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2012年7月 2日 (月)

ある営業マンとの出会い

30代後半の営業マンと会うことになった。

友人の紹介なので無下にも断れず、まあ30分くらいなら仕方ないなという思いで夕方5時に事務所にきてもらうことにした。

正直気が乗らず嫌々だった。ところが実際、会って話が始まると、先方がこちらの時間を気にしてくれるほど話し込むことになってしまった。

その青年が特別話術に長けていたとか、特に有力な情報があったわけではない。

では何故?とみなさんお思いだろう。今回はその青年営業マンとの出会いをお話しさせていただこう。

その日、玄関のチャイムが鳴ったので時計を見ると5時5分前だった。「ふむふむ。セオリー通りだな。」と思った。

すぐに総務から内線でその青年の来所の旨が伝えられた。4時からの先客との話は終わっていたが、急にその青年を試してみたくなり(いつもはそんなことはしないのだが)わざと10分近く待たせた後、そっと応接間に近づいてみた。

すると、じっと立って待っている人影が見えた。お茶も飲まずに立って待っていてくれたのだ。

「案外礼儀正しい青年だな。」とほっと気持ちがほぐれた。その後、爽やかな挨拶と私の貴重な時間を割いたことに対するお礼へと続いた。

車が見当たらないので、何で来たのかと聞くと、「車です。」と答えた。何と彼は当社のお客様の邪魔にならないように、近くのスーパーの駐車場に置いて歩いてきたという。

彼が言うには「私は客ではありませんので、どこへ行っても玄関前の駐車場は避けて、邪魔にならないように、できるだけ遠くの隅に駐車しています。」と言うのだ。

コーヒーを出すと、運んできた当社のスタッフに会釈しながらお礼を言う。砂糖やクリームの殻は静かにポケットに入れる。帰るときには、コーヒーカップを私のと一緒に片づけ易いように隅に寄せる。といった気の遣いようだ。

その後何度か会うことになるが、会うたびにこちらが教えられ、感心させられ、また反省させられる。

ある時、一度も時間に遅れたことのない彼から、その日は遅れる旨の電話が事前に入った。「先生、申し訳ございません。2分ほど遅れます。」という内容だった。

たった2分でわざわざと思いながらも、私のことを大切にしてくれているのだと思い、彼が遅れたことよりも、その律儀さに強く感動したのだった。

そのうちこのような青年ならぜひ当社でもほしい人材だと思うようになり、思い切って、当社に入社しないかと誘ってみた。

すると「今日の自分があるのは、今の会社と社長がいたからです。まだ恩返しの半分もできていません。先生のお気持ちは大変ありがたく感謝していますが、今の会社で頑張らせてください。」と心から申し訳なさそうに断られた。

後日、かなり高い報酬を提示されて、ヘッドハンティングされたが、「報酬ではない。」と言って一切応じなかったという話をある人から聞いて、私は、ますますその青年のファンになった。

そして、還暦を目の前にした私ではあるが、彼を見習い、謙虚に初心を忘れず仕事に取り組んでいこうという気持ちを強くした。

2012年6月29日(金) 著 者   千葉 和彦

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