お客様は誰ですか?-その②
「あなたは何故、会計事務所をしているのですか?」「きっかけは、資本のかからない、転勤のない独立した仕事をしたかったからです。私は父の仕事の都合で小学校を三回も変わっていますので」といつものように答えました。
するとその方は再度「きっかけは分かりましたが、本当に何故、会計事務所をしているのですか?」としつこく聞いてきました。私は、自社の経営理念である「地元企業の存続・発展のためです。」と答えました。
するとさらに、その方は「では、どうしたら地元企業の存続・発展に貢献できると考えているのですか?」と畳み込むように聞いてきました。そしてさらに「社員の方も同じような気持ちで仕事をしているのですか?社員の方になぜ仕事をしているか聞いたことがありますか?」と聞いてきました。
そこで社員何人かに聞いてみました。最初は「所長どうしたのですか?」という顔をしながら「自分が生活するためですよ。」「自分と家族の生活を守るためですよ。」「自分の仕事ですから。」「自分のスキル向上のためですよ。」「将来、自分が独立するために今は一つでも多くのことを吸収しようとしているのですよ。」とどの答えも、もっともなことばかりでした。
しかし、良く考えてみると大事なものが欠落していることに気づきます。どの答えも、自分が、自分が・・・です。お客様からすれば「あなたの生活とか、あなたのスキルアップは私には関係ない。」ということです。
こちらの勝手な理論ではなく、お客さま本位のお客さまのためのサービスを提供するということでなければならない。人は自分のことと思わない限り燃えないものです。しかし、自分のためだけにやっていると、成長も発展性もないし喜びも薄い。
それが、家族のため、チームのため、会社のため、顧客のためと昇華していくことで、人として生まれてきた以上、社会の役に立ちたいという意識になれるのです。私の社長としての仕事は、自分自身も含めて、このように社会に役立ちたいという仲間を何人作れるかだとつくづく思いました。
先日、ある方の紹介で新規の見込みのお客さまを訪問しました。規模も大きく、業績も良好、社長も良く人の話を聞いてくれそうなタイプ。しかし、よくよく話を聞いていくと、経営理念も経営計画もない・・・経営の定石というものを何もしてこなかった企業でした。
私は経営の基本原理をしっかりするだけで、さらに大きく飛躍できる企業だと見込み、初対面の社長に経営計画や経営戦略・戦術の話をついつい熱く話してしまいました。
帰り際の社長からの質問は「ところで、千葉さんのとこでは、税務申告もしてもらえるのでしょうか?」というものでした。そしてその後、その紹介者の方を通してお断りの連絡をいただきました。
私は自分の話が相手に伝わらなければ、どんなに相手のためになるサービスと確信していても何もならないということを実感し、大いに反省しました。本当にお客さまのためになることをサービスを通して実現させ、感謝・感動していただくことが目的なのに、その意図が相手に伝わらなければ、何のサービスも提供できないのです。
私はこれであきらめず、そのお客様のために再度訪問したいと思っています。新しいサービスの提供は、根気よくお客様に伝えることでもあるからです。急に朝晩冷え込み始めました。健康に気をつけて、この師走を一緒に乗り切りましょう。
2011年11月28日 著者 千葉 和彦