連帯保証人の相続
先日、私の関与先の会長が亡くなられた。
相続人は長男、長女の二名。お二人とも仲が良くスムーズに遺産分割の話し合いが進み、私も安心していた。
いつも相続税の計算以上にこの遺産分割協議には悩まされるが、今回は気持ちが楽だった。
しかし、遺産分割協議書を作成しながら、あることに気づき、真っ青になってしまった。
すぐに相続人に連絡し、相続は長男の社長にすべて相続してもらうことにし、もう一人の相続人のご長女には相続放棄をしてもらった。
何故ならそれは、会長と長男の社長が多額の負債を抱える自社の連帯保証をしていたからだ。
もし普通に相続してしまうと、あらたにご長女も連帯保証人になり、大変なことになっていたのだ。
まさしく危機一髪だった。
その後、社長が銀行にいくと、保証人が一人になってしまい困るので、社長の長男の常務を追加で入れてほしいと言われたそうだが、毅然としてそれを断ったところ、最終的には一人でもやむ得ないといことになったようだ。連帯保証も相続することを忘れてはならない。
10年くらい前に商工会議所の紹介で、30代でご主人を亡くし、子供を二人抱えたまま未亡人になってしまった方から相談を受けたことがあった。
奥様が知らないところでご主人が多額の借金をしていたことがわかり、相続放棄をしたいという相談だった。
そこまではよくあることなので、「その方法で良いですよ。」
と話したが、奥様は小さなお子様を二人抱えて今後の生活が心配なので、保険金だけは受け取りたいという内容だった。
「相続を放棄しても保険金は堂々と受け取れますから安心してください。」
と話し、喜んでいただけたようだった。しかしその2年~3年後大変なことになっていた。
それは借金取りがご主人の両親に迫っていたからだ。
相続を放棄すると相続権は次順位に自動的に移る。
この場合奥様が相続放棄したことにより、相続権がご主人のご両親に移ったのだ。
幸い、家裁でご両親の放棄が認められ、事なきを得たことはほんとに良かったが、
電話での相談とはいえ、冷や汗ものの思い出になった。
最近、世代交代の流れが押し寄せていて社長の退職が増加している。
その際、自分から金融機関に保証人を抜いてほしい旨を話さないと、社長を辞めても保証人になったままになっている。
しかし、先日ある金融機関のほうから保証を抜けてはどうかとアドバイスされ驚いた。
金融庁は平成23年7月に、連帯保証人について監督指針を改正した。
金融機関が融資をする際に、融資企業の経営に直接的に無関係な第3者の個人連帯保証を求めないというものなので、金融機関の態度も変わってきているということだろうか。
しかし、人身御供制度の非人道的な連帯保証人制度は、まだ代表者に限っては認められているので、
代表者の相続に当たっては、相続をする際には、連帯保証の内容について十分に注意していく必要がある。
世代交代は今後ますます増加すると思われるので、ぜひこのことを肝に銘じて経営に取り組んでほしいと思う。
暑くなってきました。お体ご自愛ください。
2013年6月28日(金) 著 者 千葉 和彦
« 中小企業金融円滑化法期限到来対策 | トップページ | 企業は潰れるものだ! »
コメント