友遠方より来る。その1
早いもので、今年も暑い夏が過ぎ去ろうとしている。
今年のお盆休みには、久しぶりに大手電機メーカーに勤める学生時代の旧友が私の家に泊まりにきてくれた。
なつかしい学生時代の思い出話から始まり、話は尽きることがなかったが、そこはやはり、企業戦士の現役世代、最後は仕事の話になった。彼の話の中には、私の会社のみならず、顧問先さんにも聞いてもらい、参考にしてほしい話題が数多くあった。
あまりに身近な親友なので気にもしなかったが、半分冗談でネットで彼を検索してみると、何と業務改善の第一人者として紹介されており、しかも実際に自社の工場の改善を実行し、大きな成果を上げてきた実績は高く評価されていた。
今回は彼との会話の中で印象に残った話をしたいと思う。もちろん彼の了解を得てだが・・・・。
彼は、学生時代からアイデアマンだったが、その感性は、入社後も生かされていたようだ。
16年前には、毎年グループ全体で2~3人しか受賞できない生産部門に与えられる最高の賞を受賞し、その褒賞として世界一周旅行にでかけ、旅先から良く私に絵葉書をくれたことを思いだす。
私は遅くまで実務に追われながら、半分羨ましく、また旅先からの情報を楽しみにしていた。
当時の彼の話を思い出すと、輸出するときに従来は、工場→物流倉庫→港のルートだったものを工場でバイニング(コンテナへ荷物を積み込みをする作業のこと)まで済ませ、物流倉庫を通さず直接港に送るといういわばショートカットの提案だった。当時としては、画期的といえる提案で、今までグループ全体として、何十億円に及ぶコスト削減効果を得たのだ。
彼と話をしていると、当時から、彼の生産性改善・業務改善への取り組みは休むことなく続けられていたのだと感動した。
彼は、現場を見てすぐに「製造途中で生じた不良品をどうしていますか?」とまず聞くそうだ。
すると多くの場合「捨てています。」とか「すぐ処分しています。」と言う答えが多い。
そんな時「不良品はそのまま誰でも見える状況にしておいてください。」とお願いすることから改善の第一歩が始まるそうだ。いつでも見える状況にして、同じ失敗を繰り返さないよう戒めると同時に、どうしたら不良品をださないで済むかを現場の皆で意識を持って考えていくのが大事なのだ。
また一生懸命汗を流して動くことと、働くことは違うということを知ってもらうことが重要と彼は言う。
何度も部品を取るために振り返ったり、往復したりしていることでは、働いていると言えない。
お金を生み出だすのは加工をしている時間であり、それ以外は、材料が寝ているいわば無駄な時間なので、できるだけ短縮しなければならないのだ。その無駄な時間を自社の問題として捉え、いかに短縮していくかが勝負なのだ。生産性を上げるということは、いかに付加価値を生む時間を増やすかにかかっているのだ。その時間は、一流メーカーでも100分のうち5分くらいしかないのだから、良く考え行動をしていけば、地場の中小企業にしてみれば、業務改善の方法はいくらでもあるはずだと彼は言う。
次回は、彼が協力会社のご子息の結婚式に出席したときに、その結婚式に日本を代表するメーカーの社長も来ており、その社長が取った行動に感動した話をしたいと思う。
2012年8月31日(金) 著 者 千葉 和彦