「遺言」にかわる「家族信託」
相続税法の改正により、基礎控除が減り、相続税の課税対象者がかなり広がった。そのためマスコミ等でも相続に関する情報の発信を急増させている。
また金融機関、不動産会社は、この改正をビジネスチャンスと捉え、営業マンと大手会計法人の税理士が同行して、事業承継対策や相続対策を切り口に優良な会社に営業攻勢を強めている。
実際、私の関与先さんや知り合いの社長の会社にもアプローチが始まっているようで、「先生、先日こういう人が来て、事業承継の話していきましたよ。」と名刺を見せられることが最近多くなった。苦笑いをしながら話を聞いてみると営業マンのほとんどは、地元出身ではなく、転勤族だ。
以前、私の知り合いも同種の提案をされて、対策を実行したのだが、その対策では効果がないことが後日わかり、クレームをつけたが、「前の担当者は転勤してしまい、当社では対応しかねます。」という返答だったそうだ。規模も大きいため、投資額もそれに付随する税金も莫大である。
それが「おたくが決めたことだから」「担当者が転勤したから対応できない。」では憤懣やるかたない。手前味噌になるが、相続対策や事業承継は長い付き合いになるので、常に顔が見える地元密着が一番だ。
やはり、地元に腰を据えて、逃げも隠れもできない金融機関や、会計事務所に相談するのが良いと思う。
話しは変わるが、私の関与先さんに今年で95歳になるが、まだまだ頭もしっかりしていて、お元気な会長がおられる。
私はその方が丁度70歳の時に「相続対策は若い先生に頼みたい」ということで今日まで関与させていただいているが、最近は私も還暦を過ぎ、「どちらが先かわからないね。」と冗談を言い合っている。
節税対策はその時代に応じていろいろご提案し、実行していただいてきたが、ここ数年は「遺言」をどうするかが課題だった。何度頼んでも実行してくれず途方に暮れていた。
相続対策は節税対策も大事だが、それよりも大事なのは、相続発生後の揉めない対策だ。それには、まずは上手な「遺言」が良い。
しかし、その遺言もすんなり書ければ良いが、様々な事情で、そうすんなりとは書けないこともある。しかし、今年になり、その遺言以上の効果のある「家族信託」という方法で課題を一気に解決することができた。
これで会長に万が一のことがあった場合も、次の資産承継者が決められているので、混乱することも揉めることもないのだ。会長の理解を得て、永年の私の課題が解決でき、とても有意義な年にすることができた。
この信託をまさしく「遺言代用信託」という。すなわち遺言と同等、又は契約の仕方でそれ以上の効果を生むことが可能となるのだ。
信託は遺言と同等のまたは、それ以上の効力を生みだしてくれるので、来年はさらにこの信託をすすめていければと決意を新たにしている。
是非同じような悩みの方は遠慮なく一声かけていただければいつでも相談に乗ります。相続対策は早め、早めが一番のコツです。認知症になっては、遺言はおろか、もちろん信託もできなくなるからです。
いよいよ師走です。何かと周りが騒々しくなってきましたが、暦年贈与も年内ですので、まだ実行されていない方は忘れずに実行してください。わからない時は気軽にご相談ください。皆様のご健闘祈ります。
2015年11月28日 著 者 税理士 千葉 和彦
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