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2016年5月 6日 (金)

相続税なんか払えるか!

  昨年、相続税の基礎控除が4割引き下げられてから、急に相続の相談が増えてきた。

まずは電話で状況を伺いながら、明らかに基礎控除以下の場合は「安心して下さい。今お聞きした範囲では相続税の基礎控除以下なので相続税の心配はいらないようですよ。」とお答えしている。

一般の方の間に不安が広がってきているように感じる。また申告義務があるのに気付かず、申告しない人が急増し、後日加算税、延滞税で苦しむことになるのではないかと危惧している。

   ある国際コンサルタントの富裕層向けセミナーに出席したときのことだ。

「知恵を使えば相続税なんか払わなくても大丈夫です。日本の税制が合法的にその方法を認めてくれているのです。」講師の声が会場に響いた。会場は一瞬シーンと静まりかえった。

講師は続けた。「お父さんと息子さんが5年を超えて海外で暮らし、お父さんが息子さんに贈与してやれば税金はかかりません。簡単な仕組みです。」と。会場がざわめいた。

聴講しているどこかの社長のような人が声を荒げた。「先生そんな非現実的なことを我々は聞きに来ているのではないですよ。もっと真剣に教えて下さい。」と。講師は続けた。「私は真剣に皆さんにとっておきの方法をお話ししているのです。何が非現実的ですか。今や一国内だけでは節税に限界があるのです。」

   講師の方と個人的に講演後話してみると、講師の方曰く「私の顧客は資産30億円以上の方ばかりです。今日は私の対象とする顧客ではなかったようですね。」と高飛車に語った。

相続税はかかるがそれくらいの資産家の方はほとんど地方にはいない。相続税を申告する人の70%は総資産3億円以下ということを見ても明らかだ。主催者は講師の選定を誤ったように感じた。

講師は続けて私に話した。「日本は1000兆円以上の借金を抱えているのですから、いつ破綻するかわかりませんよ。その意味でも国外脱出を一つの選択肢にしておいた方が良いと思いますよ。」と。

講師の方の話も分からないではないが、多くの人は言葉の壁、現実の仕事、家族を抱えて毎日を必死で暮らしているのだ。講師の方の話は現実的ではないように思えた。

   そのように考えてくると今回のような増税は富裕層にはなんの痛手も与えず、仕事や家庭を抱え、この国で地を這うように生きているまじめな中間層を痛めつけるだけではないだろうか?

それは昨今話題になっているパナマ文書の「タックスヘイブン」を見てもわかることだ。その文書に出てくる人の名前は我々庶民とは、かけ離れた桁違いの富裕層である。しかもその人たちは、税金を免れているのだ。

たとえ合法的であっても感情的にはやるせない気持ちに多くの庶民はなっているのではないか。そして真面目に税金を払うことがばからしくならないことを祈るばかりだ。

真面目に仕事を国内で一生懸命頑張っている人たちが報われる世の中になってほしいものだ。

2016年4月25日  著 者    税理士   千葉 和彦

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