財布は3つある。
平成の初めに、会社の寿命は30年と言われてから25年が経過し、経営環境の厳しい昨今はその寿命もどんどん縮小している。会社誕生から10年で半分が消え、40年で約1割に減り、老舗と言われる100年を超える企業はわずか1%しか生き残っていない。
会社を設立した創業者は誰しも自社の成長、発展を願い経営に汗を流す。しかし、たった1%しか生き残れない現実を考えるなら、廃業も視野に入れて、常に最悪の場合を考えた経営が、いざという時の怪我を軽くする。
企業には4つの出口しかない。①市場への株式公開(超エリート企業で難しい)②事業承継(親族あるいは社員など他人への二通りの承継がある。)③友好的M&A④廃業、倒産の4通りである。
もちろん一番の理想は②の事業承継であるが、自社株や事業用財産の引き継ぎのほかに、経営権も上手に引き継がなければならない。承継には5年から10年の伴走期間が必要だ。
しかし後継者難で④を選択せざるを得ない会社が毎年7万社もある。③のM&Aも実現には時間が必要だ。しかもその会社に他社にない強みや魅力がないと買手は現れない。問題は④の場合だ。誰も望まないから普段はできるだけ考えないように、触れないようにする。そのため、いざという時に準備がなく大怪我をしてしまう。
頑張ってきた社長がいい年になって破産などすると、たとえ債務から逃れられたとしても、自分のプライドはズタズタに引き裂かれてしまい、楽しい老後は送れない。こうならないためには、日頃から財布は3つということを心がける必要がある。
もちろん1番目の財布は会社である。2番目の財布は社長の家族の財布である。3番目の財布が社長の財布だ。1番目の財布のお金がいろいろな努力をしても無くなってしまい、しかも金融機関からも借りられないときは、3番目の社長の財布からお金をだすのは当然である。
問題は、社長の財布のお金だけで足りない時に家族の財布からも出してしまうことである。家族のお金は社長のお金ではないので、決して触ってはいけない。貯める時も、自分の財布より家族の財布から一杯にしていかなければならない。それは、万が一の時、住む家と家族の支援があれば何とか再起できるからだ。
ではどうすればいいかというと、支払いを伸ばすことで資金繰りを回すことだ。まずは銀行、税務署、社会保険事務所、水道、ガス、電気などの公共料金など・・誠意を持って交渉する。特に銀行には早急に資金繰り表、3か月以内には経営改善計画書を提出して、協力を求める。とにもかくにも誠心誠意という姿勢が大事だ。
極端な話、たとえ手形が落とせなくてもすぐに倒産、破産はない。倒産は社長の心が折れた時だけである。いざという時の心の支えにするためにも2番目の財布に手をつけてはいけない。
どんな状況に追い込まれても決してあきらめず、冷静に対処すれば必ず道は開けることを肝に銘じて、まずは我々に相談してください。今年も残すところ一か月になりました。体調管理に気を付けて一緒に年末を乗り切りましょう。
2013年11月28日 著 者 千 葉 和 彦
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