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2015年1月29日 (木)

「信託」の活用について

 1月15日(木)は、(株)青雲様主催の仙台オーナーズセミナーの新春セミナーでした。私も講師の一人で参加し「相続税改正と『信託』を活用した事業承継」というテーマでお話しさせて頂きました。
                        
講師5人が次々講話するため、一人の持ち時間は40分くらいで、ポイントのみの説明にならざるを得ませんでしたが、参加者の全員があまりにも熱心に聞いてくれるので思わず持ち時間をオーバーしそうになるほどでした。
                        
講義中も参加者の皆さんの熱意がひしひしと伝わってきましたが、休憩中にも信託について質問が集中し、信託への関心の高さを肌で感じた次第です。
                        
 遺言書はとても重要ですが、死亡した後のことを決めておけるだけで、その効用には、おのずと限界があります。多くの人は相続の発生する5年前、10年前に判断能力をほぼ失い、不動産等は一切動かせなくなり、相続対策はもちろん、処分さえもできなくなります。
                        
その解決をしてくれるのが「信託」の活用なのです。
                        
もし万が一、委託者が判断能力を失っても、受託者の判断で、大規模修繕や土地の有効活用も可能です。すなわち相続対策も合法的に堂々とできるのです。
                        
何年も前から遺言を書くことを勧めてきた方がおりますが、90歳を過ぎてもなかなか書けませんでした。今回、この信託契約を結ぶことで長年の課題を解決することができました。
                        
ポイントは受益権の引き継ぎをこの信託で指定したことです。
                        
受益者に万が一のことがあった場合に、次の受益者を指定しておく方法で、このことで遺言と同じ効果を出せます。これが「遺言代用信託」と言われる所以です。
                        
受益者が死亡した時は通常の相続税がかかりますが、受託者名義の借り入れ(受益者のための借入れに限る)も控除できますし、小規模宅地の評価減などの特例も使えます。通常の相続税の規程がそのまま活用できるということです。
                        
今回は不動産のみならず、預金も信託することになりましたので、メインの取引銀行さんにもきていただき、信託口の口座開設をお願いしました。
                        
今まであまり前例がないということで、検討していただくことになりましたが、担当の方が信託について基礎知識を持っておられ、打ち合わせはスムーズに運ぶことができました。
                        
多くの場合、信託契約は、最初、自分が委託者で尚且つ受益者になります。
                        
自分が委託者兼受益者になることで税務上経済的な価値の移動はないということなり、課税は生じません。
                        
従って、生きている限り受益者として従来通り、その物件から生じる果実を享受し続けることが可能になります。
                        
不動産等の名義は「受託者」になりますが、「受託者」が「委託者」に代わって管理、運用するだけで、本当の所有者は受益者になるからです。
                        
 ただこの信託も遺言同様、委託者の判断能力がしっかりしていないと不可能です。
                        
高齢になり、判断能力に疑問が起き始めたら早めのアクションが必要です。信託契約時で委託者の判断能力があれば、その後判断能力を失っても、受託者の判断で不動産の活用や処分が可能だからです。2月12日のセミナーでわかりやすく解説する予定ですので、是非ご参加ください。
                        
                        
2015年1月24日 税理士 千葉 和彦

 

 

 

                        

2015年1月 5日 (月)

新税制と相続・事業承継 …法律は知っている人の見方です。…

 平成27年度からの相続税改正の実施で基礎控除が40%も削減された。その結果、納税者は昨年までの約2倍になるということが喧伝され、まさしく昨年末からマスコミやセミナー等ではその話題で持ち切りだったといえる。

しかし、その一方で、平成25年改正で非常に使いやすくなった事業承継税制が、いよいよ27年度から実施されることはあまり話題にあがってこなかった。

この制度は簡単に言えば、後継者が自社株の80%の部分の相続税を納税せず(一旦納税猶予し)、次の後継者に贈与した場合、その相続税が最終的に免除される可能性があるという制度だ。

自社株の相続税対策は、役員退職金などの支払いで株価評価が下がったタイミングで後継者に贈与していくという対策が多いが、自社株の評価が高くなり過ぎた場合は、焼け石に水で、何をやっても評価は下がらない。そのような優良企業にこそこの事業承継税制は有効だ。自社株の相続税対策として是非検討してもらいたい。

 ただ、この税制を活用するにしても、他の対策をとるにしても、後継者が決まっていなくては対策の取りようがない。

まずは、後継者を決めることが大前提だ。

しかし中小企業の約70%は現在も後継者が決まっていないという統計も出ているくらい、後継者の問題は深刻だ。また、よしんば、後継者が決まっていても株式の異動ができないでいる経営者も多い。それは、万が一、後継者が事故等で亡くなった場合に、その自社株式がその後継者の配偶者へ相続され、その配偶者一族に会社を乗っ取られるかもしれないなどと考え、考えれば考えるほど身動きが取れなくなってしまうのだ。

このように後継者問題、事業承継問題は株式異動ひとつ取っても多岐にわたり複雑だ。

 さて、ここで信託の話だが、昨年から何度もお知らせしてきたように、その時こそ威力を発揮するのが信託ではないだろうか。

信託契約で長男等の後継者に万が一のことがあった場合に、配偶者ではなく、二男に引き継がせるようにしておく。そうすれば安心だ。まだ後継者は心もとないので、議決権は自分がもったまま、株式だけを最低の税金で後継者に移しておきたいなどと、虫が良すぎる相談も多いが、こちらも株式を配当などの収益権と元本に分けて、元本部分だけを後継者に贈与しておくという信託を活用すると実現が可能だ。

 ある人に「千葉さん、法律は誰の見方でもありません。知っている人の見方ですよ。」と言われたが、まさしく税法は、税金の多寡に如実に現れる。

様々な手法を勇気をもって先駆的に実行していく人に、結局は幸運の女神が微笑んでくれているようだ。

私も今年のセミナーは「新税制の相続・事業承継シリーズ」とした。今年のセミナーで詳しく解説していきたいと思う。ご興味のある方は、是非会場までお出かけください。お待ちしています。


2015年1月3日(土)  著者 千葉 和彦

 

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