中小企業金融円滑化法期限到来対策
平成21年12月4日に施行された「中小企業金融円滑化法」は、2回の延長を経て今年度(平成25年)3月で終了した。この間約30万社~40万社の事業者(全事業者の約1割)がこの制度を活用し、リスケの実施を行った。または現在も実施中である。現在リスケを行っている企業にとっては、今後の金融機関の対応がどう変わるのかが一番の関心事だ。
まずこの円滑化法の制定に伴い、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」で、以下の文章が追加されたことを確認したい。
「・・・債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときには、当該債権者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないと判断して差し支えないとされていることに留意する。」
この措置は、恒久的な措置として位置づけられている。これは、円滑化法期限到来後も本措置は引き続き認められるということであるから、短期的に不良債権が表面化することはない。つまり当面の間は、突然銀行が貸し渋ったり、貸し剥がしをすることなどは少ないと予想される。政府もこの円滑化法が終了したことにより、急に多くの企業に倒産されることを一番恐れているのだ。参院選終了までは、「静かにしていてくれ」と言うのが本音ではないだろうか。
しかし、そう言う政府も約5万~6万社の企業の清算を予測している。私は約15万社~20万社は清算せざるを得ないのではないかと見ている。政府が言う5万社は法的手続きを踏めるところで、法的手続きを踏まない(法的手続きにもかなりの資金が必要)任意整理、廃業がさらにプラスされるからだ。それが一気に表面化するのは来年秋頃だと見ている。
さて、そうならないための対策だが、まずは「経営改善計画書」をきちんと提出することだ。リスケを実施したもののいまだに7割の企業がきちんとした「経営改善計画書」を提出していないのが実情だ。
「経営改善計画書」は次の①~③を盛り込んだものにすることが重要だ。①有利子負債を10年以内に償還する。②5年以内に債務超過を解消する。③2期連続赤字は、必ず翌期に黒字にする。そして金融機関には進み具合を定期的に報告しなければならない。
さらに、計画と実績に差が出た場合には原因や今後の対応策をしっかり説明できるようにしておく。リスケ更新時には正常な状態を示すためにも、可能なら少しずつでも返済を再開させる。いずれにしても達成率が70%を切るようだとリスケの更新は微妙になるので、80%の達成率を死守したいところだ。
しかし計画通りいかず、再リスケに応じてもらえない場合も当然想定しなければならない。その場合でも、いくらでも再生の道はあるので、決して、慌てたり、投げやりな気持ちになる必要はない。経営者が心を折らない限り、「倒産」とは無縁だということを肝に銘じて経営に取り組んでほしい。私も最後まで応援してます。
2013年5月31日(金) 著 書 千葉 和彦
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