一般贈与は、教育上好ましくない!
昨日は、地元の不動産業者さんに頼まれて、来年度より施行される相続税改正のテーマでセミナーの講師をしてきた。3時間という長さにもかかわらず、地元の地主さんや銀行の幹部の方が終始熱心に聴講してくれた。
最近、建設会社さんや保険会社さんから相続税改正に関するセミナーの依頼が急に増えてきた。今回の改正をビジネスチャンスと捉えてのことだろう。某週刊誌では、何ページにもわたり特集を組んでいた。これは、国民全般に与える影響の大きさを意識してのことではないだろうか?
今回の改正の大きな特徴は、基礎控除の大幅圧縮だ。改正後は現在の基礎控除の4割減になる。具体的には、例えば、法定相続人3人で現在8000万円ある基礎控除が、来年度より4800万円になる。つまり、これまで相続税がかからなかった人に、相続税がかかる可能性が増えるのだ。これにより、全世帯の2割強の1200万世帯が課税対象になる。当初、政府の試算では従来の約1.5倍程度課税対象者が増える見込みだったが、どうやら、それを上回る2倍程度になりそうだ。そのためか、この増税をにらんでの生前贈与の動きが近頃活発になってきているようだ。
祖父母が、子や孫に教育資金を贈った場合1500万円まで非課税となる「教育資金の一括贈与」の制度が昨年度よりはじまり、昨年1年間の利用金額が4500億円に達した。政府もこの現状を歓迎している。なぜなら現在65歳以上の国民で、日本の金融資産の60%を所有し、そのほとんどが銀行や郵便局の「預貯金」となっているからだ。政府としてみれば、もっと消費に回してもらうか、少なくとも株式など投資に回してもらいたいと考えている。そこで消費が活発な若い世代に移してもらうことを税制で支援し、景気対策に一役買ってもらおうと考えている。このほかに、「住宅資金贈与の特例」(祖父母から子や孫へ住宅取得資金として、500万円~1000万円までの贈与が、その構造に応じて贈与税が非課税とされる)という贈与の非課税制度がある。教育資金の一括贈与と同様に、贈与すると同時に祖父母の相続財産が減るので、高齢者の相続対策としては効果が高い。いずれも期限が今年と来年で切れるが、現在延長の方向で検討されだしている。
また、毎年贈与を続ける一般贈与は、今も健在で節税効果も高い。しかし、贈与相手の孫等が若すぎる場合、税金対策にはなるが、教育上好ましくないと考えるのは誰しも同じだ。そこで祖父が孫の通帳を持ち、そこに毎年110万円ずつ入れている方を時々見かけるが、これは相続が発生したときに孫への贈与とは見なされず、もともと祖父のものと見なされるので注意が必要だ。これが「名義預金」と言われるものだ。ではやはり幼少の孫に渡さなければならないのかと思うが、渡さなくても贈与と認められる方法がある。前にも何度も書かせてもらったが、「信託」の活用だ。祖父が委託者となり、孫を受益者とし、その親を受託者として通帳を親に管理してもらう方法だ。親が信頼できないなら、祖父自身に信託もできる。(これを自己信託という)この方法だと否認されることなく堂々と贈与ができ、しかも教育上の問題も解決できる。活用を考えてみてはいかがだろうか?
2014年7月28日(月) 著者 千葉 和彦
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