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2012年2月25日 (土)

同族株主以外への自社株の譲渡・贈与は額面金額で大丈夫か?

 自社株の件では、頭を痛めている社長が多い。創業以来、人の二倍も三倍も休みもなく、無我夢中で働いてきたら、いつの間にか一株1万円の株が、10万円になっていたというケースがほとんどだ。

その会社の資本金1000万円でその全部を社長一人で所有していたとするなら、何とその自社株の評価は一億円にも膨らんでいることになる。その絵に描いた餅のような数字が、社長所有の預貯金、不動産に合算されて、相続税がかかってくるのだから、後継者をはじめ残された相続人はたまったものではない。

「この国は中小企業を税金で潰そうとしているのか?」と良く聞かれるが、なんとも答えようがないのが現実だ。

 平成7年に、ある有名な秤のメーカーのオーナー社長が1株100円(額面50円)で63万株を取引先のオーストラリア人に、総額6300万円で売却した。課税庁は、その譲渡人が平成6年に金融機関4行に対して、同社株式を一株につき、約800円で売却している事実を踏まえ、その株式の時価は794円であるとし、平成12年、そのオーストラリア人に対し、3億円を超える贈与税の決定処分を行った。

すなわち相続税法7条の「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を譲り受けた場合」に該当するものと認定し、課税を行ったものだ。

このオーストラリア人(以後原告という)は、この処分を不服として、東京国税局長に対し異議申し立てをしたところ棄却された。さらに原告はそのことを不服として国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、こちらからも棄却されたため、東京地方裁判所への訴訟に至った。

なお、課税庁が上告しなかったため、この裁判は一審確定に終わっている。

 所得税法の通達では、個人間で売買する場合の評価について次のように定めている。

上場株式以外の場合は、次の順番で評価すべきというものだ。①売買実例のあるもの・・最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額。 ②発行法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人等の価額があるもの(私見では、通常そのような法人はありえないと考える。)。 ③上記①②に該当しない場合・・純資産価額等を参酌して通常取引される価額。

課税庁は①の売買実例があるとして今回の取引価額である時価は100円ではなく794円が正しいと主張している。しかし、金融機関は純然たる第三者ということができず(融資等の取引の拡大を期待している)①には該当しないことになる。

そうなると、「相続税の財産評価基本通達188」の取り扱いから「同族株主以外の株主等が取得した株式」については配当還元方式によって評価することになる。

すなわち、中小同族企業において、同族以外の株主には配当を受領する以外に直接の経済的利益を享受することが ないという実態を考慮したものである。つまり配当10%なら額面金額ということになる。

 平成17年10月12日判決は、原告の全面勝訴に終わることになった。

このことで、同族株主以外の方に贈与・売買するときは、自信を持って、配当還元方式で堂々と移動させることができることを根拠づけたものと考える。自社株対策に是非活用したいものである。早い時期からの取り組みに少しでもお役にたてればと思います。

2012年2月22日(水)     千葉 和彦

 

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2012年2月 1日 (水)

税制改正の動向を踏まえて我々は今後どうすべきか?

 税制改正大綱が昨年12月10日に閣議決定された。法案提出は2月の予定だ。

 民主党は前回の反省を踏まえ、今回の大綱の中では野党に反対されそうなものは除いたようだ。

 例えば相続税法の改正だ。相続税法の改正は「社会保障・税の一体改革」にまわされ、その実施は平成27年からになりそうだ。

 平成24年1月6日にその一体改革の素案が公表され、特に増税関連法案については、今年3月末までに通常国会への提出を目指すようだ。

 今後の税制改正の動きを見ていると、増税につぐ増税という印象を受けざるを得ない。

 消費税の増税はもちろんのこと相続税、贈与税と増税は続き、所得税の増税に関しては、すでに25年間の復興増税が決定している。

 さらに大綱では、来年から給与収入1500万円で給与所得控除額の打ち切りを予定しており、一体改革では平成27年からは最高税率も上げる予定だ。

 まさに政府は、高額所得者から税金を搾り取り、ばらまくという仕組みを作ろうとしているようにしか思えない。

 顧問先さんからは、いくら人を募集しても誰も応募してこないという話をあちこちで耳にする。聞くところによると働くと失業手当が減らされるから、働かないと言っている若者もいるようだ。

 自分の力で働くということは、自分を成長させる一番の方法のはずだ。充実感や幸福感は汗を流して働くことでしか得られないと思う。税額うんぬんより、人としてもっと大事なものを奪う政策になりかねないか、危惧してしまうのである。

 しかし、その中でも、法人税は国際競争の観点から下げざるを得ない。今回も復興増税で3年間10%増税に決まったが、あくまでも法人税の10%で、実効税率自体は5%引き下がっているので、結果的には減税になる。

 将来的にも上げることは不可能だ。そのように考えてくると、今後は、法人の活用が重要になってくる。個人で事業をされている方や個人で不動産を活用されている方は、是非法人成を検討されてはいかがだろうか?帳簿はちょっと厳しくなるが、税金面でのメリットが大きくなるからだ。

 日本の99%を占める同族中小企業は、個人と法人を合わせて考えて、外部流出を抑えた戦略を考えていかなければならない。

 個人と法人双方を合わせて内部蓄積効率を高め、来るべきリスクに備えなければ、企業の存続も先祖伝来の土地も守ることはできないということを肝に銘じなければならない。

 今回の復興事業を見ても、自己資金が十分にあるところは、助成金を待たずして見切り発車できたが、お金のないところは、予算がつくまで、あるいは助成金がでるまで動き出せなかったのである。

 いつの世も先立つものはお金というとあまりにも索漠としていますが、どうもそれが現実のようです。

 自社の存続と発展のためには、一にも二にも内部留保の資金を蓄えていくことが、生き残る道です。

 是非来るべき増税時代に備えて、しっかり対策をしていきましょう。

 応援しています。

2012年1月30日(月)     著 者  千葉 和彦

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