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2013年7月31日 (水)

企業は潰れるものだ!

先日、東京で2日間、14時間のセミナーを受講してきた。
講師は事業再生の専門家だ。セミナーの開始前に講師は「医者は人の命を救い、税理士は企業の命を救う。」と大書した。そしてそのためには税理士事務所が「士業から企業」にならないと企業を助けることはできない。是非企業を目指してほしいという話が講義中何度もあった。
企業の終焉と再生に立ち会うコンサルタントの重い言葉だった。

「変動損益計算書の中で、変動費を下げるにはどうしたらよいですか?」と講師が質問を始めた。得意分野である我々、参加税理士(9名)は各々の考えを述べた。
その後、引き続き「では変動費をゼロにする方法は?」と問われた。
私はとっさに「受託販売に切り替えてはどうでしょうか」と答えた。
講師は、したり顔で「ほかに意見ありませんか?」と更に問い続けたが、それに対して誰からも意見は出なかった。

しんと静まり返った部屋で、講師は「税理士先生方の発想の限界ですね。」と言い、「業務を廃止したら、変動費は発生しないですよ。」と話した。
それを聞いた私たちは、一瞬呆気にとられてしまった。まさしくその通りだが、私自身そこまで柔軟な発想はできなかった。

続いて「法律は誰の味方ですか?」という質問に、参加者の税理士が「国民の味方です。」と答えると講師は「ほんとにそうですか。法律は、知っているものの味方です。」と言った。
さらに講師の問いは続いた。「企業はみな遅かれ早かれ潰れます。その時に取引先に迷惑をかけずに、社長と社員を助けるにはどうしたら良いのですか?」と。
私の頭の中には「いかにして老舗企業になれるよう支援していくか」という発想しかなかったため、講義の内容は、ある意味ショックだった。
確かに、100年以上生き残る老舗企業といわれるものが、全事業者の1%から多くても3%であることを考えれば納得だ。

知り合いに年商100億円の社長がいるが、その社長の口癖は「事業は俺一代で終わりだ。だから後継者も組織もいらない。」
まさしく社長のワンマン経営で、町の商店がただ大きくなった感じだ。
そのような会社がそこまで大きくなっていることも私の中での七不思議だが、私が社員だったらそのような社長の下で働くのは嫌だ。

社長は社員とその家族の人生も抱えているという自覚を持たなければならない。人間はみな生活の向上を願い、自己の才能を発揮したいという欲求を持っている。一個の人間としての「自己拡大」の本能である。
そのためにはどうしても長期的な繁栄を目指さなければならない。この自覚が経営者の使命感といえるものだ。
しかし、必死で努力しても、望まぬ結果になった場合には、廃業もやむを得ない。
最初から廃業前提は、経営者として身勝手としか言いようがないが、企業が存続できない現実から逃げてもいけないということを、今回のセミナーで気づかされた。
あくまでも継続企業をめざすが、意に反して市場から撤退せざるを得ないときの退場の仕方も学んでおく必要があるとも思った。
会社がなくなっても人生はある。その人生をいかに充実させていくかまで考えていなければならない。

経営者も大変かと思うが、そのようなことも逃げずに考えておくと、いざという時に法律が味方してくれ、怪我もすくなくて済むようだ。最後まで応援しています。

平成25年7月29日(月) 著者 千葉 和彦

2013年7月 5日 (金)

連帯保証人の相続

先日、私の関与先の会長が亡くなられた。
相続人は長男、長女の二名。お二人とも仲が良くスムーズに遺産分割の話し合いが進み、私も安心していた。
いつも相続税の計算以上にこの遺産分割協議には悩まされるが、今回は気持ちが楽だった。
しかし、遺産分割協議書を作成しながら、あることに気づき、真っ青になってしまった。
すぐに相続人に連絡し、相続は長男の社長にすべて相続してもらうことにし、もう一人の相続人のご長女には相続放棄をしてもらった。
何故ならそれは、会長と長男の社長が多額の負債を抱える自社の連帯保証をしていたからだ。
もし普通に相続してしまうと、あらたにご長女も連帯保証人になり、大変なことになっていたのだ。
まさしく危機一髪だった。
その後、社長が銀行にいくと、保証人が一人になってしまい困るので、社長の長男の常務を追加で入れてほしいと言われたそうだが、毅然としてそれを断ったところ、最終的には一人でもやむ得ないといことになったようだ。連帯保証も相続することを忘れてはならない。

10年くらい前に商工会議所の紹介で、30代でご主人を亡くし、子供を二人抱えたまま未亡人になってしまった方から相談を受けたことがあった。
奥様が知らないところでご主人が多額の借金をしていたことがわかり、相続放棄をしたいという相談だった。
そこまではよくあることなので、「その方法で良いですよ。」
と話したが、奥様は小さなお子様を二人抱えて今後の生活が心配なので、保険金だけは受け取りたいという内容だった。
「相続を放棄しても保険金は堂々と受け取れますから安心してください。」
と話し、喜んでいただけたようだった。しかしその2年~3年後大変なことになっていた。
それは借金取りがご主人の両親に迫っていたからだ。
相続を放棄すると相続権は次順位に自動的に移る。
この場合奥様が相続放棄したことにより、相続権がご主人のご両親に移ったのだ。
幸い、家裁でご両親の放棄が認められ、事なきを得たことはほんとに良かったが、
電話での相談とはいえ、冷や汗ものの思い出になった。

最近、世代交代の流れが押し寄せていて社長の退職が増加している。
その際、自分から金融機関に保証人を抜いてほしい旨を話さないと、社長を辞めても保証人になったままになっている。
しかし、先日ある金融機関のほうから保証を抜けてはどうかとアドバイスされ驚いた。
金融庁は平成23年7月に、連帯保証人について監督指針を改正した。
金融機関が融資をする際に、融資企業の経営に直接的に無関係な第3者の個人連帯保証を求めないというものなので、金融機関の態度も変わってきているということだろうか。
しかし、人身御供制度の非人道的な連帯保証人制度は、まだ代表者に限っては認められているので、
代表者の相続に当たっては、相続をする際には、連帯保証の内容について十分に注意していく必要がある。

世代交代は今後ますます増加すると思われるので、ぜひこのことを肝に銘じて経営に取り組んでほしいと思う。

暑くなってきました。お体ご自愛ください。

2013年6月28日(金)   著 者  千葉 和彦

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