« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »

2014年7月29日 (火)

一般贈与は、教育上好ましくない!

 昨日は、地元の不動産業者さんに頼まれて、来年度より施行される相続税改正のテーマでセミナーの講師をしてきた。3時間という長さにもかかわらず、地元の地主さんや銀行の幹部の方が終始熱心に聴講してくれた。

 最近、建設会社さんや保険会社さんから相続税改正に関するセミナーの依頼が急に増えてきた。今回の改正をビジネスチャンスと捉えてのことだろう。某週刊誌では、何ページにもわたり特集を組んでいた。これは、国民全般に与える影響の大きさを意識してのことではないだろうか?

 今回の改正の大きな特徴は、基礎控除の大幅圧縮だ。改正後は現在の基礎控除の4割減になる。具体的には、例えば、法定相続人3人で現在8000万円ある基礎控除が、来年度より4800万円になる。つまり、これまで相続税がかからなかった人に、相続税がかかる可能性が増えるのだ。これにより、全世帯の2割強の1200万世帯が課税対象になる。当初、政府の試算では従来の約1.5倍程度課税対象者が増える見込みだったが、どうやら、それを上回る2倍程度になりそうだ。そのためか、この増税をにらんでの生前贈与の動きが近頃活発になってきているようだ。

 祖父母が、子や孫に教育資金を贈った場合1500万円まで非課税となる「教育資金の一括贈与」の制度が昨年度よりはじまり、昨年1年間の利用金額が4500億円に達した。政府もこの現状を歓迎している。なぜなら現在65歳以上の国民で、日本の金融資産の60%を所有し、そのほとんどが銀行や郵便局の「預貯金」となっているからだ。政府としてみれば、もっと消費に回してもらうか、少なくとも株式など投資に回してもらいたいと考えている。そこで消費が活発な若い世代に移してもらうことを税制で支援し、景気対策に一役買ってもらおうと考えている。このほかに、「住宅資金贈与の特例」(祖父母から子や孫へ住宅取得資金として、500万円~1000万円までの贈与が、その構造に応じて贈与税が非課税とされる)という贈与の非課税制度がある。教育資金の一括贈与と同様に、贈与すると同時に祖父母の相続財産が減るので、高齢者の相続対策としては効果が高い。いずれも期限が今年と来年で切れるが、現在延長の方向で検討されだしている。

 また、毎年贈与を続ける一般贈与は、今も健在で節税効果も高い。しかし、贈与相手の孫等が若すぎる場合、税金対策にはなるが、教育上好ましくないと考えるのは誰しも同じだ。そこで祖父が孫の通帳を持ち、そこに毎年110万円ずつ入れている方を時々見かけるが、これは相続が発生したときに孫への贈与とは見なされず、もともと祖父のものと見なされるので注意が必要だ。これが「名義預金」と言われるものだ。ではやはり幼少の孫に渡さなければならないのかと思うが、渡さなくても贈与と認められる方法がある。前にも何度も書かせてもらったが、「信託」の活用だ。祖父が委託者となり、孫を受益者とし、その親を受託者として通帳を親に管理してもらう方法だ。親が信頼できないなら、祖父自身に信託もできる。(これを自己信託という)この方法だと否認されることなく堂々と贈与ができ、しかも教育上の問題も解決できる。活用を考えてみてはいかがだろうか?

2014年7月28日(月) 著者   千葉 和彦

2014年7月 1日 (火)

事業承継対策・・いよいよ待ったなしか・・

   来年度の相続税増税を意識してか最近は相続、事業承継の相談が増えており、実際に毎月のように公正証書遺言の立ち合いがある。2002年問題(団塊の世代が一斉に65歳を迎えること)が叫ばれてから2年が過ぎ、いよいよ相続、事業承継問題は待ったなしの状況になってきているのだろう。勿論、社長の後ろ姿をみて育ってきた後継者がすでに決まっている会社もあるのだが、後継者に会社の財務の内容を尋ねてみると、決算書を社長に見せてもらったことがないのでわからないと言う驚きの声が返ってくることが少なくない。社長の方と言えば、「怖くて見せられないのですよ。決算書を見せたら後を継ぐ気がなくなるのではないかと思って・・・」と戦々恐々の体なのだ。

   後を継ぐということは自分の人生のみならず全社員の人生をも背負う大事業なのだ。それなのに財務内容も知らないで後を継いではいけない。もし継ぐものが借金と連帯保証だったら、たまったものではない。継いだはいいが、一生先代の債務を返済するために仕事をすることになる。そうならないためにも、しっかり後継者は財務内容を知らなければならないし、現社長も後継者に見せても恥ずかしくない内容にして引き継ぐ必要がある。債務超過の赤字会社を後継者に継がせては可哀そうだ。

   M&Aや廃業、清算といった道を除けば企業は存続することが最大の課題だ。その存続のための必須条件が、①後継者がいること②黒字であることである。突発的に大きな利益を出す必要はないが、適正な利益を毎期出し続けることが存続の条件だ。全体の70%が赤字会社と言われているが、まずは何はさておき黒字会社にならなければならない。黒字会社にする第一の条件は、社長の「何としても黒字にする。」という熱い熱意と覚悟、そしてやり続ける強い意志だ。黒字に対する執念とも言える。

   中小企業の最大の弱点は、計数管理が弱いことだが、赤字会社を見てみると、おしなべて計数管理がしっかりなされていない。笑い話ではないが、申告書が完成するまで赤字か黒字かもわからないという会社が結構ある。トップ自身が数字は、経理と会計事務所に任せておけばよいと軽く考えている傾向があるのだ。そのような社長に限って売り上げだけの数字は見ている。いわゆる「売上至上主義」と言われるものだ。それは時として、たとえ黒字になっても資金不足を生じさせる原因になる怖さを知らない。黒字にするということは、そう単純なことではないのだ。

  資金繰りを良くし、将来存続できる黒字会社になるには、計数管理をしっかりすることが一番重要となる。業績をタイムリーに把握できる仕組みを作り、競争激化による売上低下などもいち早く手を打つためだ。勿論過去の数字を正しく把握するだけでなく、一歩進んで「経営計画」を立て、それを実行するための行動計画を実行していく。その際、全社の意識を一つにするために、社長自らの言葉で「経営理念」を打ち立てることは言うまでもない。経営理念に従った経営目標をしっかり打ち立て、業績管理をしていくことが黒字化への一番の近道なのだ。そして、是非、今の会社を三代続く会社にするために黒字を出し続けられる仕組みを作ってほしいと願う。応援しています。

2014年6月30日  著 者   税理士 千葉 和彦

« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »