上手な不動産管理会社の活用
今月の当社のセミナーのテーマだ。いつもはアパート等を所有する地主さん達お馴染みの顔ぶれが集まるのだが、今回は、直接不動産を所有する地主さんだけでなく、それらの方々を顧客に持つハウスメーカーさんや保険関係の方の出席も多く、長年セミナーをしている私としては、少々驚きであった。
昨今の税制の流れは法人税率が下がる傾向にあるが、それ以外の税率は増えてきている。特に不動産所得に課せられる所得税等は増加してきており、事業税も入れると最大でなんと所得の60%を超える税率になる。
そこで不動産管理会社を設立し、所得の分散をし、節税効果を創出し、内部留保をはかろうとするのは経済行為としては、至極自然なことであり、また、こういった法人の活用法は目新しいことではないのだ。
それなのに昨今なぜこの手法が再び新たに話題に取り上げられるのだろうか?それはその法人の形態の選択肢が変わってきたからだと考える。
かつての法人は家族経営ということもあり、ほとんどが有限会社での設立だった。しかし、会社法の改正により、現在新たに有限会社は設立できなくなり、その代り合同会社や一般社団法人の設立が簡単にできるようになった。
では、一体どの法人形態で設立したほうが良いのだろうか?またその活用法は?私のセミナーに様々な業種の方が参加するのは、この次々と新たに発生してくる疑問のためだろう。不動産管理会社の活用法は従来通りの三通りが基本だ。
①不動産管理料徴収方式・・直接不動産を所有せず、不動産管理で管理料を徴収する方法だ。高額な管理料を徴収することで所得の分散を図っていた時代もあったが、それらはことごとく当局の否認を受け、現在は第三者の業者に頼むときと同程度の管理料以外は認められない。
②不動産一括転貸方式・・地主さんから法人が一括借りし、法人が個別に賃借人にまた貸しする方法である。法人は空室リスクを負うので、当然①よりは管理料を取れるが、それにしても取れる管理料は限られる。
③直接不動産所有方式・・文字通り直接不動産を所有するので、家賃収入はすべて法人の売り上げとなるので、もっとも活用がしやすく、一番お勧めの方式だ。
ただし、すでに個人でアパート等を所有している場合は、法人への移転を上手にしなければならないので、注意が必要だ。
上記の三形態を踏まえて、いよいよ法人の設立になる。その不動産管理会社が商品販売等の営業会社も兼ねるなら株式会社が良いと思うが、家族だけで不動産管理だけを経営する会社なら合同会社か一般社団法人の形が良いと思う。
特に一般社団法人は資本金を持たない株式会社のようなものだから、将来の株式の承継の心配もなくなる。
しかも設立条件は社員2名以上、理事1名以上で設立できるから、たとえば、ご夫婦で社員と理事を兼ねることも可能だ。設立費用も株式会社よりもかなり安く設立できるが、税務的には株式会社と同様の税制が適用される。
しかも解散するときの残余財産は、その帰属を社員総会で決めることができるのだ。勿論将来公益事業をすることも可能だ。不動産管理法人を設立する際は、「一般社団法人」の活用を検討してみるのも良いのではないだろうか?
2015年7月27日(月)
著者 千葉和彦
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