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2012年11月27日 (火)

贈与された方は1年で忘れる!

いよいよ団塊の世代が65歳にさしかかり、事業承継の相談が急に増えてきた。

会社存続のために避けては通れないことではあるが、後継者が決まらない(いない)というところも少なくない。
また後継者がいても、自社株の評価が高くなりすぎていて、いざ贈与しようとすると、多額の税金が発生し、贈与も難しいケースがほとんどというように、事業承継に関する課題は多い。

ここで実務家が提案するのは、現社長が退職し、後継者に社長を譲り、その際、しっかり退職金を取ってもらうことで当期利益を大きく引き下げ、翌期株価が下がったところで、後継者に贈与してもらう方法だ。大変シンプルな対策のように見えるが、その効果は大きい。

しかし、せっかく株価が下がったにも関わらず、いざ実行という段階で踏みとどまる社長も多い。

それは、何故かと言うと息子(娘)は、確かに自分よりはるかに若いとはいうものの、事故等で自分より先に亡くなったらと、ふと脳裏を横切るからだ。もしそうなった場合の相続権は息子さんの奥様とその子どもにある。会社の株だからと言っても、もちろん例外はない。

会社で売渡請求ができるように定款を変更したり、あるいは、その時に備えて息子さんに遺言を書いておいてもらう方法もあるだろうが、常に書き換えが可能なことなど考えると完璧とはいえない。何とかうまい方法がないものだろうかと私自身も常々考えていた。

先日たまたま「信託」という方法で、事業承継の実践を数多くされている先生の話を聞く機会があった。

その話を聞いたとき、まさしく、これからはこの方法の活用だと思った。
「信託」と言うとすぐに「信託会社」を思い出す人が多いと思うが、この場合は、信託会社に頼むわけではない。

例えば後継者を長男という前提で説明しよう。

自社の株式を自分に委託し、受益者を長男にする方法だ。すなわち、委託者、受託者は現社長、受益者は長男とする方法だ。長男がもし先に亡くなったら、次の受益者を次男や他の人に定めておく方法だ。

税務上は、真の所有者は受益者になるので、その時点で、贈与税が、かかるが、社長に相続が発生しても相続税はかからない。

受益者変更権は親が持ち続ける形にしているため、長男は常に襟を正して、経営に当たっていかざるを得ないという効果も期待できる。

確かに生前贈与は相続税対策として大きな効果を生むのですが、贈与した方は顔を合わせれば、いつまでも贈与したことを思い出し、贈与され方は一年もすれば、忘れてしまうのが世の常だ。

そのような気持ちのすれ違いから、贈与後、関係がギクシャクしてしまう親子も多いようだ。

しかし、この「信託」の方法をとれば、受益者変更権は親が持ち続けるわけだから、長男も忘れるわけにはいかず、そのことを意識した行動を取らざるを得ない。

そのため、贈与前に増して関係が良好になったケースがほとんどのようだ。

まだまだ活用されているケースは少ないようだが、今後この「信託」とう方法は、スムーズな事業承継に一役買うことができるのではないだろうか?

とかく税金ばかりに目がいきがちだが、これからはこの「気持ち」を考えた対策がますます重要になると思う。

今年も残すところ一ヶ月を切った。師走で忙しい月ですが、体調管理を万全に乗り切りましょう。

2012年11月27日(火)  著  者    千葉和彦

2012年11月 2日 (金)

デフレ下の経営戦略

「御社は創業してから何年になられるのですか?」経営者の方にお会いすると、つい聞いてしまいます。数年前から個人的にも老舗企業に深い関心があるため、初めてお会いした社長さんにも失礼と思いながらも聞いてしまうのです。

今月も当社の関与先さんの創業60周年記念祝賀会が開催され、私と副所長もご招待を受けました。統計上、創業60周年の企業は、わずか4.4%しか存在していないことを考えると、とても凄いことです。敬意を込めて祝福させていただきました。

 ところで企業が存続し続ける要素はいくつかありますが、①利益を出し続けること。②後継者がいること。の二つは必須条件です。そして、利益を出し続けるためには、しっかりした経営理念、環境の変化を見据えた経営計画、経営戦略が必要になるのです。その利益ですが、一時的に大きな利益を出すことは、比較的できるかもしれませんが、継続して出し続けることほど困難なことはないと思います。経済が右肩上がりの時は、なにが何でも拡大戦略が正しい方法として、高い目標を掲げがんばってきた経営者の方も多いと思います。

私も良くセミナー等では、「会社というものは毎年黙っていても固定費が増大するのだから、売上拡大、規模の拡大は経営者の宿命で、それが出来ない人は、経営者を辞めた方がいい。」とまで言ってきました。

しかし、今の時代どうでしょうか?給料は毎年上がるでしょうか?旅費交通費や通信費は毎年値上がりしているでしょうか?交際費のゴルフのプレー代は値上がりしているでしょうか?むしろ低下傾向が続いています。そうすると固定費は思ったほど上がっていかないのです。従って、この時代に合った経営戦略をたてなければなりません。むやみに売上拡大、規模拡大をはかりますと、安売り合戦に巻き込まれるケースが多いようです。それを量で取り返そうと無理するため、人も設備も疲弊していきます。

中小企業は決して価格競争に巻き込まれてはなりません。そのためには、規模は小さくてもしっかり儲かる会社を作ることが重要です。人や設備を増やさない利益率の高い会社です。そうすれば無理に値引きを要求してくる取引先とも付き合う必要がなく、ストレスも減ります。この場合の一人当たりの売り上げの目安ですが、どんな業種にも通用する限界利益(売上から仕入れ、材料費、外注費等の変動費を除いた粗利のことです。)で考えます。

最低目指すは、一人当たりの限界利益1000万円です。しかしこれでは世間並みの報酬・給与しかとれません。世間並み以上の給与をもらい、楽しく仕事をして、自己を成長させていくには、2000万円を目標にすべきです。パートさんは2人で1人と考え、限界利益を社員数で割れば一人当りの数字がでてきます。

そうすれば、小規模でも高収益なしっかりした会社になり、存続の要件である、利益を出し続ける会社になることが可能です。入らない物はどんどん処分して設備の空間を作り、人も増やさず、顧客も絞って、是非経営者も幹部も社員も幸せになれる会社作りを目指していきましょう。この時代の存続の道はそこに秘訣があるのではないでしょうか?

是非この夜長に経営戦略の見直しをお勧めします。

  2012年10月31日    著 者   千葉 和彦

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