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2016年3月30日 (水)

一般社団法人は魔法の小箱

  最近は一般社団法人設立の相談が急に増えてきた。そもそも一般社団法人や一般財団法人というと公益性の高いイメージが強く、認可も難しそうと誰もが思ってしまうようだ。

もちろん公益性の高い社団法人は今まで通り認定基準が厳しく難しいのだが、平成20年12月に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が新たに施行され、これらに関しては、誰でも簡単に設立することができるようになった。

税制上も普通法人と変わらずもちろん何をしても自由だ。しかし、こんなにも注目を受けるようになったのはなぜだろうか?

   一番の特徴は、いずれの法人も「出資持分」という概念がないことにある。一般社団法人は「社員2名と理事1名」という最小の機関設計で設立できる。社員と理事の立場が重なっても構わないので、二人いればOKということになる。

一方、一般財団法人は評議員3名理事3名監事2名が必要であり、中小企業ではこれだけの人数をそろえることは難しいことから、一般社団法人の方が使い勝手が良いと言えるだろう。

 自社株の評価が高い優良なオーナー会社の中には、金融機関から持ち株会社の設立を提案され、実行されたところもあるだろう。この自社株対策の手法は、すでに後継者が決定済みの場合や将来M&Aを考えている会社には向いている。

しかし後継者が未決定の場合や先代で自社株対策について頭を悩ましたため、今後、未来永劫考えたくないという人には今ひとつ解決できない問題を残してしまう。

何故なら持株会社も普通の株式会社なので当然株主が存在し、将来も同じように株式の問題がつきまとうからだ。この問題を解決したいのであれば一般社団法人の活用が向いていると考える。

 ところで、この一般社団法人には、将来値上がりしそうな不動産を入れておくことができる。(具体的には個人資産を法人に売却して移転する。)将来不動産の評価が上がって含み益が発生しても持ち分がないので株価の心配をすることはない。

また逆に、将来誰も相続したがらないような不動産を入れておく活用法もある。株式会社のような「出資持分」がある法人であれば、移転したオーナーの不動産という資産は、自社株という資産に姿を変えるだけで相続財産であることに変わりはない。

しかし一般社団法人に移転した不動産はオーナーの相続財産から外され、将来相続が発生しないことになる。相続に困るような資産まで移転することができるので、この法人を「ゴミ箱」と揶揄している専門家が多いのもうなずけるが、活用次第では「魔法の小箱」とも言えるのではないだろうか。

 最近の事例では、委託者である父親が高齢ということで、この一般社団法人を信託の「受託者」として活用したものがある。受託者を法人にすることで、個人の受託者の死亡リスクを避けることができる。

また、会長に万が一の時は次の受益者を息子さんに指定したので、遺言の代用も兼ねることができることになる。

しかもその場合は受益権の引き継ぎなので、名義書換の手数料も最少で済む。まさしく一挙両得と言える。あまり虫の良い話なので、将来の規制強化や改正を心配する声も多い。

確かに、それに備えたリスク防衛は必要だろう。それにはこの「一般社団法人」を単なる一族の相続税対策や節税対策に利用するだけでなく、本業とは別に社会貢献の目的を加え、実践してはいかがだろうか?

社会に役立ちながら、一族の繁栄も維持できる。それでこそ、この「一般社団法人」は私に言わせれば「魔法の小箱」なのだ。

2016年3月28日 著者 税理士 千葉 和彦

2016年3月 2日 (水)

決算対策について

  日本の法人は、全法人の約20%が3月決算に集中している。そこで今回は、長期的な節税効果も踏まえた決算対策について考えていきたい。

[大きく黒字がでる場合]

① まずは実効税率35%くらいの税金をそのまま支払う方法である。(実効税率には当然消費税は含まれない)まさしくこれは、自己資本比率を高める王道と言えるものだ。それにしても最低必要な消耗品、備品など30万円未満のものは3月中に購入しておくこと。

② 生命保険、セーフティー共済へ加入する。1年分を前払いにすると地代家賃同様その支払った期の損金になる。その分所得が減るので税金も減る。しかし、将来解約した時に益金に計上されるので節税というより利益の埋め込みとか利益の繰り延べと言われる。しかも実務上は継続して年払いを続けなければならないし、税金が減る分より現金がでていくので、資金繰りに注意が必要だ。

③ 決算賞与、役員退職金を支給する。
期末に決算賞与を従業員に出した場合は全額損金になる。しかし、業績が悪い期は出せないので、皆で頑張って業績が伸びたら出るというような従業員の理解が必要である。丁度世代交代期にさしかかった会社は、社長が退職金を取り、勇退するチャンスでもある。退職金は大きな金額になるので、大きな損金を計上できる。しかも退職金にかかる税金は金額にもよるが、低い税率で収まる。しかし、会社から大きな金額が出ていくので資金繰りが逼迫する恐れがあるので気をつけたい。また、昨今は社長が退職しても現役の時と変わらぬ働きぶりで退職金が否認されている事例が多発しているので、退職した後は、経営は新しい社長に任せ、自らは経営には参画せず、一線を退くことが重要だ。

④ オペレーテングリースの活用
これも節税というより課税の繰り延べというもので、飛行機、船、コンテナ等へ出資することで出資した匿名組合から出資分に応じて減価償却等の損金を分配される。投資額は2年間ほどで、損金に計上でるので、その効果は大きい。しかし、リース終了時に一度に益金が計上されるし、途中解約ができないというデメリットもある。

⑤ 含み損を出す。
含み損を抱えた土地などあったら、社長に時価で買い取ってもらう。別会社で買い取るとグループ税制があるので、損金が計上できない可能性があるので、注意が必要だ。
面倒でも適正な時価かどうかが勝負の分かれ道なので不動産鑑定士に評価してもらう。

⑥ その他、設備投資等をした場合は特別償却や即時償却を取れる場合があるので、忘れずに活用しよう。

以上紙面の都合で利益が出た場合の対処法だけ書いてきたが赤字になりそうな場合も役員借入金を免除してもらう方法や、保険や土地の含み益を表に出す方法で赤字が有効に活用できる。

どうしても赤字が避けられない場合は翌期株価が下がることが予測されるので、株価を異動させるチャンスでもある。

悪い面ばかり見るのではなく、赤字でさえも有効に活用していこう。

すなわち、結論から言えることは、どんな状況にあっても決して諦めず考え続けることではないだろうか。

2016年2月27日(土) 著者 税理士 千葉 和彦

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