« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »

2016年7月29日 (金)

JPBM永年表彰に参加して

  震災後久しぶりに、東京のJPBMの全国統一研修会に出席した。何故なら本部より永年会員の表彰をしたいので、今回の大会には参加してほしいと何度も連絡をいただいたからだ。会場では、懐かしい会員に再会することができ、とても有意義な東京出張になった。

このJPBMとは「日本中小企業経営支援専門家協会」のことだ。あまりにも長たらしい名前なので簡略化して言われている。

会の趣旨は中小企業の経営支援を9士業(公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、弁護士、不動産鑑定士、弁理士、技術士、司法書士)で連携していこうというものだ。

前身は「日本事業承継コンサルタント協会」で当初は税理士、会計士のみで相続・事業承継の勉強会や実践を行っていた。私はその時からの会員で、毎月事業承継問題の勉強会に出席していた。

その後、中小企業の事業承継、経営支援は税理士、会計士だけでは対応が難しいということで今回の会ができたのだ。約300名の会員がおり、日本最大規模だ。全国に会員がおり、情報を交換しながらお互い切磋琢磨をはかっている。

私も、震災前には度々出席していたが最近はご無沙汰していた。久々にお会いした専務理事に「ただ会費を払い続けた会員なのに表彰はお恥ずかしい限りです。」と話すと「そのような会員も会では重要ですよ。」と冗談を言って慰めてくれた。

 分科会では農業の6次産業化に取り組んでいる方の話を聞くことができた。6次産業化とは、農業や水産業などの1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す。このような経営の多角化を6次産業化と呼んでいる。

すなわち農家などの生産者が作ったものを自ら加工し、販売まで行うということだ。極端な成功例ではタレントの田中義剛さんの北海道の花畑牧場「生キャラメル」をイメージしていただけるとわかりやすい。

しかし、実際に農家の方だけで手がけることはリスクが高すぎる。そこで加工、販売のプロと連携することが重要になる。

会場には福島から(株)フルーツファームカトウの加藤さん、農業生産法人スワンドリームの三浦さん、福島の食大学の鹿野シェフが参加していた。

加藤氏は、土壌にこだわり化学肥料は使わず独自の酵母土を30年かけて生み出した。その土から生まれる吟壌桃(土壌の壌を使うほど土に大きな思いれがある。)はまさしく別格のとろけるような甘さだった。サクランボ、リンゴもその土で生産している。そこで加藤氏は一昨年、りんごを使ったお酒にも挑戦し、見事なシードルを作り上げることに成功した。

しかし昨年、3000本分のシードルを世に出すため、生産委託をある醸造所にお願いしたところ、これが大きな悲劇を生んでしまったのだ。

その醸造所にシードル生産のスキルがなく、暖冬の影響もあったのだろうか、腐敗臭のする失敗作となってしまったのだ。「約3トンのリンゴを台無しにしてしまった。」(加藤氏)という。

更に悪いことに、醸造所との間の契約はきちんとできておらず、その出来栄えに対し、何の保証もなかった。加藤氏は「醸造所も自分でやるべきだ」と決意した。

現在JPBMのネットワークの支援で醸造所建設に向けて事業計画が進められている。「イタリアの何もない片田舎に、キノコ料理だけを食べに世界中から人が集まる場所があるんですよ。うちの農園にもシードルや果物を楽しんでもらえる場所を設けて世界中から人が来る場所にしたいですね。」と加藤氏は夢を語っていた。

我々会員はその夢の実現に向けて一緒に関わっていきたいと思う。 

2016年7月27日(水) 著 者   千葉 和彦

2016年7月 6日 (水)

過大設備投資

  第79回の「将軍の日」が昨日終了した。「将軍の日」とは社長が一日じっくり考え、5か年計画を立ててもらう日だ。

当社のスタッフも事前準備やら当日の対応で苦労しているが、一日の研修が終わり、社長さんから「勉強になったよ。ありがとう。」と言ってもらえることが最高のご褒美である。その帰りの笑顔を見た時、疲れも吹き飛ぶからだ。

   将軍の日にお誘いすると一番言われるのが「うちの業界は先のことは予測できないよ。」という言葉だ。我々は神でも占い師でもないのだから当然将来のことはわからない。

しかし、「経営計画」とは将来を予測するものではなく、社長自身のあるいは会社の「目標を設定」することだということを再度確認してもらいたい。

そして、この場合の目標は現在の延長線上に存在するものはない。あくまでも必死に自分が努力しなければ達成することのできない「目標」こそが、ここでいう「目標」なのだということを肝に銘じておかなければならない。

現在の自分では無理に思える「目標」も将来達成するのは、今の自分ではなくその目標実現に向けて努力し続け、成長した自分であるのだから決してあきらめてはならない。

   今回は、5年後の売り上げを現在の半分くらいにした計画を立てられた社長がいたが、これはここでいう「目標」からかけ離れたものだ。その社長には、もう一つ高い目標を掲げた経営計画も別途作成することを勧めた。

何故なら、そうしないと、5年後売上が半分になる計画の通りになってしまうからだ。将来とは思い描いた自分の強いイメージどおりになることが多いからだ。

その社長は、きっと厳しい業界なので5年後にたとえ売り上げが半分になっても生き残れる会社にしようと思って作った経営計画だと思うが、その計画のイメージだけだと会社はその通りになってしまうのでそれを避けなければならない。

   売り上げをシビアにみた計画が必要なのは新たな設備投資を行う場合である。売り上げが上昇して社長はじめ社内全体がイケイケムードの時、それに異を唱えることが一社員ではできない。そんな時こそ経理部の出番だ。

まずは、その設備投資で社長が考えているように売り上げが上がるケースの計画を作るのは当然だ。それによると設備投資の借り入れも順調に返済され、資金も残る計画になるはずだ。おそらく社長の頭の中はこの計画で一杯のはず。

しかし、その計画だけではなく、売り上げが伸びず現状維持の場合の計画と売り上げが急激に減少した場合の計画も作成し、社長に淡々と情報としてそれらの計画を示さなければならない。社長はその情報をもとに考え直すはずです。

倒産の大きな要因の一つである過大設備投資は、思い切って設備投資したものの予想していた売り上げが上がらなかった時に資金がショートすることで生じるのだ。

多くの場合最初の計画だけで設備投資を行い、その計画通りに行かなくなって会社が資金繰りに異常をきたし、破たんに追い込まれるのだ。

最悪の計画の場合でも資金が回るという前提のもとに設備投資は判断しなければならない。そうすれば少なくとも過大設備投資での倒産は避けられる。

予測できない外部環境の悪化で窮地に立たされた時でも資金が回る計画をしっかり立てて設備投資をしていこうではありませんか。

2016年6月29日(水)   著 者 税理士  千葉 和彦

« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »