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2016年7月 6日 (水)

過大設備投資

  第79回の「将軍の日」が昨日終了した。「将軍の日」とは社長が一日じっくり考え、5か年計画を立ててもらう日だ。

当社のスタッフも事前準備やら当日の対応で苦労しているが、一日の研修が終わり、社長さんから「勉強になったよ。ありがとう。」と言ってもらえることが最高のご褒美である。その帰りの笑顔を見た時、疲れも吹き飛ぶからだ。

   将軍の日にお誘いすると一番言われるのが「うちの業界は先のことは予測できないよ。」という言葉だ。我々は神でも占い師でもないのだから当然将来のことはわからない。

しかし、「経営計画」とは将来を予測するものではなく、社長自身のあるいは会社の「目標を設定」することだということを再度確認してもらいたい。

そして、この場合の目標は現在の延長線上に存在するものはない。あくまでも必死に自分が努力しなければ達成することのできない「目標」こそが、ここでいう「目標」なのだということを肝に銘じておかなければならない。

現在の自分では無理に思える「目標」も将来達成するのは、今の自分ではなくその目標実現に向けて努力し続け、成長した自分であるのだから決してあきらめてはならない。

   今回は、5年後の売り上げを現在の半分くらいにした計画を立てられた社長がいたが、これはここでいう「目標」からかけ離れたものだ。その社長には、もう一つ高い目標を掲げた経営計画も別途作成することを勧めた。

何故なら、そうしないと、5年後売上が半分になる計画の通りになってしまうからだ。将来とは思い描いた自分の強いイメージどおりになることが多いからだ。

その社長は、きっと厳しい業界なので5年後にたとえ売り上げが半分になっても生き残れる会社にしようと思って作った経営計画だと思うが、その計画のイメージだけだと会社はその通りになってしまうのでそれを避けなければならない。

   売り上げをシビアにみた計画が必要なのは新たな設備投資を行う場合である。売り上げが上昇して社長はじめ社内全体がイケイケムードの時、それに異を唱えることが一社員ではできない。そんな時こそ経理部の出番だ。

まずは、その設備投資で社長が考えているように売り上げが上がるケースの計画を作るのは当然だ。それによると設備投資の借り入れも順調に返済され、資金も残る計画になるはずだ。おそらく社長の頭の中はこの計画で一杯のはず。

しかし、その計画だけではなく、売り上げが伸びず現状維持の場合の計画と売り上げが急激に減少した場合の計画も作成し、社長に淡々と情報としてそれらの計画を示さなければならない。社長はその情報をもとに考え直すはずです。

倒産の大きな要因の一つである過大設備投資は、思い切って設備投資したものの予想していた売り上げが上がらなかった時に資金がショートすることで生じるのだ。

多くの場合最初の計画だけで設備投資を行い、その計画通りに行かなくなって会社が資金繰りに異常をきたし、破たんに追い込まれるのだ。

最悪の計画の場合でも資金が回るという前提のもとに設備投資は判断しなければならない。そうすれば少なくとも過大設備投資での倒産は避けられる。

予測できない外部環境の悪化で窮地に立たされた時でも資金が回る計画をしっかり立てて設備投資をしていこうではありませんか。

2016年6月29日(水)   著 者 税理士  千葉 和彦

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