきたい。そうでないと私は支店長を更迭しなければならなくなる。」と、支店長のクビはあなたの一存にかかっていると言わんばかりに理事長へ翻意を促した。

すると、理事長はため息をついて言った。「あなた方はいつもそうだ。何も分かっていない。顧客の方を見ていない。私は利益改善提案をお願いしたのに、提案はせずに、いまだに部下の更迭せざるを得なくなるとか、困るとか自分の話ばかりされる。私たち客には何ら関係のない話だ。だから私はメインバンクを変更するとお伝えしたのです。」
 

今日お会いした社長が笑いながら話していたことも、上記の事案と関連して考えさせられた。それは、いつもお願いしている保険代理店に資料を郵送してもらった時のことだが、何と切手が貼り忘れていたそうだ。

そこで代理店の社長に話したところ、その社長曰く「その日はあいにく事務員が休んでおり、あなたが大変急いでいるようでしたので、不慣れな私が自ら作業をしたため、切手を貼り忘れたのです。」という返答だったそうだ。

これもまさしく顧客目線の欠如と言わざるを得ない。処理をしたものが、新人だろうが社長だろうが、顧客には何の関係もないことなのだ。私もサービス業を営む者として大いに反省させられた。

顧客目線とか顧客満足を語る人は多いが、本当の意味での顧客目線というものを、いつも考えながら仕事をしていかなければならないと肝に銘じた事案だった。 

2016年8月29日(月)著者 税理士 千葉和彦

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