役員退職金と私募債の活用
今年は団塊の世代が一斉に65歳を迎えるため、これからの10年間は世代交代の時期にあたる。
経営者の多くも当然この世代に集中しているため、「役員退職金」の支払いも増加することと思う。
今回は、前回に引き続き、「役員退職金」の上手な出し方、活用の仕方について考えていきたいと思う。
前回のエッセイで話したように役員の退職に伴い支給される「役員退職金」は、過大退職金とならない限り全額損金計上が認められ、しかも役員個人が受け取る退職金に対する所得税も低いため(例えば20年勤続の役員が3000万円の退職金を受け取ったとすると、税額は所得、住民合わせて約300万円で済む。)他の報酬より手取り額が多くなる。永年の功労に対して「お疲れ様」の思いが税法にも込められているからだ。
しかし、役員退職金を会社が支払うとなると、その金額が多額に上り、資金繰りに窮することがある。
このような場合には、分割支給も認められている。なおその場合でも、具体的に確定した役員退職金の支給総額を、株主総会の日の属する事業年度の損金として全額計上できる。
ただし、源泉所得税の算定は、支給総額に対する税額を計算し、その税額を各回の支払額に按分して、支払いの都度、源泉徴収し、翌月10日まで納付していくと、少々複雑になるので注意が必要だ。
さて、会社が役員退職金を支払い、資金繰りに窮した場合には、退職した社長に自社の「私募債」を引き受けてもらう方法はいかがだろうか。
退職した社長が退職金を当面使う予定がないのであれば、会社に貸し付けて、ある程度の金利を受け取るという仕組みだが、単純な貸付金でないというところがミソである。
会社で払う金利は、損金になるし、貸し付けた社長は、受け取った利息の20%の税金を払うだけで良いから、実に効率的な運用だ。
所得税の税率が高い社長は手取りが増えることになる。少人数私募債の手続きに関しては、ネットでもその手続きの方法が詳しく紹介されており、複雑なものではない(例えば社債券の発行も必要ない。)ので、是非検討していただきたい。しかも会社にしてみれば、担保も保証人もいらない便利な資金調達法だ。
通常の借入金は元金を月々返済しなければならないが、私募債は通常は利息のみを払うだけで償還時一括返済なので資金繰りが向上する。
銀行は融資金額が減るから嫌がるかと思いきや、その会社に直接資金調達力があるということで、その会社にたいする信用力も高まるようだ。私は10年ほど前からこの「私募債」の活用に関して提案し、実行しているが、まだまだ十分に活用しているところは少ないと思う。大いに活用すべきだと思う。
もしわからないことがあったら何なりとお申し出ください。
早いものです。6月は一年間の折り返しの時期になりました。
年初に立てた計画の見直し時期でもあります。
じっくりと見直し、軌道修正が必要なら早めにかけてください。応援しています。
2012年5月31日(木) 著 者 千葉 和彦