仕事を通して自己の成長を!
私は学生時代「マルクス経済学」を少しかじっていました。マルクスの理論に「労働価値説」があります。製品や商品を作るために汗を流し、労働した量、すなわち投入した時間がその商品の価値を作るというものです。私も学生時代は何の疑いもなくこの理論を信じていました。
しかし、社会にでてみると現実は違っていました。徹夜で努力し作った商品も売れるとは限りません。売れるのは購入者が自分にとって役立つと考えた時、しかも値段は顧客自身の満足度と合っているときです。
顧客にとっては、その商品のコストなど関係ないのです。ましてや、その商品に投入された労働時間など興味もないし、知る必要もないのです。
家具が欲しくて店に行き、見て気に入った時、その家具が職人の熟練した手技とかなりの労働時間をかけて作られた一品物であろうと、全自動の機械で作られた量産ものであろうと、自分が気に入れば購入するのです。どのくらい労働時間が投入されたかなど顧客は気にもしないのです。
そのことにマルクスも気づいていたからこそ「商品から貨幣への命がけの飛躍」などという表現をしていたのではないかと私は個人的に思っています。
しかもマルクスの考え方でいくと労働は生活のための手段、苦役でしかなくなります。人生の多くの時間を占める労働が苦役ではつまらない人生になるのではないでしょうか?
人間の幸せは自己の成長を実感することでしか得られないものです。ならば人生の多くを費やす仕事を通して自己を成長させてはいかがでしょうか?
すなわち、それは、いかにしたら顧客が満足してくれるかを自己の仕事の中で追及することです。必死で考え、実行し、顧客に喜んで購入してもらえた時以上の幸せはないと思います。しかもその時、自己の成長を実感できるはずです。
今年の新春セミナーでは、博多の歴女として有名な白駒さんを講師にお呼びしました。白駒さんは、元スチュワーデス。
顧客サービスでコーヒーを出すにも、機内で出す珈琲は豆も入れ方も選択できない。しかし、たった一杯のコーヒーでもその出し方一つで「たかが一杯のコーヒー」から「されど一杯のコーヒー」に変わることができると話していました。
山形新幹線の車内販売員の齋藤泉さんは、通常の販売員が東京~山形間で平均8万円の売り上げのところ26万円強も売り上げます。
驚くことに、本も出版され、講演に呼ばれ全国を飛び回っている現在も時給のパート契約で在職中です。齋藤さんは「偶然の出会いだからこそ心地よく過ごしていただきたい。」そのためにはどうしたら良いかを自分なりに必死に考えたそうです。
また「人生の多くの時間を費やす『仕事』を愉しめないのは実に『もったいない!』と思い、どうしたら「その現場でのスペシャリストでいられるか」を軸に、プロとしてひたむきに仕事に向き合い続けているそうです。
お二人の話を伺っていると今の環境に感謝し、目の前の仕事に本気で向き合う・・たとえそれがコピー取りでも・・そしてその分野でのプロを目指せば自己の成長につながるということでしょうか。それよりも何より周りがほっておきません。お二人とも講演で大忙しのようです。
お二人を見習って今年は目の前の仕事に全力投球しましょう。
2016年1月30日(土) 著者 税理士 千葉 和彦