マイナンバーの注意点
マイナンバー制度は、行政の効率化、公平公正な社会の実現、国民の利便性の向上を目指して導入された制度なわけだが、その具体的な運用については二転三転している感がある。
先月末(平成27年9月)も急に、平成28年から介護保険の利用や認定などの様々な場面でマイナンバーを申請書に記載しなければならなくなった。
また「償却資産申告書」への個人番号または法人番号の記載も平成28年1月申告分から必要ということも9月30日の地方税法施行規則の改正で明らかになった。
今月(10月)2日には、所得税法施行規則等の改正があり、従来は源泉徴収票も番号が入ったものを給与などの支払いをうけるものに交付することになっていたものが、本人への交付には番号を記入しないことになった。
ナンバー交付の段になってこの調子だ。このようにマイナンバーに関してはここしばらく改正などが続きそうで目が離せない。
私個人としては、源泉徴収票等の支払調書へのマイナンバーの記載は29年1月からなので、焦らず28年度中に番号を集めておけば大丈夫と考えていた。
確かに焦る必要はないが、このように目まぐるしく状況が変化する中では、できるだけ早く番号を集め、体制を早めにしっかり固めておくにこしたことはない。
日本では、初めてのマイナンバーで、落ち着くまでは、今後も試行錯誤が繰り返されそうなので、注意して情報を集めることが必要だろう。
今回のマイナンバーの一番重要なキーワードは、民→民→官だ。これは社員(最初の民)から会社(次の民)へ、会社から役所(官)へということで、あくまでも役所へ提出するためにしかマインバーは取得も保管も運用も廃棄もできないのだ。
従って、源泉徴収票も番号が入ったものを銀行や保育所へ提出してはだめだ。銀行や保育所はいわゆる官ではないからだ。
ビデオショップ店などでも個人番号カードを身分証明書として預かる場合など番号が入っている面をコピーして預かることなどはしてはいけない。まずはこの大前提をしっかり理解してほしい。
2番目のキーワードは、「取得」→「保管」→「運用」→「廃棄」である。
先の説明の通り、すべては「官」に提出するためにしか上記のことは成立しない。官に提出するための取得であり、保管であり、運用であり、廃棄である。
この大前提を忘れてはならない。この基本が理解できればこの一連の流れの注意点をしっかりマークするだけである。
まずは「取得」であるが、この場合のポイントは本人確認だ。運転免許証や個人番号カードでしっかり確認しなければならない。もちろん昔から勤務している社員には必要ない。
保管の注意事項は、①基本方針の策定②取扱規定等の策定③組織的安全管理措置④人的安全管理措置⑤物理的安全管理措置を自社でできる範囲で取り組むということが必要だ。
ただし社員が100人を超える会社はかなりきちんとした管理が要求されているので要注意だ。
①、②の規程等の見本は来月13日、マリンゲートでのマイナンバーセミナーで資料として提供する予定なので、まだ参加されていない方は是非参加して不安を吹き飛ばしていただきたい。
「運用」面は29年度の支払調書への記載から本格的に始まる。
今回のマイナンバーはそれを使用する業務が終了したら可能な限り速やかに、復元不可能な方法で廃棄しなければならないことも今までの書類にはない特徴だ。
通常書類は最低何年以上保管するようにというのが普通だが、逆に法定期限以上は保管してはならないということなので、頭の切り替えが重要だ。
いよいよ始まるマイナンバーだが、基本をしっかり押さえておけば慌てることはないので、是非一緒に取り組んでいきましょう。
2015年10月27日(火) 著 者 千葉 和彦