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2013年12月27日 (金)

遺言と信託

[遺言]

最近は、遺言の相談が多い。遺言は、残された相続人が揉めないようにするための、残す側からの愛情ともいえる。もし遺言がなければ、相続人で話し合う遺産分割協議をしなければならない。普段仲の良い相続人であっても、すんなり話がまとまることは少ない。

まずは、相続権のない相続人の配偶者や親族、友人までもがいろいろ相続人に知恵を入れてくる。なかには、正しい知識にもとづかない無責任な意見も多い。相続人は時間が経過するにつれて、その意見に惑わされ、自分の権利の主張をしはじめる。そのあげく仲の良い兄弟も、親の相続後は断絶してしまっているところも多い。荒涼、索漠とした関係になった兄弟を、亡くなった親は草葉の陰でどんな思いでみているのだろうか。

財産をもらう人がお互いに話し合うから揉めるのであって、財産をあげる人が自分で決めていった意志には従うしかない。すべてが円満に解決するわけではないが、揉める要素も格段に少なくなる。それ故、相続税がかかる、かからないに関係なく、少しでも自分名義の財産のある方には「遺言」を進める。

[遺留分]

しかし、遺言をしたからと言って、油断してはならない。法定相続人は、民法の定めによりそれぞれの相続人が必ず受け取ることができる最低限度の遺産の分け前が保障されている。これを「遺留分」という。

相続人が長男と次男の子供二人だけの場合に、「全財産を長男に相続させる。」という遺言を残したならどうだろうか?二男は長男に対し、全遺産の四分の一の「遺留分減殺請求」をすることができる。いよいよ相続争いの始まりである。せっかく遺言をするのだから、このことを念頭において遺言しなければならない。そうすれば、揉めることは防げるのだ。

「子供のいない夫婦の例」

遺言をしておかないと、夫の兄弟にも相続権があるので、話し合いが必要になる。しかし、「私の全財産を妻に相続させる。」と遺言をしておけば、兄弟には遺留分がないのでそのまま妻が相続することができる。

そこで、「全財産を妻に相続させる」という遺言を残そうと思ったが、さらに良く考えた結果、先祖代々の土地なので、妻が死亡した後は、自分の弟に相続させると遺言した。先祖代々の土地を妻の親族に渡すには抵抗があったのだ。気持ちは痛いほどわかるが、この遺言は無効だ。妻の死亡後は妻の相続人(妻の兄弟等)あるいは妻の遺言した人に相続されるのが今の民法だ。

[跡継ぎ遺贈]

何とか自分の弟に相続させられないか?という質問が意外と多い。
同じように後継者の長男に自社株を相続させても、長男に万が一のことがあり死亡した場合、その自社株は長男の嫁に相続されてしまうので、心配で贈与できない。長男が死亡した場合、二男に自社株を相続させることができないか?という質問も多い。

ここで朗報を伝えなければならない。まだあまり活用されていないが、2006年の信託法改正で、民法では無効の「跡継ぎ遺贈」が、信託を使えば可能になったのだ。

これを「受益者連続信託」という。しかし注意点がある。「遺留分減殺請求」は信託であっても遺言同様に存在するのだ。詳しくは後日セミナー等でお話ししたいと思います。良い年をお迎えください。

2013年12月27日   著 者  千葉 和彦

2013年12月 4日 (水)

財布は3つある。

 平成の初めに、会社の寿命は30年と言われてから25年が経過し、経営環境の厳しい昨今はその寿命もどんどん縮小している。会社誕生から10年で半分が消え、40年で約1割に減り、老舗と言われる100年を超える企業はわずか1%しか生き残っていない。

会社を設立した創業者は誰しも自社の成長、発展を願い経営に汗を流す。しかし、たった1%しか生き残れない現実を考えるなら、廃業も視野に入れて、常に最悪の場合を考えた経営が、いざという時の怪我を軽くする。

 企業には4つの出口しかない。①市場への株式公開(超エリート企業で難しい)②事業承継(親族あるいは社員など他人への二通りの承継がある。)③友好的M&A④廃業、倒産の4通りである。

もちろん一番の理想は②の事業承継であるが、自社株や事業用財産の引き継ぎのほかに、経営権も上手に引き継がなければならない。承継には5年から10年の伴走期間が必要だ。

しかし後継者難で④を選択せざるを得ない会社が毎年7万社もある。③のM&Aも実現には時間が必要だ。しかもその会社に他社にない強みや魅力がないと買手は現れない。問題は④の場合だ。誰も望まないから普段はできるだけ考えないように、触れないようにする。そのため、いざという時に準備がなく大怪我をしてしまう。

 頑張ってきた社長がいい年になって破産などすると、たとえ債務から逃れられたとしても、自分のプライドはズタズタに引き裂かれてしまい、楽しい老後は送れない。こうならないためには、日頃から財布は3つということを心がける必要がある。

もちろん1番目の財布は会社である。2番目の財布は社長の家族の財布である。3番目の財布が社長の財布だ。1番目の財布のお金がいろいろな努力をしても無くなってしまい、しかも金融機関からも借りられないときは、3番目の社長の財布からお金をだすのは当然である。

問題は、社長の財布のお金だけで足りない時に家族の財布からも出してしまうことである。家族のお金は社長のお金ではないので、決して触ってはいけない。貯める時も、自分の財布より家族の財布から一杯にしていかなければならない。それは、万が一の時、住む家と家族の支援があれば何とか再起できるからだ。

ではどうすればいいかというと、支払いを伸ばすことで資金繰りを回すことだ。まずは銀行、税務署、社会保険事務所、水道、ガス、電気などの公共料金など・・誠意を持って交渉する。特に銀行には早急に資金繰り表、3か月以内には経営改善計画書を提出して、協力を求める。とにもかくにも誠心誠意という姿勢が大事だ。

 極端な話、たとえ手形が落とせなくてもすぐに倒産、破産はない。倒産は社長の心が折れた時だけである。いざという時の心の支えにするためにも2番目の財布に手をつけてはいけない。

 どんな状況に追い込まれても決してあきらめず、冷静に対処すれば必ず道は開けることを肝に銘じて、まずは我々に相談してください。今年も残すところ一か月になりました。体調管理に気を付けて一緒に年末を乗り切りましょう。

2013年11月28日  著 者  千 葉  和 彦

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